マ:「あ、あ・・・ち、違う・・・い、い、いやぁあああああ!!」   
蒼:「マ、マスター!」
   蒼星石のマスターはその場から脱兎のごとく逃げ出した。
   どんどん遠ざかっていく。
翠:「まったく、あのアホ人間! いったい何考えてやがるですか!」
   もうすでに見えなくなるほど遠ざかった蒼星石のマスターの方角を睨みながら、翠星石が憤慨する。
蒼:「追わなくちゃ!」
真:「放っておきなさい。すぐ戻ってくるわ。」
翠:「戻ってきたらギタギタにしてやるですぅ。」
蒼:「でもマスター、何で急にあんなこと・・・。」
金:「非常識かしら。」
雛:「蒼星石はヒナが守るの~!」
   再び赤くなる蒼星石。
の:「さ、お食事続けましょ。お野菜もちゃんと摂るのよ~。ほら、ジュン君も~。」
ジ:「ふん、余計なお世話だよ。」
巴:「桜田君、駄目よ。お姉さんにそんなこと言っちゃ。」
   何事も無かったかのように食事を再開する真紅達。
   蒼星石だけあまり箸が進んでない。


   食事が進み皆のお腹が満腹近くになるほど時間が過ぎても、蒼星石のマスターは戻ってこなかった。
蒼:「マスターどうしたんだろ?」
   ソワソワしだす蒼星石。
の:「そういえば遅いわねぇ~。」
翠:「まったくどこほっつき歩いてるんだか!
   あれほど『時間厳守だ!』とか「和を乱すな!』とか散々言ってたクセにですぅ!」
   髪を振り乱しながら怒りに身を震わす翠星石。
   よほどあの蒼星石のマスターの『蒼星石を食べたいんだよ』発言が腹に据えかねているようだ。
蒼:「まさか、マスターの身に何かあったんじゃ!?」
雛:「うにゅ~?」
金:「もしかして迷子になってるのかしら?」
ジ:「おいおい、いくらなんでもそれはないだろ。
   冊子にあんな凄い地図書いてんだぞ、あの人。」
   蒼星石のマスターが作成した冊子には雛苺にもわかるようにと詳細に、尚且つ分かりやすいよう
   入念に書かれた地図が大きく載せられていた。
   あれだけ気合の入った地図を作成した当人が現地で迷うことは、確かに考えにくかった。
真:「とにかく待ってみるのだわ。。それより私の握ったオニギリ、まだ一個しか減ってないのだけれど。」
ジ:「えぇ!? 誰か食べたのか!?」
   と驚愕するジュン。
蒼:「マスターが・・食べちゃった・・・。」
   数人が息を呑む。
真:「あら、美味しいって言ってたわよ。ジュンも一個どう?」
ジ:「いや、僕はお腹いっぱいだから遠慮しとくよ・・・。」
ジ:(まさか真紅のオニギリ食べたせいで腹痛起こしてトイレにこもってるとかはないよな・・・いやもしかして・・・)


   雑談しながらさらに十数分経過。
   相変わらず蒼星石のマスターは現れなかった。
の:「困ったわねぇ。そろそろくんくんのショーが始まる時間なのに・・・。」
み:「携帯電話掛けてみる?」
ジ:「あ、その手があったか。」
   みっちゃん以外は皆、携帯電話には縁遠いので今までその存在に誰も気が付かなかった。
金:「みっちゃん、そういうことはもっと早く言うべきかしら。」
   まったくである。
み:「あはは、ごめんね、私カメラ撮るのに夢中で。」
   みっちゃんは遊園地に入場してからずっと撮影しっぱなしなのであった。
   いったいどれほどの容量のデジカメのメモリーを用意してきたのだろうか。
   携帯電話を掛けるみっちゃん。皆はその様子を黙って見守る。
   すぐ電話は繋がった。
み:『あ、もしもし?』
マ:『すまん! くんくんショーは皆で先に行っててくれ、俺もすぐ行くから! じゃ!』
み:『え、ちょっと。』
   ブツン。一方的に喋られたと思ったら、やぶからぼうに電話は切られた。
み:「・・・・。くんくんショー、先に皆で行っててだって。」
翠:「勝手な奴ですぅ。」
真:「そう。それでは仕方ないわね。では行きましょう。」
   真紅ははやく会場に着きたくてウズウズしているようだ。
蒼:「ま、待って! みっちゃんさん、本当にマスターそう言ったの?」
み:「ええ。あっちもすぐ行くって言ってたから、会場で会えると思うけど。
   でも・・・何か切羽詰ってるような感じだったような。」
蒼:「え・・?」
真:「とりあえず行ってみればわかるのだわ。」
蒼:「・・・・。」
   蒼星石を妙な胸騒ぎが襲う。


   くんくんショーの行われる、劇場風に造られた特設会場に着いた蒼星石一行。
蒼:「マスターどこだろう?」
   せわしなく辺りを見回す蒼星石。
   他のメンバーもキョロキョロと辺りを見回す。
   しかしショー最終日とあってか観客の数がかなり多く、容易にマスターが見つかるとは思えなかった。
巴:「もう開演まで時間がないわ。」
   巴を始め、幾人かはさすがに焦り始めたようだ。
   みっちゃんが再度携帯電話を掛ける。
み:「駄目、電話に出ないわ・・・。」
金:「本当にどこいったのかしら・・・。」
   蒼星石の表情が暗い。
翠:「もう、あんなアホ人間のことなんか忘れて、くんくん見るですよ、蒼星石。」
蒼:「僕は、マスターと一緒に見たかった・・・。」
翠:「蒼星石・・・。」
真:「この広さと人込みじゃ、しょうがないわ。きっとこの会場のどこかにいるわよ。」
蒼:「うん・・・。」
   もう蒼星石達にはどうすることもできなかった。
蒼:(マスター・・・)


   どうにか一番見やすい席を陣取ることができた真紅達一行。
   そして蒼星石のマスター不在のまま、いよいよくんくんショーが開幕しようとしている。
真:「・・・・。」
   真紅は身動き一つせずステージを見据えている。
翠:「元気出すですよ、蒼星石。あのアホ人間も今頃血眼になってこっち探してるですよ。
   きっとショーの途中でひょっこり現れるですぅ。」   
蒼:「うん・・・。」
   先ほどから蒼星石を必死に励ます翠星石。だが蒼星石の表情は相変わらず暗い。
真:「しっ、始まるわ。」
   開始のブザーが鳴り、ステージの幕が物々しく上がった。


   場面は港。背景は船が停泊している絵のセットである。
ね:『やあ、くんくん。調子はどうだね。』
く:『これはねこ警部。どうしました。こんなところで。』
ね:『おや、君はあの事件を追ってここにきたのではないのかね?』
く:『いえ、私はこの手紙でここに呼び出されて・・・』


   導入部分はくんくんと、ねこ警部の邂逅からのようだ。
   開演から数分経ち、翠星石が蒼星石に耳打ちする。
翠:「なんか・・・くんくんの動き、変でねぇですか?」
蒼:「ん・・、そうかな。ごめん あんまり集中して見てなかったからわからないや。」
翠:「いつまでも気にしてたら駄目ですよ。
   あのアホ人間だって自分のせいで蒼星石が楽しんでないと知ったら悲しむですよ。」
蒼:「・・・うん、そうだね・・・。翠星石、心配かけてごめん。僕も、マスターも。」
翠:「何言ってるですか。あのアホ人間はともかく、蒼星石がすまなく思うことなんか一つもねぇですよ!」
蒼:「ありがとう、翠星石・・・。」
真:「ちょっとうるさいわよ。今大事なところなんだから静かにして頂戴。」
   遊園地に来ても、桜田家となんら変わらない真紅のいつものセリフに、ジュン達を始め蒼星石も思わず破顔した。
蒼:(でも、改めてよく見てみると、くんくんの動き、確かにちょっと変だな。)
   確かにくんくんの動きはどこかぎこちなかった。
   くんくん達キャラクターのセリフはスピーカーから録音のものが流れていて、着ぐるみの役者達は
   それに合わせて打ち合わせ通りの動きをするのだが、くんくんの動きはスピーカーのセリフ
   に比べ1テンポほどずれている。酷い時など3テンポから5テンポぐらいずれているときもある。
   動きのズレに加え、挙動も少しおかしい。
   絶えずキョロキョロして、しきりに周りの状況を確認しているようにも見える。
真:「・・・。」
   そんなくんくんだったが、真紅の目はマジだ。
   しかし、ついに雛苺が
雛:「くんくん、ちょっとおかしいのよ。」
   と周りに聞こえる声で言い出した。
真:「ちょっと、雛苺! くんくんに対して失礼よ!」
雛:「む~~~。」
金:「でも、確かにおかしいかしら。なんか焦ってるように見えるわ。全然緊迫した場面でもないのに。」
真:「きっと、誰も気付いていない重大な事実にくんくんだけが気付いたのよ・・・!」
皆:(う~~ん)
真:「やはりくんくんは天才なのだわ・・・!」
皆:(う~~ん。)
   そんな調子でくんくんショーの物語は中盤に差し掛かかる。
   くんくんが船から何者かに荒波の海に突き飛ばされた場面で、一旦幕が下がった。
   そして場内のスピーカーから『今から十五分ほど休憩時間です。』との旨の放送が掛かった。


真:「ああ! くんくん! 今からこの私、第五ドール真紅が助けに参ります!」
ジ:「おい、ちょっと落ち着け、真紅!」
   舞台に駆け出そうとする真紅をジュンが慌てて止めた。
金:「まぁ、みっともないかしら。あれぐらいの危機を切り抜けれなきゃ、
   まだまだくんくんもローゼンメイデン一の策士、金糸雀様の足元にも及ばないかしら!」
真:「なんですって・・・!?」
ジ:「おい、金糸雀!火に油を注ぐようなこと言うなよ!」
   真紅を抑えているジュンが焦る。
蒼:「僕、マスターを探してくる。」
の:「あ、駄目よ蒼星石ちゃん。もしこれ以上みんながはぐれちゃったらくんくんショーどころじゃなくなるわ。」
蒼:「・・はい・・・。」
   俯く蒼星石。


   やがてショーの再開時間になった。ブザーが鳴り幕が上がる。
   場面は荒波の中溺れるくんくんのシーンから。
真:「ああ、くんくん!」
   真紅の悲痛な叫び。
ジ:(静かにしろって、真紅・・・! まわりの人が見てるから・・!)
   真紅の叫びが耳に届いたのか、溺れながらくんくんが真紅達のいる方を向いた。
真:「ああ、くんくん! ここです! 真紅はここにいます!」
ジ:(いい加減にしろ真紅、追い出されるって!)
   必死に真紅をなだめるジュン。
   やがてくんくんが危機を脱す場面に入り、真紅も落ち着きを取り戻す。
真:(よかった。くんくんが助かってくれて本当によかったわ・・・。)
ジ:(よかった。 真紅が落ち着いてくれて本当によかった・・・。)
   ショーが再開されてからも、くんくんの動きのぎこちなさは一向に改善されなかった。
   そして、いよいよくんくんが犯人を指し当てる場面に差し掛かった。終盤の山場である。
   犯人候補に挙がったキャラクターは複数。いったい誰が犯人なのか。
   蒼星石達もそれぞれの犯人を思い巡らす。
真:(ワオキツネザル男爵が怪しいと思うわ・・・。)
雛:(やっぱりこのときのくんくんがいちばんかっこういいの~!)
翠:(犯人はテングザル子爵に決まりですぅ~。)
金:(犯人はマウンテンゴリラ公爵かしら! ローゼンメイデン一の頭脳派の名にかけて!)
ジ:(ゴールデンライオンタマリン卿が犯人かな?)
の:(うう~、お姉ちゃん全然わからないわぁ~~。)
巴:(スローロリス夫人じゃないかしら。)
み:(『演劇中は撮影禁止』だなんて、つまらないわぁ!)
   一部、犯人とは全く違うことを思い巡らしてる方もいらっしゃるようだ。
   そして蒼星石は・・・
蒼:(あの時スローロリス夫人にはアリバイがあった。
   そしてマウンテンゴリラ公爵にはあの浮き輪が使えない・・・。
   ワオキツネザル男爵とテングザル子爵とゴールデンライオンタマリン卿は
   確かに犯行の機会はあったけど、そうなるとあれをした説明がつかない・・・。
   わかった! 犯人は・・・ネズミ教授だ!)
   みんな独自に見当をつけた犯人候補を見据える。
   
   そしてくんくんが指し示したのは・・・・ネズミ教授だった!
   くんくんからの犯人指名に、慌てたネズミ教授はすぐにボロを出した。
   そしてスラスラと犯行の詳細を解き明かすくんくん。
真:(なるほど、さすがはくんくんなのだわ・・・!)
雛:(やっぱりくんくんかっこういいの~!)
翠:(む~。はずれでしたか・・・。)
金:(あ、ありえないかしら・・・! ローゼンメイデン一の頭脳派のこのあたしがくんくんに負けるなんて・・・!)
ジ:(なるほどな~。意外と奥が深いんだよな、この作品。)
の:(うう~、お姉ちゃん、くんくんの説明聞いても全然わからないわぁ~~。)
巴:(外れちゃった・・・・。今度推理ものの本買おうかな。)
み:(撮りたい撮りたい撮りたい撮りたい撮りたい・・・・)
   そして蒼星石は・・・  
蒼:(犯人当てれて嬉しいけど、きっとみんなも当てたんだろうな。そんなに難しくないトリックだったし。)
   皆がこれを聞いたらどう思うだろうか。
   ショーの物語は終わり、今度はショーに出演したキャラクター全員によるエンディングを兼ねた
   ダンスショーが始まった。
真:「・・・・。」
   真紅は感無量といった表情でそれを眺めていた。
蒼:(結局・・・マスター来なかったな・・・。)
皆:「あ!」
   ダンスの途中でくんくんがずっこけた。
   一瞬にして会場に笑いの渦が沸き起こる。
   真紅だけは観客達のこの反応にムッとしている。
   くんくんは頭を掻き掻きしながらもダンスを再開し、
   やがて曲の終了ととともに手を振りながら舞台裏へ去っていった。


   会場の出口へ向かう蒼星石一行。
ジ:「面白かったなぁ。あの時間内であれだけの内容やっちゃうんだから凄いよな。」
   着ぐるみショーを熱心に褒めるジュンを見て、巴とのりが顔を綻ばしている。
蒼:「マスター、出口にいるかな?」
   出口に着いたが、蒼星石の期待も空しくマスターは見当たらなかった。
   だがマスターの代わりにある人物がいた。
雛:「くんくん!!」
   着ぐるみのくんくんが列に並んだ子供達と順番に握手をしていた。
   どうやらショーの終了後に会場出口にてくんくんとの握手会が設けられているようだ。
   列に並べるのは子供だけのようである。
   真紅、雛苺、金糸雀が我先にと並んだ。
   蒼星石はというと、くんくんが確かに気にはなるのだが、それ以上にマスターのことが気になるようだ。
   列に並ぼうとするのを止め、回りをキョロキョロするばかりだ。
翠:「蒼星石、並ぶですよ。」
   翠星石が蒼星石と手を繋いで列に促した。
蒼:「でも・・・。」
翠:「大丈夫ですぅ。今翠星石がジュン達にアホ人間が来るのを絶対見逃さないように頼んどいたですよ。」
蒼:「そう、ありがとう、翠星石。」
   蒼星石は翠星石の気遣いに心から感謝した。
翠:「さ、並ぶです。」
   蒼星石と翠星石が列に並び、少し待つと握手の番になった。
   くんくんと握手をする蒼星石、次いで翠星石。
真:「くんくん、さっき言った人はこの子の大切な人なのだわ。」
蒼:「?」
   くんくんとの握手を終え、列の横に控えていた真紅が駆け寄り、蒼星石を指しながらくんくんに言う。
   金糸雀が蒼星石に耳打ちする。
金:「真紅と雛苺とあたしで、さっきくんくんに蒼星石のマスターを見つけてもらうよう頼んだかしら♪。」
蒼:「え?」
真:「おねがいよ、くんくん!」
雛:「おねがいなの~、くんく~ん!」
翠:「翠星石からもお願いするですぅ!」
金:「おねがいかしら~!」
   くんくんは、しばしドール達を眺めていたが、腕で自分の胸をポンっと叩き、『任せとけ!』と言わんばかりの
   ジャスチャーをした。
蒼:「う、皆ありがとう・・・ぐす」
   蒼星石は皆の心遣いに感極まって涙ぐむ。
真:「泣かないで頂戴、蒼星石。きっとあなたのマスターは見つかるわ。名探偵のくんくんがついているんですもの。」
蒼:「うん・・・。」
   すると、くんくんが蒼星石の前まで進んだ。
蒼:「?」
   くんくんは蒼星石の手前でしゃがむと蒼星石の目元の涙をぬぐい、そして優しく頭を撫でた。
蒼:「あ・・。」
翠:「あ~~、蒼星石羨ましいですぅ~~。」
   翠星石が大げさに羨ましがった。
   真紅は何か堪えているようだ。
ジ:「ほら、もう行くぞ。後ろがつかえてきてるって。」
   ジュンがなかなか戻ってこないドール達に業を煮やし、連れ戻しにきた。


   握手会が終了し、くんくんら遊園地のスタッフが立ち去っても蒼星石のマスターは現れなかった。
翠:「あんのアホ人間、もしかして翠星石達を置いて先にいきやがったですかぁ~~?」
の:「ほんと、どこ行っちゃたのかしらねぇ。」
金:「みっちゃん、電話繋がらないかしら?」
み:「あ、ごめん。私の携帯、電池切れちゃった。カメラの電池は沢山あるんだけど。」
皆:「ハァ~~~。」
   深い溜息を漏らす一同。
   そんな折、前方の見知らぬカップルの会話が蒼星石一行の耳に入った。

   カップルの女が言う。
女:「さっきの金髪の男の人、大丈夫かしらね~?」
   カップルの男は少し考えてから 
男:「さぁ、もしかして今頃コンクリートで固められて海に沈められてるかも・・?」
女:「きゃは、やだぁ~~。」
男:「だってあれどう見てもヤクザの団体様じゃん。」

蒼:(金髪の男の人・・・?) 
   蒼星石が思わずカップルに駆け寄る。ジュン達も続く。
蒼:「あの! すみません。」
男:「ん、なんだい。ぼく。」
   蒼星石が男の子と間違われた。
   だが今の蒼星石にはそんなことはどうでもよかった。
   蒼星石の頭は大好きなマスターの行方のことで一杯だった。
蒼:「その金髪の男の人って、どんな人ですか?」
男:「どんな人って、そうだなぁ。俺ぐらいの身長で。あと・・。」
   カップルの男の話す『金髪の男の特徴』はすべて蒼星石のマスターに当てはまっていた。
蒼:「そ、その人は今どこにいるか知りませんか!?」
女:「ええ、あちらの方向に連れていかれたわよ。」
   女はある方向を指差した。
蒼:「連れて、いかれた・・・?」
男:「ああ、黒服の男数人にね。ところで君はその金髪の男と知り合・・・」
   男が言い終わる前に、蒼星石は言われた方角へ駆け出していた。
蒼:(やっぱりマスター、何かよくないことに巻き込まれてたんだ・・・!)
ジ:「お、おい。蒼星石!」
   他のドール達はすかさず蒼星石を追う。
   巴とのりもカップルに頭を下げ、そして蒼星石を追いかける。
ジ:「おい、待てって! くっ。」
   ジュンも走る。
   みっちゃんもカメラを撮りながら走る。
女:「行っちゃったね。」
男:「もう一時間も前の話なんだけどなぁ。」


   蒼星石が進んだ先は、まだ遊園地の建設途中のエリアだった。
   当然一般人には立ち入り禁止である。
   一人の黒服の男がまだコンクリートむき出しの作りかけの建物へ入っていくのが見えた。
蒼:「ここにマスターが・・・?」
   蒼星石は作りかけの建物の前に立ち尽くす。
   蒼星石に少し遅れて他のドール達が追いついた。次に巴、のり、ジュン、みっちゃんの順で追いつく。
真:「待ちなさい、蒼星石。」
   そう言うとズボンのポケットからホーリエを放つ真紅。
ジ:「おまえ、連れてきてたのかよ。」
真:「もしもの時に備えてなのだわ。」
   蒼星石、雛苺、翠星石、金糸雀もポケットから各々の人工精霊を放った。
ジ:「む、お前達も連れてきてたのか。」
蒼:「僕は朝マスターに言われて連れてきたんだけど・・・。」
雛:「ヒナはベリーベルもゆうえんちにつれていきたかったの~。」
翠:「真紅がポケットにホーリエを入れてるとこ見たですぅ。だから翠星石も連れてきたですぅ~♪」
金:「ピチカートとあたしはいつも一緒かしら♪」
ジ:「う~ん。」
真:「まずはホーリエだけで様子を探らせるとしましょう。」
   ホーリエが作りかけの建物の隙間に吸い込まれるように突入した。
   そして、すぐに出てきた。そして真紅の耳元へ。
   ホーリエの報告を聞く真紅。
真:「確かに、なぜだか知らないけど蒼星石のマスターがこの建物の中にいるようだわ。
   しかも数人の黒服の男に囚われてるそうよ。ケガもしてるそうだわ。」
蒼:「!」
ジ:「なんでそんなことになってるんだ・・・?」
真:「さあ。事情は本人を助け出してから、ゆっくり訊きましょう。」
蒼:「マスター・・・!」
   レンピカに命じ、『庭師の鋏』を手に取る蒼星石。
   スィドリームに命じ、『庭師の如雨露』を手に取る翠星石。
   ピチカートに命じ、『バイオリン』を手に取る金糸雀。
雛:「うにゅ~~。」
   何か出せとベリーベルをうらめしそうに見やる雛苺。
   ベリーベルは困ったようにフラフラと飛び回るだけだ。
ジ:「おいおい、人間相手に暴れる気かよ。」
の:「お姉ちゃんは警察の人に言った方がいいと思うんだけど・・・。」
真:「そうね。では少し、これから各々がどう動くか打ち合わせしましょう。」
蒼:「そんな悠長なこと言ってられないよ! はやくマスターを助け出さないと!」
真:「急いてはことを仕損じるわ。・・・じゃあこうしましょう。みんなよく聞いて頂戴。」
皆:「?」
   皆に、たった今思いついたであろう作戦を伝える真紅。
真:「特に異議がないのなら、これでいくわよ?」
   皆ゆっくり頷いた。
   かくして、ドール達による蒼星石のマスター救出作戦が始まった。



                                   「遊園地へ行こう6」に続く