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蒼「(逃げよう!)」

  とそのとき

 「もし、ちょっといいかしらね」
店「あ、はい。何でしょう」

  間一髪、客の一声で店員の注意がダンボールから逸れた。

翠「(しめたです!)」
蒼「(まだ動いちゃだめだよっ)」  

  かといって、早く逃げないと店員の注意はダンボールに戻ってしまうだろう。
  ここは一つ、客と店員が話しこんでる隙にジリジリと逃げるしかない。

 「でねぇ、この子最近ちょっと太り気味なのよね。
  それで何かこう、低脂質? 低カロリー? そんなキャットフードあるかしら?」
店「はい、それでしたら・・・。少々お待ちください」

  店員は店の奥へ引っ込んでいった。

翠「(今なら・・!)」
蒼「(ちょっと待って、お婆さんが見てるよ)」

  ダンボールの取っ手の穴から外の様子を伺っていた蒼星石が言った。
  たった今店員にキャットフードを取りに行かせた客だ。

  お婆さんはしゃがんでダンボールにそっと手をかけた。

蒼「!」
翠「(相手が年寄りなら追いつかれんですぅ。さっさと逃げるですぅ)」
婆「あなたたち、ちょっと待っててね」
蒼「(え?)」
翠「(!?)」

  呼びかけられた?

翠「(い、今翠星石たちに言ったですか?)」
蒼「(たぶん・・)」

  双子があたふたしてると店員が戻ってきてしまった。

店「こちらの猫缶が当店オススメでして・・・」
婆「じゃあそれを・・そうね、二週間分くらいいただこうかしら。
  宅配とかお願いできる?」

蒼「(どうしよう?)」
翠「(かまうこたぁねぇです。いいから逃げるですぅ)」

婆「ところで・・・そこのダンボールなんだけど・・・」
蒼&翠「!」

婆「おたくの?」
店「いえ・・、なんでしょうね。いつの間にかあったんですけど」
婆「そう。じゃあ持っていってもいいかしら?」
蒼&翠「(えええ)」
店「それは・・」

  店の主人は言い淀んだ。
  まがりなりにも店の中にあるものを持っていかれるのは困るようだ。

婆「じゃあこうしましょう。30秒ほど待っていただけないかしら」
店「へ?」
翠&蒼「?」

  30秒待ってなにかあるのか。
  店員も双子も少しだけ首を傾げた。
  そして10秒ほど経った頃だろうか。
  店の奥で電話が鳴った。
婆「あら、30秒も待つ必要なかったわね」
 「あなたー、電話~!」
店「あ、今行く。えーと・・そのダンボールはですね・・」
 「あなたー、お得意さんからよ! はやく」
婆「何か問題があったらさっき渡した住所のところに連絡ちょうだい」

  婆さんはニコニコとダンボールに手をかける。
  店員は渋々と店の奥に消えていった。

婆「待たせちゃってごめんなさいね」

  婆さんはダンボールを持ち上げた。



店「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
み「うふふふふふふふ」
マ「な、なんだよ」
み「初回は着ぐるみかぁ。まぁまぁのチョイスね。ふふふ」

  みっちゃんが異様に嬉しそうだ。

俺は

 1.「やっぱり変かな?」
 2.「そんなに笑うなよ」
rァ3.「にははははははは」


マ「にははははははは」
み「あら、もしかして照れ隠し笑い?」
マ「(う、見透かされてる)」
み「そんな恥ずかしがることはないのよ。着ぐるみとってもいいと思うわ
  それに、何事も軽めから始めなきゃね」
マ「なんだ、軽めからって」
み「うふふふ、さぁ行きましょ」

  みっちゃんはガシッとマスターと腕を組んだ。

  ダンボールを退かれてしまった双子。
  蒼星石と翠星石は身を寄せ合った。

蒼&翠「・・・!」

  とても恰幅のいいお婆さんだった。マスターよりも大きい。
  どうやら日本人ではないようだ。
  白人特有の気品がある。着ている服も洋風の高級品ぽかった。

婆「そんなに警戒しないで。何もしやしないわよ」

  お婆さんは人形の双子に驚く素振りを微塵も見せなかった。
  むしろ楽しんでるように見える。

婆「ここじゃ、なんだから私の家に行きましょう。案内するわ」

  どうしたらいいか双子は顔を見合わせた。

婆「迷子なんでしょう? 悪いようにはしないわよ」

  なぜ迷子だと知っているんだろう。自分達を見ても驚かないし。
  いったいこの人は何者なんだろう?
  双子たちは次第に恐怖よりもお婆さんに対する興味が沸いてきた。

婆「ほら、このダンボールに入って。店の人戻ってきちゃうわよ」

  お婆さんは双子をダンボールに入れて持ち上げた。

婆「んしょっと・・」
蒼「あ、あの・・」
婆「なぁに?」
蒼「僕達・・その・・」
婆「大丈夫、すぐ帰してあげるから。でもちょっと話し相手になってくれてもいいでしょ?」
蒼「はい・・」
翠「(隙を見て逃げるです)」

婆「着いたわよ」
蒼「え、ここは・・・」

  同じビル内の小さなお店・・・占いの館だった。
  婆さんは揚々と店内に入り、双子を椅子に座らせた。
  それと向かいあう形で婆さんも椅子に腰を下ろした。
  双子はおっかなびっくり店内を見回す。

婆「ふぅ、じゃあ自己紹介しましょうか

婆「って、どうしたの?」

蒼「あ、あの、あれは・・?」
翠「ひぃい」

  双子の目が釘付けになっている対象は薄暗い店内の片隅に置かれた人間の頭蓋骨だった。
  さらに気味悪いことに髑髏の双眸が光っている。
  どうやら眼窩に水晶が埋め込まれているようだ。

婆「ああ、あれ。ただのお店の雰囲気作りのための飾りよ。怖いの?」
翠「こ、ここ、こわくなんてないいですぅっ」
婆「ああ、そうかいそうかい」

  そう婆さんはにこやかに頷くと、立ち上がってこれまた妖しげな模様の
  入ったレースの布を髑髏にかけた。

蒼「ど、どうもすみません」
翠「な、なにを謝る必要があるですか!」
蒼「だって翠星石が怖がるからわざわざ隠してくれたんじゃないか」
翠「怖がってなんぞねぇですぅ。むしろ怖がってたのは蒼星石のほうじゃねぇですか!」
蒼「ぼ、僕は別に怖がってなんかいないよっ」
翠「いいや、蒼星石は怖がってたですぅ。その証拠に翠星石の袖をさっきから
  ずっと握りっぱなしですぅっ」
蒼「あ・・・! そ、そういう翠星石だってさっきから僕の体にぴったり
  くっついてるじゃないかっ」
翠「これは違うですぅ。くっついてるのは蒼星石のほうですぅ」
婆「クスクスクス・・・本当に可愛らしい双子のお人形さんねぇ」
翠&蒼「!」
蒼「あの・・僕達のこと・・ご存知なんですか?」
婆「ええ、知っているわよ。だってアタシ占い師だもの」

  占い師? 双子は顔を見合わせた。

婆「今日のことを占ったらここのビルのペット屋でステキな出会いがあるって
  出てねぇ。こうしてあなた達に会えたわけなのよ」

  本当だろうか。
  双子は再び顔を見合わせた。

婆「あなたたち・・ローゼンメイデンでしょう? 
  あたしもこういう業界にいるから、あなたたちのような不可思議な存在の噂は
  時々耳にするわ」
蒼「それで、どうして僕達をここに?」
婆「単に、あなた達と話してみたかっただけよ。
  日本に店を構えてから、とんと刺激的なことがなくてねぇ。
  ここの国の人たちは寿命も長いし事件や病気で死んじゃう人も少ないから
  占い甲斐があるけど、それだけに占った結果も当たりざわりの無いのが多いのよねぇ。
  その点、前の国の人たちはすぐ死んじゃう人ばかりだったけど、波乱万丈な人が多かったわ。
  でも、やっぱり、人の死が占い結果に出るのは、辛いのよね・・。
  ああ、いけない。アタシのことはどうでもいいの。
  あなた達、ローゼンさんの娘さんなのでしょ。ローゼンさんは元気?」
蒼「お父様を知ってるんですか!?」

婆「知っているっていっても、アタシが知ってるのはローゼンさんは
  どこかの世界に隠居してるっていう噂話だけだよ?」
翠「なんだぁです・・」
蒼「そうですか・・、あの、僕達も知らないんです」
婆「そう。じゃあ、アリスゲームっていうの今も続けてるの?」
蒼「わかりません・・」
婆「わからない?」
蒼「・・・」
翠「・・・」

  双子は押し黙ってしまった。

婆「ふうむ・・あなた達、相当苦労してるようねぇ。
  あ、お茶も出すのも忘れてごめんないさいね。アタシあなた達に会えて
  すっかり舞い上がっちゃっててね。お菓子も食べる?」
翠「お菓子!?」
婆「はい、ちょっと待っててね」

  お婆さんは隣の部屋に行ってしまった。
  逃げるチャンスだ。だが

蒼「あのお婆さん、占いで僕達と会えたって言ってたけど本当かな?」
翠「そんなわけねぇですよ。たまたま偶然会ったに決まってるです」
蒼「翠星石は占い信じないの?」
翠「翠星石は・・・こういう怪しげなものは一切信じないのです!」
蒼「はは、そう・・(一番怪しげなのは僕達じゃ・・)」

  しかし、この薄暗くて珍妙な飾りやら絵が右往左往に置いてある部屋に取り残されて・・
  双子は再びちょっと怖くなってきた。

  ガタッ
  ビクッ

  婆さんが消えた部屋とは別の戸口から出てきた。

婆「どうしたの? 二人で抱き合ったりして。もしかして、あなたたち・・」
蒼「ち、ちがいます!」
翠「ちがうですぅ!」
婆「お茶入ったわよ。はい。そしてこれはケーキよ」
蒼「ありがとうございます」
翠「いただくですぅ(あ、そういえば逃げるの忘れてたですぅ)」

  双子のおっかなびっくりな態度を察してか、お婆さんは部屋の明かりのスイッチを入れた。
  薄暗かった部屋に明かりが満たされる。

婆「自己紹介がまだだったわね。あたしの名前はメアリー。占い師をやっているのよ」
翠「翠星石ですぅ。そしてこっちが自慢の双子の妹、蒼星石ですよ」
蒼「ど、どうも・・」

  美味しいケーキとお茶を振舞われて機嫌がよくなったのか、唇にクリームをつけたまま
  翠星石が饒舌に答えた。
  対して蒼星石はまだ少し落ち着かないようだ。

婆「可愛い妹さんね」
翠「そうです。蒼星石は世界一の可愛い可愛い妹なのですぅ。モグモグ」

  蒼星石は恥ずかしそうに俯いている。

婆「そう、いいわねぇ」
蒼「お婆さんは一人でここに住んでるんですか?」
婆「いえ、孫が一人いるわよ。あとペットのジェミニも」

  ペットショップ屋に連れていた猫のことだ。
  今はどこかに散歩に行っているらしい。

婆「あなたたちは、ずうっと二人一緒のようね」
翠「そうですぅ。翠星石と蒼星石はい~っつも一緒なのです。
  と言いたいんですけど・・」
婆「どうしたの?」
翠「最近、その翠星石と蒼星石の仲を引き裂こうとする輩が現れたのですぅ」
婆「まぁ、そんな悪い人が?」
翠「そう。悪い奴なんですよ!
  翠星石に断り無く、い~っつも蒼星石とイチャイチャイチャイチャしてくれやがって・・・あの人間・・・モグモグ」
蒼「もしかして、僕のマスターのこと?」
翠「いつもヘラヘラしてて・・・あんなんじゃ蒼星石を安心して預けられないですぅ」
蒼「預けるって・・子供じゃあるまいし。マスターは僕にとってもよくしてくれてるよ」
翠「いいや、騙されてるです。蒼星石は超が付くほどの純真純情乙女だから、ちょ~っと親切にされただけ
  で心を傾かせてしまうのです。そこに付け込んで、あの人間は~、悪い男ですぅ~」

蒼「そんな、僕のマスターは悪い人じゃないよっ」
翠「いつか翠星石が目を覚まさせてやるですからね」
蒼「もう」
婆「そのマスターさんて、どんな人なの?」
蒼「僕の螺子を巻いてくれた人で・・、とっても優しい人です」
翠「だから騙されてるですよ」
蒼「翠星石は黙っててっ」
翠「お、怒るなです・・」
蒼「僕を養うために、お仕事にも就いてくれたし・・休日は僕にたくさん構ってくれるし・・」
翠「ああ~~~! 聞きたくない。聞きたくないですぅ~~!」

  翠星石が蒼星石のノロケ話の告白に耳を塞いでる頃・・・

マ「へ~っくし!」
み「あら、寒いの? 大丈夫?」

  そう言ってみっちゃんは、腕を組みながら歩くマスターにより身を寄せた。

マ「いやいや、大丈夫大丈夫。誰か噂してるんだよ、きっと。
  それよりも・・・ちょっとくっ付き過ぎやしないかい、みっちゃん」
み「マスターさんが風邪を引いちゃ困るから・・どう、暖かいでしょ?」

俺は

 1.「ああ、暖かいよ」俺もみっちゃんに身を寄せた。
rァ2.振り払うわけにもいかず、答えにも窮して、そのまま黙って歩を進めた。
 3.「大丈夫だって。あの、そんなにくっ付かれると恥ずかしいからさ」

  振り払うわけにもいかず、答えにも窮して、そのまま黙って歩を進めた。

み「♪」
マ「ううむ・・(・~・)」

  嬉しそうなみっちゃんの表情にマスターは複雑な表情を浮かべた。

マ「(しかし、何だって俺にこんなこと頼むんだろう。
   みっちゃんぐらいの器量ならもっと他にいい男を引っ掛けられると思うんだけどなぁ。
   だいたい俺なんかと肩を並べて歩いても・・、俺は、元ニートだぞ。それが・・なんで)」

   蒼星石と出会ってから、マスターの置かれている状況は何もかも変わってしまった。

み「どうしたの? マスターさん」

  なにか考え込んでるマスターにみっちゃんが尋ねた。
  するとマスターは振り向いてみっちゃんの目をまっすぐ見据えた。

マ「みっちゃん・・・」
み「な、なに?」

俺は

 1.「もしかして、俺のことが好き、だったりして・・ はは」
 2.「俺なんかとデートしてさ、実際楽しいかな?」
rァ3.「蒼星石は俺のこと、どう思ってるんだろ」

メ「そう・・・じゃあ、今は楽しく平和にやっているわけね」
蒼「はい」
翠「そうでもねぇです。当面はあのダメ人間をなんとかしないといけないです」
蒼「もう・・」

  今の双子の暮らしぶりを聞き終え、占い師の老婆メアリーは嬉しそうに
  顔を綻ばせ、双子たちの紅茶を注いだ。

メ「翠星石ちゃんは、ずいぶんと蒼星石ちゃんのマスターさんを嫌っているのねぇ?」
翠「そうです。なんたって、あのダメ人間の正体はケダモノなのです。
  いつ蒼星石に襲い掛かるかわかったもんじゃねぇですよ」
蒼「翠星石、あのときのことまだ根に持ってるの?」
メ「なになに、何かあったの・・?」
翠「なんでもねぇです!」
蒼「実は・・」
翠「蒼星石、言うなです!」
蒼「もう」
翠「とにかくっ、蒼星石はジュンの家で暮らすです!
  あの男と暮らしたって、何もいいことないですっ」
蒼「何もいいことって・・・・」

  姉のあまりの剣幕だからか、蒼星石は俯いてしまった。

マ「蒼星石は俺のこと、どう思ってるんだろ」
み「え?」

  楽しげだったみっちゃんの顔が一瞬キョトンとなった。

マ「なぁ、どう思う? 蒼星石は俺のことを」
み「ちょ、ちょっと待ってよ」

  迫るように問い詰めるマスターにみっちゃんはタジタジとなってしまった。

み「何、どうしたの? いきなり・・」

  普通なら失礼なマスターに対して怒ってもよさそうなものだが、むしろみっちゃんは
  心配げにマスターの顔を覗き込んだ。

マ「ごめん・・」

  マスターはそれっきり黙りこんでしまった。

み「・・・」

  マスターの急な態度の豹変が続き、みっちゃんも何も言えずにいた。
  そうして少し歩いたところでみっちゃんが口を開いた。

み「蒼星石ちゃんがマスターさんのことをどう思ってるか。
  あたしは蒼星石ちゃんじゃないからわからないけど・・・」
マ「・・・」
み「あたしは・・マスターさんのこと、好きよ?」
マ「え・・・」

俺は

 1.「どどど、どういう意味で?」 みっちゃんの告白に、どもりながら訊いた。
rァ2.「・・・ありがとうね、みっちゃん」 みっちゃんにニコッと笑ってみせた。
 3.「・・・・」 俺は相変わらず俯きながら歩を進めた。  

マ「・・・ありがとうね、みっちゃん」

  マスターはみっちゃんにニコッと笑ってみせた。

み「んもうっ、マスターさんたらっ」

  するとみっちゃんはマスターの背中をいきなりバシっと叩いてきた。
  思い切り、加減無くだった。

マ「いっ!?」
み「もう、マスターさんっ。マスターさんったら!」
マ「???」

翠「そうだ、メアリお婆さんは占い師なんですよねぇ?」
婆「ええ、そうね」
翠「それじゃあ、蒼星石とダメ人間の相性を占ってみてくれねぇですか?
  そのあと、翠星石と蒼星石の相性も占ってみて比べてみるですぅ」
蒼「ええ!?」

  突然、何を言い出すのと蒼星石は仰天した。

蒼:「(そんな、どっちの相性が優れてるか決めるだなんて、どっちの結果になっても・・
   僕はマスターと翠星石・・・どちらも・・)」


婆「ふむ」

  重々しく口を開こうとするメアリーを「ダメっ」と遮りそうになる蒼星石だったが、

婆「無理ね」
翠「えぇ~(゜ε゜)」
婆「あたしは未来予知専門だからね。人と人との相性は視れないのよ。ごめんねぇ」
翠「むー、残念ですぅ」

  悔しがる姉に対し、蒼星石は小さくホッと息をついた。

婆「けど、人の行く末は視ることはできるわ。あなた達とマスターさんの行く末、視てみる?」

蒼「え・・?」
翠「翠星石たちの行く末ですか?」
婆「そう、あなたたちの行く末」
蒼「僕たちの行く末・・」
翠「行く末って、いったいいつの話ですか?」
婆「未来ならいつでも。一年先、二年先でも、五年先、十年先でも、つまり、いつでも」

  双子は顔を見合わせた。
  もし、本当に未来を視る事ができるのなら、それは自分たちローゼンメンデンの運命も
  知ってしまうことになるのではないか?
  もし数年先を視て、誰がアリスになっている? お父様に会っているのは誰?

婆「どうする? 視てみる?」 

翠「やっ や、止めとくですぅ」
蒼「う、うん!」

  ローゼンメイデンの運命を占う。
  なぜだかそれはとても恐ろしい気がして、双子は言下に首を横に振った。

婆「あらそう」

  占えなくて残念とでも言いたそうにメアリーは口をすぼめた。

翠「翠星石達はもう帰るですっ。蒼星石」
蒼「う、うん。おばあさん、色々とありがとうございました」
婆「あら、もう帰っちゃうの?」
翠「ちとばかし長居し過ぎたようです。そろそろ引き上げないといけない時間なのです」

  事実、いつの間にか長いこと居座ってしまったようだ。
  これではマスターたちより帰るのが遅れてしまう恐れがある。

婆「そう、じゃあ何かお土産を持たせてあげましょうかね」
翠「このケーキがいいですぅ!」
蒼「翠星石!」
婆「ふふ、はいはい」

  そう言ってメアリーはケーキを包むため、奥に引っ込んでいった。
  メアリーがいなくなったところで翠星石が蒼星石に話しかける。

翠「さっきは断ったですけれど、あのお婆さんの占い、本当に当たるですかね?」
蒼「さぁ・・、でも、今日僕らに会えたのは占いのおかげみたいなこと言ってたよね」
翠「うーん・・」

  もし本当に当たるなら、翠星石とジュンの行く末・・ちょっとぐらい占ってみても・・・

婆「はい、これ」
蒼「ありがとうございます。ほら、翠星石もお礼言わなくちゃダメだよ」
翠「あ、ありがとですぅっ」
婆「う~ん。なんだかあたし、占い師らしいこと何一つしてないわよね。
  これじゃあ、占い師の名折れだわ」
蒼「い、いえ、いいですよ・・」
婆「そうだ、あれをあげましょう」

  メアリーはそういうと再び奥に引っ込んでいった。
  そしてすぐに戻ってきた。二枚の紙切れを持って。

婆「ちょっと待っててね」

  そうメアリーは言うと椅子に腰掛けて机上の水晶に手をかざした。

婆「ふんふんと・・」

  水晶を覗き込みながら、メアリーは紙切れに何かを書き込んでいる様子だった。

蒼「あのう・・?」

  いったい何を?と訊く間際、メアリーはよしっと顔をあげた。

婆「はい、これもお土産よ」

  そう言ってメアリーは何かを書き込まれた紙切れを双子に手渡した。

翠「なんです? これ」
婆「絶対に当たる宝クジよ」
蒼「クジ?」

  紙切れには「テンクー6」と書かれていた。

婆「今日本で流行っているテンクーとかいう宝クジね。こういう自分で番号を選べる宝クジは
  あたしのような未来予知能力者にはいいカモね、うふ」

  先ほど書き込まれていたのはクジの当たりナンバーらしい。

翠「ほんとに当たるですか、これ?」
婆「それは、そのクジに書いてある抽選日までのお楽しみね」
翠「いったいいくら?」
婆「それもお楽しみに」

  本当に貰っちゃってもいいのかなと、蒼星石は不安げに翠星石を見たが

翠「じゃあ、ありがたく貰うですぅ!」

  貰えるものは何でも嬉しと言わんばかりに翠星石は快く受け取った。

婆「ふふ」
蒼「あ、ありがとう、ございます」

  蒼星石はメアリーに深々と頭を下げた。

婆「じゃ、出口まで送ってあげるわね」

  背中を思い切り叩いたと思ったら、今度はいやいやしだしたみっちゃん。

マ「ちょ、ちょっとみっちゃん!?」
み「ん~~~、やっぱりマスターさんは優しいわ!と~ってもっ。
  蒼星石ちゃんがマスターさんのことどう思ってるかですって?
  だ~い丈夫! 自信持って!」
マ「ど、どうも」

  さっきは「あたしは蒼星石ちゃんじゃないからわからない」って言ってたような・・
  首を傾げるマスターを他所に、みっちゃんは何か吹っ切れたように軽快に歩き出した。

み「あ、ちょっと、マスターさん!」
マ「な、なに?」
み「前方に新装開店のクレープ屋さんを発見!」
マ「うん・・?」
み「ちょっと何ボヤボヤしてるのっ? 早速見物、味調べよっ」
マ「え、えぇ~?」

俺は

 1.「甘いものならさっきも食べたじゃないか」げんなりした声で言った。
rァ2.「はいはい、付き合いますよ」今のみっちゃんには素直に従おうと、ふと思った。
 3.「本当、女の子は甘いものに目がないんだな~」俺も甘いものは好きだからいいけどね。


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