家で階段見上げたらが薔薇乙女第三ドールがいてさ、スカートの中見ちゃったんだよ。そんでその第三ドールにいきなり振り向かれて「し、しゃーないから、責任とられてお嫁に行ってやるですぅ・・・」って言われちゃったんだ。俺は慌てちゃってさ「・・え?は、はぁ・・・」みたいに返してそのまま通り過ぎようとしたら俺のシャツをチョコンと指で掴んでずっとついてくるのね。そんでとうとう部屋までついて来ちゃってさ「は、はじめてだからちゃんと優しくするですよ人間・・・」とか言うわけよ。俺もう理性が吹っ飛んじゃって・・・部屋に入った途端、いきなりスカートをめくりあげながらベッドに押し倒しちゃったんだ。「きゃっ・・・!に、人間、もっと優しくするですぅ・・・」その声のおかげで俺は少し冷静さをとりもどせたんだけどもう、小動物みたいにぷるぷる震えて、ちょっと涙がこぼれかけたりしてんの。それでもまだ俺のシャツの端をきゅって握ってるのが可愛いというか何というか・・・「ご、ごめん!ほら、泣くなよ・・・」そっと涙を指で拭ってやったら「な、泣いてなんかいないですぅ・・・」って。たまらなく可愛く思えて、頬にキスしたりしながら服脱がそうとしたその時ふとドアのほう見ると開け放された部屋の入り口に涙ぽろぽろ流しながら肩を振るわせてる第四ドールの姿があったんだよ <?xml:namespace prefix = o ns = "urn:schemas-microsoft-com:office:office" />
「きゃぁっ!そ、蒼星石!?こここここれはっ、ちち、ちがうですよ!に、人間、何してるですかっ!早く翠星石のベッドから降りるですぅ!」「ちょっ!このベッドは俺のだって・・・うわっ!」大混乱。そんな俺たちを・・・いや、正確には翠星石を見つめ、蒼星石はつぶやいた「キミはボクの心を裏切るんだね・・・悲しいよ」ベッドから突き落とされた俺には目もくれず、静かに翠星石に歩み寄るその表情には何も浮かんでいなかった。ただ細い糸の様な涙が一筋、頬を濡らしている。「翠星石・・・昔のキミは言った。人間なんか嫌いだと・・・」青白い人形の手が、震える翠星石の頬を撫でる。俺も翠星石も気付いていた。そいつの無表情の中にある狂気に。「同感だよ。キミの心を乱す存在・・・ボクら姉妹の絆を壊す存在なら・・・この世から消してしまおう」蒼星石がゆっくりと振り向き、狂気の宿った視線が俺の身体を射抜いた。静かにベッドから降り、恐怖ですくんで立ち上がれない俺の前に立った蒼星石の手にはいつの間にか巨大なハサミが握られていた「さよなら・・・」歪んだ笑みを浮かべて狂気の人形は白銀の刃を俺の胸へと振り下ろした。鋏が迫る、一秒にも満たないほんの僅かな時間。俺の思考回路は死という恐怖に占領された。
ぞぶりっ刃が肉を切り裂く鈍い音が躯の内側を通って俺の耳へと届く。 熱いッ! 冷たいっ! 痛い!強すぎる刺激に神経が脳へとでたらめに信号を送り続ける。やられた! どこを!? 死!? 死ぬのか!? ・・・違う!かろうじて生を渇望する本能が身体を縛る恐怖に勝ったのだろう。無意識に身体を捻ったおかげで心臓に突き立てられるはずだった鋏の一撃は俺の左腕を深く切り裂くに終わっていた。「グゥッ・・・!」喉の奥から自分でも驚くほど低い呻りがこみ上げた。「ボクの一撃をよけるなんて・・・」朱く染まった鋏を構え直した蒼星石が俺に再び歩み寄る。「・・・苦しみが増えるだけだというのに」まずい!逃げなくては!
うまく力の入らない下半身に渇を入れてなんとか俺は部屋を飛び出した。窓から差し込む夕日に照らされた廊下はまるで炎に包まれたかのようにも見える。俺は壁に左肩をあずけ、思うように動かない足を引きずるように階段に向かった。傷口をおさえる右手の指の間から、とめどなく血が溢れくる。「ぐ・・・うぅ・・・」涙がぼろぼろとこぼれた。血を流しすぎたせいか、それとも強烈な殺意を一心に受けたせいか。喉がからからに渇き、頭は割れるように痛む。眩暈と吐き気も止まらない。最悪の気分とはこんなことを言うのだろう。このままここで寝てしまおうか・・・半ば、諦めにも似た思考が脳裏に浮かんだちょうどその時、背中越しに声をかけられた。『人間っ!早く逃げるです!早くっ!』霞みかけた目が覚める。声は部屋の中から響いてきていた。
翠星石!そこで俺は混濁した意識の中でやっと我を戻した。一体、何をしていたのだろう。翠星石を残して一人で逃げ出すなど・・・「翠・・・せ・・・い・・・石・・・!」身体を壁にあずけたままごろりと回転して方向を転換する。『やめるです蒼星石っ!』『何故だ!?何故邪魔をする!?』言い争う双子の声。部屋までの数歩の距離がやけに長い。まだ朦朧とする意識に届く二つの声はミキサーにかけた二つの果物のように混ざり合う。『お願いだからもうやめ』『ふざけるな』『僕らの絆を壊す奴は』『だめ』『何故だ』『だって』『翠星石は』『やめろ』『だまれ』『あの人が』『言うな』『だって』『だめだ』『やめて』『やめろ』『守る』『殺す』『 』『 』『 』『 』『 』『 』『 』溶け合って一つになっていく声を聞きながら一歩ずつ部屋に歩み寄る。「ぁぐぅっ!」やけにクリアな悲鳴が聞こえたのは部屋に辿り着き入り口に手を掛けた瞬間だった。ごとり、と音がした。
入口の縁に手を掛けた姿勢のまま凍り付く。押さえることをやめた左腕の傷口から心臓の鼓動が速くなったのを証明するかのように、尚、一層激しく血液が逃げていく。今の音は・・・それから先を考えたくないと脳が拒否し、唾など出ないというのに喉がゴクリと鳴いた。「・・・あはっ」まだ見ることの出来ない部屋から微かに漏れる声。じわりと額に汗が滲む。続いて聞こえるのは何かを切り刻む鈍い音。「ははははっ ・・・あはっ ははははは」ざしゅっ「はははははははははははは! ・・・美しい・・・」ぐしゅっ「綺麗だよ・・・ ははっ あはははは」ずちゅっ どしゅ・・・やめろ・・・いやだ・・・「ははは すごいよっ なんて美しいんだっ!」ずしゅっ ・・・ にちゃ ・・・もう・・・やめろ・・・「綺麗だ! 美しいよ! もの言わぬキミは本当に美しい!あはっ はは・・・ ははははははははははははははははははは全身を襲う寒気に歯の根が合わない。指が真白になるまでこめられた力が、右手の指の爪を縁に喰い込ませた。「・・・まだそんなところにいるですか?早く入ってくるですよ人間」
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