蒼と行く2泊3日と旅:弐

マ「・・・・んむ。」

おや、随分寝ちまったみたいだ。
隣に目をやると蒼が身体を預け眠っていた
起こさないようにそーっと上着を脱いで被せてやる

マ「ふわぁ、まさか寝過ごしてないよな?」

時計を見やる。
ふむ。丁度良い時間だな。

マ「しっかし一人だと暇だなぁ」

車内はがらーんとしていて特に暇潰しするネタが見つからない

ああそれにしても蒼の寝顔可愛いなぁ

いたずらしちゃおうかないたずら
ちゅーしちゃおうちゅー!

蒼が可愛すぎるのが悪いんだい!

色々自分に言い訳しながら安らかに眠る蒼のおでこに軽く口付けした

ふと後ろの方の席から大きな怒号のようなものが聞こえた
気になって後ろを覗いてみる。む。誰もおらん。

マ「寝ぼけてたのかな?」
蒼「ん・・・」

俺が座りなおすとその揺れでか蒼が目を覚ましたようだ

蒼「あ、おはよ・・ますた。」
マ「おはよう。起こしちゃったかな?」

寝癖のついた髪の毛をくしゃくしゃ撫でながら直してやる

蒼「んーん、大丈夫。・・?あ、これ・・」

蒼が俺のかけてあげた上着に気付いた

マ「もう春っつてもまだ寒いしな。」

ちょっと照れくさかったので窓の方に視線を向けながら答えた

蒼「マスター、ありがと。」

俺の腕に蒼星石がしがみついてくる

マ「ん、ん、おう。」
蒼「・・好きだよ。」

な、なんか今日この子大胆すぎじゃありませんこと?
予想外の展開に俺の心臓は爆発寸前だった

「えー次はー若跳ー若跳ー。」

車内アナウンスが流れる。若飛、俺らの目的地だ。

蒼「あっ、もう着くの?」
マ「そうみたいだな。」
蒼「マスター、若跳ってどんなとこなの?」

マ「ん、海がとても綺麗で有名なところでな。観光名所としても知られるんだ
浜辺にはグラビアアイドルとかが良く来るらしい、楽しみだな。」
蒼「・・・・」
マ「冗談冗談。こんな可愛い娘が隣に居て目移りなんて出来ませんて。」

むすっとしている蒼の頭を撫でてやる

蒼「もう、マスターの馬鹿。」

悪態をつきながらも表情ははにかんでる。
可愛いやつめ。

ぷしゅー

とか何とか言ってるといつの間にか電車は駅についていた

マ「おっと、乗り過ごしちまう。降りるぞ!」
蒼「あ、うん!」





蒼「・・・・・・す、すごいね。」
マ「・・・・・・ああ。」

俺と蒼はすっかり呆然としていた

所詮商店街の福引レベルの旅館だと思っていたのに
こんな部屋泊まったことないわ・・

蒼「う、うわわ!ますたー!海!海が見えるよ!?」

部屋をうろうろしていた蒼が障子窓を開くと
そこには空の色を写した美しい海が広がっていた

蒼「うっわぁ・・す、すごい・・」

蒼星石が目をキラキラさせて喜んでいる
そりゃはしゃぐのも無理は無い
誘った俺ですらこれほどとは思ってなかったしな

ああそれにしてもはしゃぐ蒼星石可愛いよ蒼星石

マ「どう?楽しんでる?」

あまりの可愛さに耐え切れなくなり蒼の頭をくしゃくしゃ撫でる

蒼「あ、う、うん・・へへ、くすぐったいよ。」

にっこりと笑う蒼の可愛さは眩しすぎて浄化されそうになってしまう

マ「さて、そんじゃ遊びに行くかね?」

2泊3日しかねーんだ、遊びつくしてやるぜぇ!





蒼「ひゃっ、やっぱりまだ冷たいや。」

蒼が足だけ水に漬かって言った

マ「まぁまだ春先だしなぁ・・」

水着を持ってきてないのもそのためだ

蒼「ねぇねぇマスター。」
マ「ん?」

蒼に呼ばれ振り向くと冷たい海水がばしゃっと顔に当てられる

マ「つめたっ!・・くっそ、やったな!待て!」
蒼「あはは、こっちこっち!」

ぱしゃぱしゃと水音を立てて追いかけっこする俺ら
水色のブラウスと白い半ズボンに身を包んだ蒼が何とも愛らしい

マ「待て待て!あっ・・!」
蒼「うわぁっ!」

もう少しで追いつくというところでバランスを崩し蒼の上に倒れこんでしまった

マ「うわっ!ごめん!大丈夫か!?」

身体が小さいので倒れた蒼は全身水に漬かってしまってた

蒼「けほけほ・・う、うん・・だ、大丈夫だよ。」
マ「ごめん!本当ごめ・・ん、えと、その・・うん。」
蒼「?・・あ!ぁ、あぅう・・」

蒼が胸を押さえて顔を真っ赤にし座り込む
水でブラウスが濡れて・・その、透けてしまっているのだ。

マ「え、えっと!とにかく服乾かさなきゃ!服!な!」
蒼「う、うん!そうだね!うん!」

何か良くわからないテンションになって俺らは大急ぎで旅館に戻り着替えた

マ「ほんっとーにごめんなさい!」

土下座をする俺
気高い乙女の肌を服から透かせてちょっとでも・・その、見てしまったのだ
ドールマスターでなければ万死に値しているところだ

蒼「えっと、その、全然気にしてないから、ね?」

どうしていいかわからず困った顔をする蒼

蒼「わかった、じゃあお詫び・・してくれる?」

蒼が赤くなってもじもじしながら言った

マ「何なりとお申し付けください!」

蒼「手、つなぎながら・・一緒に買い物でも・・したいな?」
マ「!!!!」

赤面+うつむき+もじもじコンボ(←タメ→+P)だっ!
俺は耐え切れるはずもなく蒼を抱っこしたまま旅館を走り抜けた

蒼「うわぁ!?あ、あの!マスター!?抱っこじゃなくて、手繋いでだってばぁ!」
マ「あははどっちも同じ同じ!」

「見せ付けてくれますね・・」

ぞくり
まるで背中を巨大なムカデが走り抜けたような悪寒が走る

「初めてですぅ・・翠星石をここまでコケにしてくれたお馬鹿さんは・・」
「あーあー、まだ出て行っちゃダメって言ったのに・・」

聞き覚えのある単語と声に俺は蒼を抱っこしたまま動けなくなっていた
ま、まずい・・

そのとき俺の頭の中に子供の頃の思い出が駆け巡る
ああ、これが走馬灯というやつなんだなと一瞬で理解できた

しかしあの暴君姉君が何故こんなところに居るんだ?
というかいつから居るんだ?場合によってはヤバすぎる

いやもはや今こうやって抱っこしてるだけでも
俺の命は風前の灯ではないのか!

蒼「ますたーどうしたの?後ろから声がしたけど・・あ、翠星石!」

俺が固まっていたので蒼が後ろにひょいっと顔を出す
しかし今顔を出しちゃダメだ!翠星石の鬼神のような表情が・・

翠「偶然ですね蒼星石!」

さっきの血を這う大蛇の如き低音ボイスではないいつもの翠星石の声が返ってくる
馬鹿な、幻聴だったのか?

翠「おら、変態人間。とっとと蒼星石を降ろすです。」

悪い口調だがさっきのような鬼神ボイスでは無い。俺は安心して蒼を降ろして振り向いた

マ「おや、何だか珍しい組み合わせ。」

そこには翠星石、金糸雀、ジュンくんの3人が立っていた

翠「たまたま今日翠星石たちもこっちに旅行だったんですよ!
さっき旅館に入ってくのを見かけてびっくりしたですぅ!」

何だか言葉に節々に怒気が孕んでる気が・・
うう、やっぱり怒ってるんだろうなぁ

蒼「真紅たちは居ないのかい?」
金「何か用事があったらしいかしらー、残念かしらー。」

白々しすぎる・・
こりゃこいつら最初からつけてきてたな・・

げっ、だとすると・・色々見られてる?
全身の血の気が引く俺

翠「ところで何をするつもりだったんですかぁ?」

普通の声にもびくっとしてしまう俺

蒼「あ、ああ、マスターと、その、一緒に買い物行くところだったんだ!」

ちょっと恥ずかしそうに蒼が言った

翠「ふーん、じゃ翠星石もついてっていいですか?」
蒼「え、あ、うん!もちろんだよ!」

金「厄介なことになった、って思ってるかしら?」

いつの間にか俺の横に居た金糸雀が声をかける

マ「うおっ、何だ君か・・」
金「む、何だは無いかしらー!」

金糸雀が頬を膨らませて言った

金「ま、安心するかしら。今日のカナはあなたの味方よ?」

ぼそっと耳元でそう言われた

マ「へ?あ、そ、そうなのか・・」

少し安心したけど、カナ「は」ってことは翠星石は敵なのか・・

金「それじゃ、今日は頑張るかしら。」

そう言い残して金糸雀は翠星石と蒼のところへ戻っていった
その時、金糸雀の口が少し動いた気がした。

金「ま、翠星石の味方でもあるけどね・・」





わいわい
きゃっきゃっ

お土産屋さんでくんくんキーホルダーを見てはしゃぐ美人姉妹3人・・
ああなんと美しい光景だろう・・

マ「おや、ジュンくんも輪に混ざってこないのかい?」

いつの間にか俺の隣でつっ立ってたジュンくんに話かける

ジ「いや僕はああいう楽しげなの苦手だし・・マスターさんこそ入っていかないんですか?」
マ「まぁそりゃ普段なら入ってくけどねぇ・・」
ジ「翠星石、ですか・・」

ジュンくんが同情の目でこっちを見てきた
「君が義姉さんとラブラブになってくれれば彼女も落ち着くのに!」って言いたいけど
口が裂けても言えるわけが無い

ジ「あの、今日は本当すいませんね。」
マ「ん?いやいや良いのよ、旅は多い方が楽しいし。」
ジ「それもあるんですけど・・本当すいません。」

嫌な予感がしてふと蒼達の方を見ると
    • 2人しか居ない

まさか!!!

翠「すい、どりーむ。」

甘い声でそう囁かれる

「やっぱり俺は・・間違っていなかった・・
        • そ(うせいせきのかわいさは)・・・い(じょう)・・・・」

どさっ




蒼「さ、このお店もひとしきり楽しんだし、そろそろ行こうか。」
金「そうね。」

僕らはくんくんグッズをすっかり楽しんで店を出た

蒼「あれ、マスターと翠星石とジュンくんは?」

辺りを見渡すが店の前には誰も居ない

金「多分こっちかしら。」
蒼「あ、待ってよ。」

金糸雀が何か知っているのか駆け出した

少し走った後僕らは海の見える高台のような場所に出た
しかし、そこには人っ子一人いる様子は無い

蒼「全く誰も居ないじゃな・・」

次の瞬間僕の顔に衝撃波がかすった

金「第1楽章 攻撃のワルツ。」
蒼「なっ!?いきなり何を・・レンピカ!」

まさかアリスゲームを始めるつもりなのか!?
僕はとっさにハサミを出して身構えた

金「第2楽章 追憶のカノン!」
蒼「くっ!」

間合いを取られた遠距離攻撃・・
ハサミでの打撃しか出来ない僕は避けるのが精一杯だった

金「安心するかしら!アリスゲームを始めるつもりはないし
ローザミスティカも取りはしないかしら!」
蒼「くそっ・・なら何のために!」
金「そんなことよりマスターさんが心配じゃなくて!?」

金糸雀の言葉にはっとする
翠星石とマスター・・(とジュンくん)?

蒼「まさか・・」
金「私の役目は時間稼ぎよ。だからちょっと眠ってて欲しいのかしらっ!
第2楽章 追憶の・・っ!?」

僕は地面を蹴り上げ金糸雀へ飛び掛った

金「うわわっ、反撃のパルティータ!」

紙一重で避けられ金糸雀の攻撃を食らいのけぞった

金「ちょ、ちょっと!反則かしら!なんでそんな身のこなしが出来るかしら!?」
蒼「金糸雀・・君、さっきローザミスティカは取りはしないって言ったよね?」
金「へ・・それがどうかしたかしら?」
蒼「翠星石に何で釣られてるか知らないけど・・マスターに手をかけるってことは」


蒼「ローザミスティカを落としても、文句は言わないことだね。」


僕はそう言って金糸雀にハサミを向けてにらんだ


金(や、やっぱりやめときゃよかったかしら!こ、ここ怖すぎるかしら!翠星石早く来てえええぇぇえ!)


つづく→