マ「しかたないなぁ、はい」

  マスターはスプーンでパフェを一口分掬うと、みっちゃんの口元へ運んであげた。
  あまりに飄々とマスターがそう応じたものだからか、少々みっちゃんは肩透かしをくらった
  ような顔になった。

マ「(いつまでも草笛さんに、いいように手玉にはとられんぜ)」
み「あ、ありがと」

  みっちゃんは大人しくパフェを頬張った。

マ「どうだい?」
み「ん、美味しい」


翠「!! ダメ人間のやつ、みっちゃんにパフェ食べさせてるですぅ!」
蒼「!!」

  目を見張る双子。

み「あたしだけ貰っちゃ悪いわね・・・はい」

  みっちゃんは自分のスプーンでプリンパフェを一口掬い、マスターの方へ運んだ。

俺は
rァ1.「お、サンキュー」ありがたく頂戴した。
 2.「い、いや、いいよ」何となく恋人のふりにしては度が過ぎてると思い、遠慮した。
 3.「お互い食べやすいように、となりに座っていいかな?」

マ「お、サンキュー」

  マスターが口を開けた。


蒼「!!」
翠「!」


み「ふふ」

?「おー、こんなとこで何やってんだ?」

  一人の男が声を掛けつつ近付いてきた。
  スプーンが口に収まる寸前、反射的にそちらに首を巡らすマスター。
  マスターの会社の同僚だった。同僚の傍らには若い女性が立っている。

マ「よ、よう」

  どうやら偶然、出くわしてしまったようだ。

同「お、もしかして噂の彼女とデートか!?」

  同僚の、マスターたちを見つめる目は好奇心で満ちていた。

俺は
 1.「あ、ああ、そうだよ。今デート中なんだ」
 2.「い、いや、友達だよ」
rァ3.「妹だ」

マ「妹だ」

  みっちゃんは「え?」といった表情になった。

同「えぇ、妹さん!?」

  みっちゃんがマスターの手を引いて後ろを向き、ヒソヒソ声で抗議する。

み「ちょっと、何、妹って?」
マ「姉の方がしっくりくるかな」
み「そうじゃなくて、あの状況じゃ普通に「恋人です」って言えばいいじゃない?」
マ「 いんや、俺の恋人っていうか、妻は蒼星石だから。これだけは譲れない」
み「・・・・」


翠「なんだか盛り上がってるですねぇ」
蒼「・・・・」

  蒼星石はさっきから無言だ。
  双子の位置からではさすがに店内での会話は聞き取れない。

  マスターは同僚の方へ向き直った。

マ「ってことでさ、紹介するよ」
み「(ちょっとくらい嘘付いても、いいじゃない・・・)」
マ「みっちゃん?」
み「あ、みつといいます。兄がお世話になっています」

  みっちゃんはペコリと頭を下げた。

同「田中久光といいます。お見知りおきを。
  いやぁ、こんな可愛い妹さんがいるなんて、聞いてないな。ははは」
マ「(こいつ、目が爛々と輝いてやがる。前々から軟派なやつだとは思ってたが・・)
  なぁ、隣の方は?」

  先ほどから黙って佇んでいる、小柄で大人しそうな女性だ。

田「ああ、友達のエリちゃん」

  エリちゃんは小さく頭を下げた。

田「しっかし、なんだ。兄妹2人でパフェ食べてるのか。めちゃくちゃ仲いいじゃん」
マ「あ、ああ」
み「そうでーす。めちゃくちゃ仲いいでーす」
マ「あ、こら」

  またしてもみっちゃんが腕を組み体を寄せてきた。

み「ねぇ~、お兄ちゃん」
マ「う、うん」
み「あ、そうだ。田中さん、あたしとお兄ちゃんがパフェ食べているところ
  写真で撮ってくださらない?」

  と言いつつもうみっちゃんはカメラを用意してる。

田「ああ、お安い御用さ~。どれ貸してごらん」

  田中は何も考えてないのか、快く引き受けてくれた。
  さっきからみっちゃんのことばかり見つめている。

み「はいはい、じゃあ、お兄ちゃん、隣に座って。」
マ「え、えぇ~?
  (なんでこんな場面を写真に収められにゃあならんのだ。
  いや、しかし、そういう写真を撮る約束をしてたんだよな・・
  でも、同僚とその友達が見ている前でって・・・)」
み「お兄ちゃん、あ~ん」

  マスターが心の中で呻吟してる間にもスプーンは口元に迫っていた。

み「お兄ちゃん、あ~んして」
マ「あ、あ~~ん・・・パク」

  田中はニヤニヤしながら撮り続けている。

み「お兄ちゃん、美味しい?」
マ「お、美味しいよ、ははは・・・」
み「ふふ。ね、今度はお兄ちゃんからみつに食べさせて」
マ「え、えぇ~、さっき食べただろ」
み「もう一回、ね? もう一回」
マ「ん、ん~~」

  みっちゃん、人前で恥ずかしくないのか、そう思いつつも
  渋々マスターはパフェを掬ってみっちゃんの口に運んだ。

み「あ~~ん、パク。美味しい! お兄ちゃん」
マ「そ、そうか。よかったな」
田「ん~、いいね~~。仲睦まじい兄妹の風景。とても画になるよ~」


翠「あんな人前で堂々とパフェを食べあって・・・
  やっぱりダメ人間は浮気野郎のトンチキですぅ!」
蒼「よ、よく見なよ。翠星石。男の人がカメラ構えてるじゃないか。
  だ、だから写真のためにしょうがなくやってるんだよ、マスターは。・・多分・・」


マ「おい、田中、お友達ほったらかしでいいのか」
田「ん、あ」

  もしかして忘れてたのか・・
  なんてやつだとマスターは呆れた。

マ「お前なぁ」
み「写真、ありがとうね」

  満面の笑みでカメラを受け取るみっちゃん。

み「ところで、もしかして、おふたりとも今デート中?」
田「え・・?」

  田中がエリちゃんを一瞥した。

田「あ、デートね・・ん~、まぁ、そうなるかな・・ははは」
マ「(こいつ・・・)」

  エリちゃんはただただ黙って俯いてた。

み「やっぱり。じゃあ今まで長々とデートの邪魔しちゃってごめんなさいね」
田「いやぁ、気にしないで気にしないで。
  ねぇ、それよりもみつさん、今どこに住んでるの? 兄さんのとこ?」
マ「(ち・・・・)」

  マスターは居心地悪そうにそっぽを向くと、不意にエリちゃんと目があった。
  エリちゃんは身を窄めながら済まなさそうにペコリと頭を軽く下げた。

俺は
 rァ1.「おい、何かさっきから、その娘をないがしろにして失礼じゃないか?」声を荒げて田中に言ってやった。
  2.「俺としては、せっかくの休日だし兄と妹、水入らずで過ごしたいんだが」これ以上田中とみっちゃんを一緒にいさせたくない。
  3.黙って田中とみっちゃんのやりとりを見ていた。

  マスターは声を荒げて田中に言った。

マ「おい、何かさっきから、その娘をないがしろにして失礼じゃないか?」
エ「い、いえ、私はそんな・・・いいんです」
マ「いいや、よくない。デート中に男が連れの女の子放って他のコに・・
  ましてや・・俺の妹に鼻伸ばしやがって、それじゃああまりに連れの
  女の子に対して失礼だ」

  みっちゃんと田中は唖然とした表情でマスターを見た。
  普段温和なマスターには似つかわしくない憮然とした表情

マ「なぁ、そう思わないか、みつ?」

  消え入りそうな声でみっちゃんは応じる。

み「え・・・う、うん・・」


蒼「マスター・・怒ってる・・?」
翠「怒ってるですね。あの優男が、さっきから金糸雀のミーディアムに
  慣れ慣れしくしてるからじゃねぇですか?」
蒼「マスター・・」
翠「嫉妬ってやつかもですね。 俺の女を取るんじゃねぇですって」
蒼「マスター・・・そうなの・・?」


  田中はバツが悪そうに後頭部を掻いた。

田「あー、そうだな。うん・・エリ、行こうか・・」

  エリちゃんは頷いた。

田「じゃあ、またな」
マ「ああ、エリちゃんもまた」
み「写真ありがとうね、また~」

  店の奥の方へ引っ込んで行く田中とエリちゃん。
  その2人の後姿を見届けながら、マスターは深々と溜め息をついた。
  ・・・が!

マ「んん!?」

 あるものを目撃し、マスターは目を見開いた。

み「どうしたの?」
マ「あ、いや・・・なんでもない」

  田中とエリちゃん、2人が角を曲がる直前、エリちゃんが思いっきり
  田中の脛を蹴り上げたように見えたのだ。
  しかも田中のやつ、蹴られた後しきりにエリちゃんに頭を下げてたような。
  2人はそのまま曲がり角を曲がって行ってしまった。

マ「(なんだったんだ・・さっきのは)」

  もしかしたら、おかしな男女のお付き合いをしているのはマスター達だけでは
  ないのかもしれない。

マ「(よくわからんなぁ)」
み「マスターさんって、やっぱり優しいわね」
マ「へ?」
み「カナを通じてあたしにも伝わってくるんだ。あなたの評判」
マ「・・・・どうせ、ロクでもない評判だろ」

  そう言いつつも、どんな内容かは気になるようで、マスターは
  みっちゃんの次の言葉を待った。

み「ふふ。そんなことないわよ」
マ「どうだか。翠星石あたりなんて、いつも俺のことボロクソ言ってるしなぁ」
み「翠星石ちゃんはどうだか知らないけれど、カナはあなたのこと、すごく優しいって
  言ってるわよ」
マ「ふ、ふーん」
み「(本当は「すごくお人好しかしらー」だけどね・・・)」
マ「優しい、ねぇ・・・」

  マスターは感慨深げに目を細めた。

マ「俺は自分で優しいのかわからんけど、少なくとも、蒼星石と出会って
  だいぶ変われたのは確かだな・・」
み「マスターさんが蒼星石と出会う前・・?」
マ「ああ、ニートだった頃だ」

  マスターは苦虫を噛み潰したように口元を歪ませた。

マ「あの頃は酷かったよ。心身ともに底辺で。蒼星石には本当、迷惑掛けた」
み「・・・・」
マ「俺は絶対に、蒼星石を幸せにする。今の俺があるのは、あの子のお陰だからな」

  恥ずかしげも無くマスターは言い放った。固い信念のようなものが感じられた。

み「あたしも・・カナを・・」
マ「ああ」

  マスターは頷いた。


翠「何2人で真剣に話し込んでるんですかねぇ」
蒼「・・・・」
翠「もしかして、これからの、2人の愛の人生設計について、かもしれんですねぇ」
蒼「そんな・・・」


 みっちゃんが時計を見やった。

み「あら、もうこんな時間。マスターさん、まだお付き合い願える?」
マ「え、もう充分でないの、写真?」
み「うん。あの・・実はね・・写真とは関係無く、マスターさんと行きたい所があるの・・」
マ「?」
み「お願い」

  みっちゃんは懇願した。今までに無い切実な目だった。

俺は
rァ1.「ああ。いいよ。行こう」快く了解した。
 2.「ごめん。そろそろ帰らんと、蒼星石が・・・」約束は果たしたし、これ以上蒼星石をないがしろにするのは・・
 3.その他、ご自由にどうぞ

マ「ああ。いいよ。行こう」

  マスターは快く了解した。

み「ほんと!? じゃあ、さっそくいきましょ!」

  嬉々として立ち上がるみっちゃん。
  いったいマスターをどこに連れていこうというのか。

マ「あ、会計は・・・」


rァ1.「俺が払うよ」そう言って懐からサイフを取り出すと、颯爽と会計に向かった。
 2.「頼んだよ~」付き合わされてる身だからな。ビタ一文出すつもりはなかった。
 3.「別々でいいよね?」一応聞いておく。

マ「俺が払うよ」

  マスターはそう言うと懐からサイフを取り出し、颯爽と会計に向かった。


翠「お、あのダメ人間一人で払うみたいですぅ」

  少し感心したように翠星石が言った。

蒼「・・・」


店「1540円になります」

  マスターがサイフの中身を確認すると

マ「お?」

  昨夜確認した時は1万円とちょっとしか入ってなかったはずだが・・
  諭吉さんがなぜか一人増えてる。

マ「(蒼星石か・・・)」

  蒼星石が気を利かせてお金に不自由しないようにこっそり入れてくれたのだろう。
  マスターの稼ぎが少なく、やりくりも楽じゃないのに・・

俺は蒼星石の心遣いに感謝し、

 1.ありがたく使わせてもらうことにした。
rァ2.これは帰りにおみやげを買わざるをえないと思った。
 3.大事にとっておいて、あとで返そうと思った。

マ「(これは帰りにおみやげを買わざるをえないな)」

  会計を終え、店から出るマスターとみっちゃん。


翠「やけに2人ともニコニコしてるですねぇ」
蒼「そうだね・・」


み「ん~♪ あたし、男の人に奢ってもらったの初めて」
マ「だからあんまり引っ付っかないでって」
み「♪」
マ「はぁ。ところで、草笛さんの行きたいところって?」
み「こっち。ちょっと歩くわよ」

  みっちゃんに促されるまま20分ほど歩いた頃だろうか。
  いつしか人通りの多い商店街に2人は足を踏み入れていた。

マ「なんだ、ショッピング?」
み「そんなとこね」
マ「(まさか荷物持ちでもやらされるのか・・)」

さらに五分ほど歩いたところ

み「ここよ」

  数多ある商店の中でもとりわけ大きく新しいビルだ。


翠「あ、あ、また建物の中に入っていくですぅ。
  うう~、これじゃあ2人の様子がわからんですよぅ」
蒼「諦めるしかないね」
翠「く~~」

  未練がましくビルの周りをうろうろ飛び回る翠星石。

蒼「もう帰ろうよ、翠星石」
翠「いいんですか、蒼星石? きっと、今頃あの建物の中で2人はよろしく
  やってるに違いないですぅ」
蒼「よ、よろしくって・・・?」
翠「そうですねぇ・・たとえば・・、ギュ~~~って抱き合ったり・・」
蒼「えぇっ」
翠「そしてそのままチュウ~~~ってしてたりなんかして・・・」
蒼「や、いやだ・・そんな、マスターがそんなこと・・。ううん、するわけない」
翠「どうですかねぇ、さっきからあの2人、傍から見ててけっこうラブラブっぽいですよ?
蒼「気のせいだよ」

  そう言う蒼星石だったが自信無さげだった。

翠「うう~ん、やっぱり気になるですねぇ~。ここは一つ、強行突入するしかねぇです」
蒼「だ、ダメだよ、マスターや他の人に見つかったらどうするのさ」
翠「だから見つからないように行くんですよ。蒼星石もあの2人のことが気にならないですか?」
蒼「そ、それは・・気にはなるけど・・・」
翠「じゃあ決まりですぅ。ほら、行くですよ」
蒼「あ、ちょっと翠星石!」

 ビルの中は多数のテナントが埋まるいわばビル自体が複合型店舗のようになっていた。

マ「(ショッピングかぁ・・・。まぁデートらしいっちゃらしいな)」
み「♪」

  やれやれといったふうにみっちゃんについていくマスター。  
  しかし・・・
  服などのブランド品を扱ってる店を見向きもせず、みっちゃんはどんどん進んで行く。

マ「(はて、いったい何買うんだろう?)」
み「着いたわよ」
マ「ここは・・」

ショーウィンドから覗ける店舗の雰囲気に、一瞬、衣類を扱うブランド品店かと
  マスターは思ったが、違う。
  煌びやかな衣装を纏ったマネキンたちが・・・異様に小さい。
  これではまるで・・・

み「このドールショップ最近できたのよ」
マ「ドールショップ?」
み「そそ」

  みっちゃんはマスターを置いてさっさと入店してしまった。
  恐る恐るマスターも入店する。
  中は光度を抑えられた照明が決して広くない店内に点在するだけで、
  思いのほか薄暗かった。
  目を凝らして辺りを見回すと、色々な衣装とポージングをとったドール達が
  棚に陳列されている。

そのドール達一体一体がどれも美しく、煌びやかだった。
  初めて目にする光景にマスターは息を呑む。

マ「(ってかみっちゃんは?)」

  再度首を巡らすマスター。
  みっちゃんはというと、カウンターのほうで若い女性の店員と楽しそうにお喋りしている。

マ「(俺はどないしろっちゅうんだ)」

俺は

 1.ドールについて色々聞けるかもしれない。
   みっちゃんと店員さんの会話に入ってみることにした。

rァ2.何か蒼星石におみやげになるものがあるかもしれない。
   もっと店内を物色してみることにした。

 3.今頃蒼星石達何してるかな。
   桜田さん宅に電話をかけてみた。

 何か蒼星石のおみやげになるものがあるかもしれない。
   マスターはもっと店内を物色してみることにした。

マ「(蒼星石のおみやげになりそうなものはと・・)」

  やはり蒼星石も女の子、可愛い洋服とかどうだろうか。
  そう考え、改めてマスターは展示されてる可愛い洋服を纏ったドールたちを見やった。

マ「(ううむ・・たかが人形の服と舐めてたわけじゃないけど・・・よく見れば見るほどよくできてるなぁ。
   値段も人間の服並かそれ以上だし・・・)」

  ドールは小さい。その小さいドールに着せる服なのだからかなり高い洋裁の技術が要るのだろう。

マ「うーむ・・・」

カウンターで店員と人形談義に花を咲かすみっちゃん。

店「ところで草笛さんと一緒にきた人・・・もしかして彼氏さんですか?」

  話の途中で店員が少し声を潜めて訊いてきた。 

み「違うわ。ただのお友達よ。ドールのことに興味ありそうだったからここに連れてきたの。
  ほら、あんなに真剣に見てるわ。やっぱりあたしの思った通りね」
店「こっちの世界に引き込んじゃうんですね」
み「ふふ」

  ドールに見入り続けるマスターの姿に不敵な笑みを浮かべる二人だった。

マ「出来もさることながら色んなのがあるなぁ・・・」

  展示されてるドールの服を見回ってみるとその種類の多さに驚かされる。
  普段着、セーター、ジャケット、ドレスにジャージまである。
  和服だと振袖とか・・・

マ「(ん、この赤と白の和服は・・・もしや、巫女服!?)」

  ここで巫女服姿の蒼星石、翠星石が頭に浮かんだ。
  朝、境内をチュンチュンとスズメが鳴く中、箒を持って掃除に勤しむ双子・・・

マ「(やばい・・具体的なシチュまで浮かんでしまった)」


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