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※一人称と三人称で語っている部分あるので気をつけて読んで下さい。

「それでは来週の月曜日から四日間沖縄へ行き、日本の過去を学んできましょう」
担任の先生がそう告げ、金曜日最後のHRが終わった。
「修学旅行」という言葉を聞いて少し胸が締め付けられた感覚に陥った。
修学旅行では彼女に会えなくなるという不安からくるものだった。
教室を出て玄関口で旧友と軽いおしゃべりを交わして校門を出る。
空を見るとまだ太陽が顔を出していた。夏に入ったから当然だろう。
学校から徒歩で10分の位置に俺の借りているアパートが立っている。
10分というのは長いようで短い。
今日は彼女にどんなことをしてやろうかと考えているだけで、あっという間に家の前ということもしばしばある。
そして、家に帰ってから学校の話を聞かせてやる。
それが毎日の習慣である。

蒼星石。俺が彼女のミーディアムになって大体・・・忘れた。
一人暮らしで親と乖離状態の所に彼女が来た記憶はあるが、毎日が彼女のおかげで充実しているので何年経ったかなどは関係ない

だろう。
ただ、彼女がいなければ、俺はこうやって一人離れた環境の学校の道を行き来していないだろう。

話題を考え込んでいるとアパートが見えてきた。向かい側はいつも利用しているコンビニがある。
帰りの際なのでミルクチョコレートを買いに歩道橋をわたって通路の反対側へ行き、コンビニ店内へ足を運ぶ。
あ、いつも買ってるやつ売り切れてる。
手ぶらで帰っては蒼星石に申し訳ないので、値引きの表示が書いてあるかごの中から「99%カカオ」とやらをかごの中に2~3

個放り入れた。同じチョコなので多分気にしないだろう。
あと、今日も俺は一日よく頑張ったで賞ということで、よく飲む無糖のコーヒーも保温棚から手に取った。
コンビニから出ると空はまだ暗くはなっていなかったが怪しい雲行きだった。
再度歩道橋を跨いで、アパートの敷地へ入る。
アパートの一番左の扉が俺の住んでいる部屋への入り口で、そのドアの隅にあるインターホンを押す。
「・・・」
他人に見つからないように気をつけろという躾はしてあるから、無言は当然である。
どれ、ちょっとテストをしてやろう。
いったん咳払いして「こんばんは!AMAZON宅配サービスです!」
扉が開いた。失格決定。
「はーい、お疲れ様ですー今ハンコ持ってきますね・・ってマスターじゃない!」
「あのな、AMAZONはネットショップであって宅配便じゃないんだ。それぐらいは判断しまちょうねーほぅらよしよしー」
「えへへ~ってもう!そうじゃなくて!・・・ええとお帰りんこ。マスター」
「引っ掛けられたやつに引っ掛けるなよ。てかお前が確信犯だとマスター少し失望しちゃうな」
「あぅ・・ごめんね」
「まぁ良しとしようや。改めて“ただいま”」
「うん、お帰りマスター」
と、他愛のない会話を交わし部屋に入る。
すっかりコタツも片付けられていたようで代わりに少し大きめのテーブルが置かれていた。
俺は適当に鞄を置き座布団に腰を下ろした。
蒼星石は脱いだブレザーを不器用ながらクローゼットに入れてくれている。
全く、余計なところまで手を出してくれるので感謝と何かが入り混じった何とも言えない気持ちになる。
俺はコンビニの袋から無糖のコーヒーを取り出し、栓を開けた。
蒼が仕事を終えて戻ってきたみたいだ。
「蒼星石、ちょっとちょっと」
「ん?何かな?」
とご褒美代わりの99%カカオの包みを開封し
「はい、あーん」
口に放り込んでやった。
「わぁ!ありがとう!ぱくっ・・・うぇぇ!何これ!苦っ!あっあっあー!水!水ぅぅ!」
「どうした!?水無いからこれで我慢しろ!」
ごくっ
「うわぁぁぁぁ!苦!にがっ!ぉぇっふ!もう、マスター何普通に飲んでるの!よぉっ・・ぉっ・・ぅくっ・・見たらコーヒーじ

ゃないか!しかも無糖の!あっぁっ・・」
しゃべれる状況じゃなさそうなので、冷蔵庫からマミーを取り出し早急に手渡した。
しばらくうずくまっていたが、大分治ったみたいだ。
「もう、絶対それ腐ってるんじゃないの!?半額のシール張ってあるし!」
「そうか?普通においしいと思うぞ」
当然苦味には慣れている。てか苦いものは好きな方だ。
「普通に食べないでよ!マスターの体おかしいんじゃないの!早死にしちゃうよ!?」
「お前と死ねるならマスターさんはいつでもいいぞ」
「///////////・・・・じゃなくて!僕はね!マスターの体を心配して―」
「はい、あーん」
ジャストタイミング。お、また悶えだした。
それから、鋏で額を突きつけられたのは言うまでも無いだろう。
「待て待て、そんなことしたらマスターさん、一生夢の中に入ったまま出てこれなくなるぞ?」
「その時は僕が遊びに行ってあげるから心配しないで?ね?」
表情自体は笑っているが、目が笑っていない。やばい、死ぬ。殺されちまう。
「待て!話せば分かる!」
しまった!死亡フラg・・・

と、その時。
―かずきぃ・・かぁずきぃぃ・・・―
「あれ?マスター、携帯鳴ってるよ?」
「ん、本当だ」
冷静になったのかバッグの中からの着信を聞き取ってくれた。
「相変わらず変な着信音だね」
「ふふん、このしわがれ声がいいんですよっと」
画面を見る。お、同じクラスの内藤からか。
こいつは正に救世主だな。今度なんか奢ろう。
ピッ!
「もしもs―」
「おいすー!今日も明日もブーン(^ω^)三昧!内藤だお!」
「いや、携帯見れば分かるんだが・・」
「そんなことより修学旅行の用意どうするお!?俺は―」
修学旅行という言葉を聞いて再び背筋が凍りつくのを感じた。
蒼星石も携帯から漏れた内藤の声が聞こえたのか、少しうつむいていた。
「あ!ごめ!くんくんの再放送が始まる!」
「おい!ちょwwwおまwwww待てww」
ピッ!
携帯をテーブルの上に置き、蒼星石を見る。
俺の視線に気づいたのか、顔を上げにこりと笑う。
「ああ、僕には何も気を使わなくていいよ!その・・マスターが楽しんできてくれれば・・僕も・・嬉しいから・・・」
空元気というやつだろう。
「ただ・・・少し寂しいかな・・・」
しかし、俺は何も言えなかった。
窓の外を見ると空は曇り始めていた。
二日経った昼。つまり明日から修学旅行が始まる。
ここのところ蒼星石と会話はするものの、どこか噛み合っていないのをお互いが感じていた。
俺は何をするわけでもなく、勉強を始めれば詰まってしまい少し休むことを繰り返して時間を潰していた。
蒼星石は食器を洗っている最中だ。
ふと、のどが渇いて牛乳を飲みに蒼星石のいるキッチンへ向かった。
しかし、とっくに切らしていたのを思い出し、冷蔵庫を見ると、そろそろ買いに行かないと食材まで切らしてしまうような状態だ

ったので、隣町のディスカウントストアへ行くことを決意する。
なんだかんだ言ってコンビニで二人分の食料を定価で買えるほどの資金は親から送られていないのだ。
蒼星石の元へ行き、
「JUMCO行って食料買ってくるから、暇だったらテレビでも見ていてくれ」
「あ・・うん。行ってらっしゃいマスター あ、雨降るみたいだから傘持って行ってね」
「ん、サンキュ」
かごから傘を抜き取る。
「なるべく・・早く帰ってきてね。一応明日のために体調は管理しておかなきゃいけないんだし・・」
「分かった・・」
俺と顔を会わせる時だけ笑みを作ってくれるのが心に痛い。
蒼星石の言葉一つ一つが胸に突き刺さるようで目まいがしたような気がした。
一旦深呼吸し、頭の中を空っぽにしてから玄関のドアを開けた。
歩きで30分、JUMCOに着いてから大体2時間くらい経った。
一通り食料と明日用意するものは買ったので、そろそろ帰るとしよう。
歩きながら100メートル先の自動ドアごしの景色を見ると雨が降っているのが分かった。
こっちに来たときは降ってないなかったが、やっぱり蒼星石の言うとおりだ。
早速傘を・・・
あれ?ないぞ?
しまった!最初に立ち寄った雑貨屋のテナント入った時に置いて来たのか・・!
俺は即雑貨屋に戻ったが店員は既に撤去してしまったとの事。
これじゃあ帰れない。
こりゃここで傘買って帰らないと風邪ひいちまうな・・・風邪?
ふと二日前の蒼星石の言葉を思い出す。
『少し寂しいかな・・・』
      • 俺は傘を買わずに自動ドアを飛び出した。
蒼星石は部屋のソファに座り、自分の主人のことを懸念していた。
(マスター遅いな・・・雨降ってるから仕方ないか)
その時、
ガチャ。
鈍いドアの摩擦音が部屋に響いた。
蒼星石はとてとてとドアの方に向かった。
そこで見たものは。
「おかえりマス・・ター・・」

本来の元気な若者ではなく、全身ずぶぬれで息を荒げている病人を髣髴とさせる自分の主人だった。

その後、蒼星石は自分の主人を風呂に入れ部屋で寝かせた。
(マスター・・・どうして・・どうして傘を持ってきてなかったんだろう・・)
自分の目の前でベッドに仰向けになっている主人を見、心の中で問うた。
主人の様態はとてもひどく、今日で完治するようなものではなかった。
目覚まし時計を見ると丁度午後7時。明日は修学旅行である。
何としてでも明日までに治さなければならないと思った。
そこで、蒼星石は主人の使っているパソコンを起動した。
パソコンについての知識はあまりなかったが、ちょくちょく主人の使っている姿を見ているので基本操作くらいは覚えていた。
早速インターネットを起動し、風邪の治し方について調べようとキーボードを打ってみた。
しかし、表示されていたのは「tp"ku6dtq」という文字。
蒼星石は半角のまま、そしてひらがなの文字を見てタイプしていたのである。
しかし、パソコンを初めて触る蒼星石は何故そうなるか分からない。
何度か試してみたがどうやっても駄目だったので、お気に入りを見る。
娯楽から経済のことまでしっかりと登録してあり健康のサイトも登録されていた。
(流石はマスターだ。何でも知っているのはこういう所見ているからなんだね)
ふふっと微笑し、「健康.com」というところにポインタを置きクリックした。
しかし、画面に表示されたのは、誰がどう見てもアダルトサイトである。
(え?ええ!?ちょっと!何で?健康サイトだよね?まさかマスター・・!
経済とかテレビ番組とか・・これ全部えっちなサイトな訳!?)
先程とてもマスターに感心したため、失望した大きさはそれの二乗だった。
深いため息が口から漏れる。
顔を赤らめながら戻るボタンを押そうと思ったとき一つ、目に入ってきたものがあった。
(これなら・・早くマスターを治せるかも知れない・・・)
蒼星石はパソコンの電源を落とし、『作業』に取り掛かった。
息が苦しい・・・
何かが口に入って蠢いているみたいだ。
その何かを確認しようと目を開けると、
蒼星石が顔をくっつけていた。
俺は思わず叫んでしまった。
「ほ!ほーへいへひ!」
ぬぷっ
口が唾液まみれ。口に入っていたのは蒼星石の舌らしい。
「ん・・・らめだよますたぁ・・じっとしてなきゃ・・・」
ちゅぷっ
そして、また息苦しくなった。
何故こうなっているか理解不能で、さらに意識朦朧。
そして興奮が絡み合い、俺は気絶した。



口に再び舌を入れてから主人が気絶してしまったが、
それを承知で蒼星石は『作業』を続行した。



目を覚ました。
しかし息苦しくはなかった。 
先ほどのことがフラッシュバックする。
少し顔が赤くなるのを感じたが風邪の所症状ではない方みたいだ。
つまり、風邪は治っていた。
目覚まし時計を見ると午前2時完全に深夜を回っている。
どうしてこんな早くに完治したんだと疑問を抱きながらベッドから降りようとした。
ふにゅ
何かを踏んだ。
まさかと思い視線を下ろす。
いやな予感は当たった。蒼星石だ。
「ったく、何でこんなところで布団もかぶらないで寝てるんだよ」
やや呆れながら蒼星石を抱き起こそうとした。
しかし、蒼星石の息遣いが荒い。
と同時にせきを荒げる。
これじゃあさっきの俺じゃないか。
俺は悟った。

こいつ、俺の風邪を自分に移しやがった。

俺は罪悪感に刈られながらも洗面所に向かって、手当ての用意をした。
蒼星石は窓から差し込む光で目を覚ました。
額にはぬれたタオル。
自分の主人が看病してくれたのだろうと心の中で感謝した。
時刻はおよそ8時。
主人が丁度出かけるころだ。
(そっか、そろそろ行っちゃうんだね。見送りだけでもしなきゃ)
少し急ぎながら主人の部屋のドアノブを下げる。
キッチンに向かう、主人の話し声が聞こえる。電話をしていた。
一体誰と電話しているのかと疑問に思いながら主人へ近づく。
「―ええ、ちょっと従姉妹の看病をしてやれるものが僕しかいないもので・・ハイ、そうです。ですので今日から始まる修学旅行
は残念ですが欠席させて頂きますね・・・・ハイ・・ええ―」
蒼星石が目を丸くしている。
さっさと話を片付けて電話を切ろう。
「ええ、料金が戻って来ないのは分かっています。それでは、また4日後に行けばよろしいんですね?
あ、はい。分かりましたーはいはいーどうもー」
受話器を元の場所に置いて、座布団にに腰を下ろす。
おお、丁度彼女と同じ目線の高さだ。
一段とあせっている蒼星石もかわいいなと思った。
少しの間の後、彼女が口を開いた。
「あ、あれ?修学旅行は・・・どうしたの?」
「あーん?お前今の会話聞いてなかったのかよ、休んだ。てかサボったんだよ」
「どうして!?わざわざ僕が急いで風邪を・・その・・・移させてもらったんだよ?」
照れながら上目遣いで聞いてくる。
「ああ、お前が風邪ひいちゃ意味ないだろ」
「いや、もうマスターのお陰で直ったよ・・今なら間に合うよ。さっさと行ったほうがいいよ?」
「はぁ・・このがきゃ、人の苦労も知らないでよくしゃあしゃあとそんな事が言える。マスターさん悲しいなー」
「苦労?どういうこと?」
「ずぶぬれになって帰ってきたろ?あれわざとな」
さらに層星石の目が丸くなった。
「えぇ!?どうして!?マスターまだ熱があるんじゃない!?」
「まぁ一旦落ち着こうじゃないか。つまりアレだ。修学旅行を休むための口実作るために風邪ひいたんだけど、お前さんが何か凄
い事して治してくれたじゃないか。違うかね?このエロ蒼星石。」
「ちょ・・エロ蒼星石って・・・まぁ・・違わないけど」
蒼星石の頬が赤くなった。
「それで、マスターさんは焦って、適当な言い訳を急遽作って何とか休めたわけだ。ハイおしまい。質問は受け付けんぞ」
「ちょちょちょ!何か理屈が通っているようで全然訳分かんないよ!だから何でマスターが学校を休む必要があ・・むぐっ!」
俺はやたらうるさい蒼星石の口を口で塞いだ。要するにキスである。
10秒くらい状態を続けた後、口を離した。
「一回しか言わないからな。蒼星石、お前と居たいからだよ」
静まりかえった場で蒼星石は何かが切れたように静止していた。が、沈黙を破ったのも彼女だった。
「はは・・ははは・・・はぁ、本当にマスターは馬鹿だねぇ・・修学旅行に行った方がよっぽど楽しかったろうに、あろう事か僕
と居たいなんて、その・・ありがとう。・・・ぅぐっ・・ひぐっ・・うわぁんぼぐ怖かったよぉ・・!ぉぐっ・・まずたーがしば
らぐいなぐなっで会ぇなくなぅなんてぼぐこわぐてごわぐて・・・その・・うわぁぁぁん!」
泣きながら思いっきり抱きついてきた。小さい頭をなでる。
そのまま泣き止むまで背中をさすってやった。
「よしよし、もう泣くな。マスターさんとお前は二人で一つみたいなもんじゃないか。だから今更かたっぽが居なくなるなんて1
00%ありえん話なのよ。・・・そうだいい事思いついた」
「ぐすっ・・何??」
俺の胸にうずめていた顔を上げた。
「お前、俺のケツの中で・・じゃなくて、慰安旅行っつうことで電車でどっか行かね?親から修学旅行用のお金数万貰ってるんだ
。まぁいまさら何に使っても文句は言われんだろうさ」
「いいけど・・僕見つかったら駄目なんじゃないの?」
「まぁその服じゃ目立つからな。どれ、俺が白いワンピースでも買ってきてやろうじゃないか。関節は・・包帯か何かで巻いとき
ゃ人形とバレんだろ。ああ、遠くの方行きたいからホテル予約するけど一人部屋にするからその時は鞄の中に隠れてもらうぞ」
「ええっ!ホテル!?」
「ひゃっひゃっひゃっ!何エロいこと考えてんだよ(笑 まぁ遊び先は海とか遊園地でいいかな?」
「うん!マスターと一緒ならどこでもいいよ!」
そう言って彼女はとても幸せそうに笑った
「決まりだな。じゃあ今日中に出発するから支度するぞ。蒼星石の着るモンは行く途中のJAMCOで買うとしようや。そして・・」
目を瞑り、お互いの額をくっつけ合う。
「これからも一緒に居てくれる誓いをよろしく頼む」
蒼星石の暖かい両手が俺の頬に触れる。
「うん・・これからもずっと一緒。そして愛しているよ僕"だけ"のマスター」
二人の唇が重なり合った。
FIN