翠星石は、高史と蒼星石の契約破棄の一部始終を目撃した後、気づかれないように居間へ向かった。
居間では、翠星石のミーディアム、川口浩司と、真紅のミーディアム、川口剣汰が、将棋をしていた。
勝負は、剣汰が少しばかり劣勢のようだ。

剣汰「大樹が・・・倒れたか・・・
   桂馬を右前へ。」
浩司「そう・・・ですね。
   角行でその桂馬をいただき、龍馬に。」
翠「あの馬鹿人間、蒼星石との契約を破棄しやがったです。」
浩司「・・・最悪の結末になってしまいましたね・・・」
翠「でも、あれがあいつの選択なら翠星石は止めません。
  たとえ誰かが、あいつが蒼星石が後悔することになっても自分のせいだとも思いません。
  ・・・多少は残念に思うかもしれませんが。
  あいつの意思と決断とその責任を尊重するからです。
  だから止められません。
  それがあいつの考え抜いた結果ならもう何も言いません。
  単なる契約の相手だったら他にも大勢居るんですからね。
  まったく、あいつって奴は最後まで馬鹿人間でした。」
剣汰「確かに、翠星石が悔やむ必要は無いな。
   香車を5マス前へ。」
浩司「・・・それが翠星石の考えなら、僕に意見はないよ。
   でも・・・その「契約の相手」が、高史のほかにいるかどうか・・・
   そこは、少しわかりかねるかな・・・
   ところで剣汰さん、その「大樹」が倒れた経緯について、どうお考えですか?
   龍馬でその香車をいただきます。」
剣汰「何かが原因で、「大樹」に「虫」がついた。
   その「虫」は、徐々に蒼星石側の「樹」を食い荒らしていった。
   その朽ちかけた「樹」に入った「斧」こそ、高史のあの一言。
   「斧」が入れた切れ目は瞬く間に広がり、「樹」はあっという間に
   切り倒された、ということだ。
   角行を浩司の玉の右上へ、龍馬に。」

浩司がその龍馬をとろうとしたとき、高史がふらつきながら現れた。

高史「剣汰兄ちゃん、浩司兄ちゃん、ちょっと外に行ってくる。」
剣汰「敵の襲撃に気をつけろよ。」
高史「わかってるよ。じゃ。」

そういうと高史は、斬風刀を腰に挿し、ふらつきながら外出した。

斬馬「高史、あの様子では、とても大丈夫には思えませんが・・・
   その龍馬をいただきます。」
剣汰「・・・それは否定できないが、今はそっとしておいてやるのがベタ、なんだろ?」
浩司「・・・そうですね、確かに。」
剣汰「それより浩司、後悔しないな?」
浩司「どういうことですか?」
剣汰「右端に潜ませていた龍王で・・・王手。」
浩司「なっ・・・!?
   しまった・・・僕としたことが・・・」
翠「蒼星石の様子を見てくるです。」
剣汰「好きにしろ。」

翠星石は浩司の部屋に入った。
蒼星石は、まだ鞄に閉じこもっていた。

翠「蒼星石、落ち着いたですか?」
蒼「翠星石か・・・ごめん・・・もう少し・・・一人にさせてくれないか・・・」
翠「わかったです・・・」

翠星石は静かに部屋を出た。



一週間後・・・・・・・・・・・
高史は外出してから、いまだにもどっていない。
蒼星石は、鞄から出てくるようにはなったが、元気は全くなかった。