「人間~!」
翠星石が呼ぶ声がする。

「はいはい、義姉さん、何ですか」
「だからその義姉さんってのをやめるですぅ!」
「いや、でも、義姉さんは義姉さんだから」
「やめろと言ってるです!
 蒼星石もっ、何とか言うですぅ!!」

「…はいはい、マスターも翠星石も仲良くしてね」
蒼星石はまるで相手にもせず洗濯物を干していたりする。

「…全く、蒼星石までお前みたいな人間に毒されて呑気になってしまったです…、
 元はと言えば人間!お前が悪いです!」
「う…、そ、その…、」
否定はできない。
「でも義姉さん!」
「だからその義姉さんというのをやめろというのがわからんのですか!」
「しかし認めて貰えるまでは…」
「誰が認めるですか!!」
「でっ、でも、認めてもらいますっ…!」

「蒼星石!」
翠星石は蒼星石を呼び叫んだ。
「蒼星石はどう思ってるです!この人間のことを」
「え…マスターの事…?」
蒼星石は二度、三度、翠星石とこちらの顔を見比べる。
蒼星石は俺が止めてくれるものだろうと思っていたのだろうが
翠星石は問うたのだからもちろんのこと、俺も蒼星石がどう思ってるのかを知りたいので止めはしなかった。

「そう…だね、大切な人…かな」
上手く切り抜けられた気がするのだが…気のせいだろうか。と。
「きぃぃぃぃー。大切な人って、翠星石とこの人間と、どちらが大切なんです!?」
ややヒステリック気味に翠星石は叫ぶ。
「やっぱり、どっちも大切だから、一番は決められない」
そう嬉しそうに、そして幸せそうにはにかむ蒼星石。

「!」
予期してなかったであろうその解答を聞いた翠星石は、怒りに身を任せて立ち上がり、そのまま部屋に籠もってしまった。
「あ…翠星石」
蒼星石と俺は翠星石を追う。
扉を挟み蒼星石と俺と…翠星石。
「ごめん…翠星石」
「……」
翠星石は何も言わない。無論俺も口出しはできない。
「でも翠星石、信じて…僕は翠星石も大切だから」
「……」
「すいせいせ…」
「蒼星石、人間とちょっと二人きりにさせるです…」
「…う、うん、分かった翠星石」
そういうと蒼星石は立ち去る。

「人間、ちょっと来るです…」
扉が少し開き、俺は中に入る
「はい、何ですか義姉さん」
「…はぁ…」
大きな溜息。多分これは「義姉さん」に対してだろう。
「お前は蒼星石の事、どう思ってるです?」
「そ、それは…やっぱり大切だと…」
「そんなことを聞いてるんじゃないです」
まるで結婚を申し込んできた彼氏と父親かのような雰囲気。
「蒼星石を、どう思ってるです」
また、問いただされる。そしてその質問の真意は、翠星石が言いたいことは…。
「…好きです。誰よりも、翠星石義姉さんよりも」
「ホントですね?」
「はい」
その言葉に嘘偽りはなく、ただ俺は真実だけを述べる。

「もし、蒼星石が泣くようなことがあったら…人間。
 その時は蒼星石が許してもこの翠星石が許さないですよ」
「え?」
「どうせ、蒼星石だって両方大切だって言っておきながら、
 二人を呼ぶときは、絶対に人間から呼ぶんですし…」
「えっと、義姉さん?」
「だからっ!蒼星石の一番は人間にくれてやると言ってるです」
「っっ!!義姉さん…ありがとう!!」
「ばっ、馬鹿、抱きつくなですぅ!!」

「マスター?翠星石?話は終わった?」
そういって蒼星石が部屋に入ってくる。
固まる蒼星石、翠星石、そして俺。
「あ…あれ、マスター…翠星石?」
多分蒼星石の目からは
『翠星石に抱きつく、というより襲いかかるという形になっている俺の図』が見えたのだろう。
「あ…そ、その、ごめんね。邪魔…しちゃったかな。そっ、その僕、出ていくからっ!」
顔を真っ赤にしてそそくさと扉を閉め、出ていく蒼星石。
……タイミング、悪すぎだ…。

「やっぱり…マスターも翠星石が…、ますたぁー…うっ、ふぇっ、ふぇえええぇぇぇん…」
扉の向こう側、蒼星石の鳴き声。やっぱり思いっきり誤解されてる…。







「やっぱり、人間に蒼星石は譲らないですぅぅぅぅぅ!!!!」