俺と蒼星石は普段の行動範囲を飛び出し、鎌倉へと向かった。
学生時代の話をしていたら修学旅行に発展したのがきっかけで、
蒼星石が行きたがったから小学生の定番の鎌倉ではあるが今日実行中だ。
「マスター、楽しみだね。」
「もう少しすれば着くからな、少し待ってろ。」
目的地は鶴岡八幡宮と大仏のある高徳院の二箇所、
日帰りのため数は周れないが、その分ゆっくり満喫できるだろう。
「よぉーし、着いたぞ。」
「ホント?うわぁ~、きれいなアジサイだね!」
鶴岡八幡宮に到着、早速綺麗に咲いたアジサイが俺達を出迎えた。
「ちょうど今が見頃だな、中に行って舞台見に行くか?」
「うん!静御前が舞った舞台だよね?」
「そ、ちゃんと勉強してたんだな、じゃあ行くぞ。」
歩き始めてから程なくして舞殿に到着した。
「すごいなぁ・・・これ全部木で作ったんだよね。」
「そんなに珍しいことか?日本の建造物はみんなそうだぞ。」
「西洋は大体レンガとかそういう造りだからね、見たことが無かったんだ。」
たしかに今まで西洋で暮らす事の多かった蒼星石には珍しいのだろう。
興味深げに舞殿を眺めていた。
「ねぇマスター、せっかくだからお守り買っていかない?」
一通り見て気が済んだらしく、今度はお土産選びに気を向けた。


「沢山あるねぇ・・・どれにしようか?」
俺に抱きかかえられた状態で蒼星石がお守りを物色する。
「厄除けとかでいいんじゃないか?」
「あっ厄除けはダメ!仕事運でいいでしょ?」
厄除けを選ぼうとした時蒼星石は思い出したように俺を静止した。
「じゃあそれでいいや、仕事運にしよう。」
お守りを買った後、さっきの事が気になって蒼星石に尋ねた。
「なぁ、なんで急に厄除けはダメとか言い出したんだ?」
「えっと・・・それはねぇ・・・その・・・・実はね、
僕がマスターを厄から守りたいって思って・・・・それで・・・。」
なるほど、つまりは自分がお守りになりたいと、そういう事なのだろう。
「そうか、じゃあ頼むぞ、でも俺だってお前を厄から守ってやるからな。」
「うん・・・じゃあお願いするね、マスター。」
「おう、任せとけ!さて・・・そろそろ次行くか?」
「分かった、次は大仏見にいくんだよね!」
八幡宮の見物を済ませ、俺達は次の目的地高徳院へと向かった。
車を走らせてからしばらくして到着、中に向かい少し歩くと、
眼前に大きな鎌倉大仏が見えてきた。
「ほらマスター大仏だよ!早く行こうよ!」
はしゃいで大仏に駆けて行った蒼星石を追うようにして、俺も大仏に駆け寄った。


「おっきいなぁ・・・・・」
「だな、ところで大仏の中に入れるみたいだけど入ってみるか?」
俺は大仏の横に並ぶ人達を見て確認し、蒼星石に尋ねた。
「僕はやめとくよ、ほら、こういうのって遠くから見るのが一番だから。」
そして蒼星石が自分の美学を語り始める。
「遠くから見たら綺麗なものでもね、近付きすぎると魅力が薄れるんだ。
大仏の中に入ったってね、中から感じ取れる物はなくて
ただ大仏の中にいるという感傷に浸るだけだから・・・・
で、マスター、さっきから何してるの・・・・?」
俺は蒼星石が語っている途中から鼻が触れるくらいまで顔を近づけていた。
「変わらないな、何も。」
「えっ・・・何が?どういうことマスター?」
「蒼星石に思いっきり近付いても蒼星石の魅力は薄れないぞ。」
「ちょ、ちょっとマスター!本気なんだから茶化さないでよ!!」
「悪い悪い、でも、それは間違ってないと思うぞ、俺も蒼星石と大分暮らしてるからな、
時々蒼星石がここにいるっていう事が当然だと思っちまうからさ。」
「でも・・・僕に魅力なんて物はないよ・・・・」
「いいんだよ、それは周りが決めるんだから、お前が判断するものじゃない。」
「そっか・・・・その・・・ありがとね、マスター・・・」
「どういたしまして、よし、裏の方にリスがいるけど見に行くか?」
「リス?見たい見たい!じゃあ早く行こうよ!」


大仏から離れ、休憩所といった感じの林に着いた。
ここに高徳院もう一つの名物、リスがいる。
「そのうちリスも寄ってくるだろうし、一休みするか。」
「そうだね、僕栗羊羹持ってきたんだ。」
リュックサックから栗羊羹とお茶を取り出した。
「一緒に食べようねマスター、それじゃいただきまーす。」
とは言いつつもやはり栗羊羹に目がない蒼星石は先に食べだす。
「はぁ~・・・美味しい、こういう所だと格別だよね。」
「そうだな、不思議な美味さがある。」
栗羊羹を食べていると、一匹のリスが寄ってきた。
「あっマスターほら見て!リス来たよ!」
「ちょっひとまず落ち着け!逃げるから。」
俺の制止もむなしく、はしゃぐ蒼星石に驚いてリスは逃げて行って。
「あぅぅ・・・ごめんなさいマスター・・・・」
「気にするなって、まだリスは沢山いるから。」
と行ってるうちにまた別のリスが来た、今度は蒼星石も声を押し殺す。
「蒼星石、これリスにあげてみろ。」
俺は自分の栗羊羹から栗を取り出し、小さく崩して蒼星石に渡した。
「食べるかな・・・ほら、リスさん・・・・、・・・!!!!!」
蒼星石が差し出した栗をリスは受け取り、そしてその場で食べて去って行った。
「ありがとマスター!見てたでしょ!!食べてくれたよ!!」
押し殺していた興奮を開放して蒼星石が狂喜する。
「良かったな、ほら、これ全部使っていいぞ。」
蒼星石の頭をぽんと撫でて残った栗を渡した、そして蒼星石は
何度も何度もリスが栗を食べては去っていくのを見て興奮していた。
そして栗を全部にリスに渡し終えたので、余韻を残しつつ帰る事にした。
帰りの車内、蒼星石との話は尽きる事がなかった。