「スノーレジャー その6」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

スノーレジャー その6」(2007/09/03 (月) 20:02:56) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

   俺は、ほんのちょっとだけ羽目を外して蒼星石とイチャイチャしただけだった。    だがしかし、それを目撃した翠星石は大激怒。    今俺は木の根元に縛られ、翠星石から復讐の虐待を加えられている真っ最中である。 マ:「なぁ、もう勘弁してくれよ」    雪を無理やり食わされるはハリセンでぶっ叩かれて雪球を何発も何発も当てられるは、    俺は心身ともにかなりグロッキー状態になっていた。 マ:「もう気が済んだだろう? 縄解いてくれ、なぁ?」    雪解け水が俺の服を浸食し、ありえないほど体温を奪っていく。    このままでは低体温症になるのは確定的に明らか。 翠:「いーや、ま~だまだこんなもんじゃないですよぅ。    もう二度と蒼星石に破廉恥なことをできないように徹底的に体に覚えこませてやるですぅ」    うへぇ、今までのはまだ序の口だというのか。    楽しそうに俺の顔を覗き込む翠星石と金糸雀。    明らかに調子に乗っている。 翠:「さぁて、次はどんな責め苦を味あわせてやるですかねぇ」    これはそろそろ怒った方がいいかな……?などと考えていると、 金:「でも翠星石、これ以上マスターさんに何かしたら……蒼星石がすご~く怒りそうな気がするかしら」    おずおずと金糸雀が翠星石に切り出した。 翠:「うっ」    嫌な想像が脳裏によぎったのか一瞬翠星石の動きが止まった。    うむ、確かに怒った蒼星石は怖い。    正座させられるのは当たり前。あの峻厳な目でまっすぐ見つめられると    どんなやつでも居竦まれずにはいられない。    気付いたときには謝罪の言葉を述べているのだ。    翠星石もたびたび俺に度が過ぎたイタズラをしては蒼星石に怒られている。    だが、翠星石は嫌な想像を振り払うように頭をブンブンと振ると金糸雀に詰め寄り俺を指差した。 翠:「あのアホ人間のボロボロぶりを見るです。    もう後には引けねぇのです! 金糸雀、こうなったからには、最後まで付き合ってもらうですよぅ…」    どうやら開き直ってしまったようだ。 金:「そ、そんな…かしら!」    金糸雀も蒼星石に怒られたくないようだが、もう遅い。    翠星石の目に狂気じみた光が宿り始めてる。ここで降りたら何をされるか。    翠星石が顔だけをゆ~っくりと俺に向けた。 マ:「………」 翠:「そろそろ真紅が蒼星石を引き止めていられるのも限界ですぅ。ここらで一気に……!」    翠星石の持つハリセンが鈍く光を反射させた。 翠:「何度も何度も繰り返しイタぶれば、ちったぁこのアホケダモノ人間も    蒼星石に手を出せば只では済まないってことを体で覚えるですぅ~」    邪悪な笑みを浮かべ、翠星石が俺にハリセンを振りかぶった。    ああ、これは、やられるなぁ~。 真:「………」 蒼:「………」    かれこれ睨み合うこと数分、蒼星石、真紅は互いに動けないでいた。    2人とももう雪球は無い。とっくに撃ち尽くしている。 真:「………」 蒼:「………」    相手を仕留めるには、一旦足元の雪をすくって雪球を作らねばならない。    状況は双方ともに一緒……と思われたが違った。 蒼:「くっ…」    蒼星石は焦っていた。    一刻も早くマスターの元へ行きたい。 真:「ふ…」    対する真紅は余裕の笑みを口元に浮かべていた。    なぜならば真紅の目的は蒼星石の足止めである。    真紅の望み通りの展開だ。精神的余裕があった。 蒼:「………」    このままでは埒が明かない。    蒼星石は勝負に出た。 蒼:「はっ!」    横っ飛びから雪原を横転し、瞬時に雪をすくう。 真:「!」    負けじと真紅も反応し、蒼星石とは反対方向に横っ飛びを繰り出し、雪原を横転しつつ雪をすくった。 蒼:「はぁ!」 真:「は!」    ニギニギニギニギ……    脇目も振らずニギニギと必死に雪球を作る蒼星石と真紅。    ニギニギニギニギ……    2人とも目が真剣であった。    ニギニギニギニギ……    そして真紅の手の中に相手を仕留めるのに充分な硬さを持った雪球が出来上がった。 真:「できたのだわ! ぶっ!」    真紅が雪球の完成を喜んだのも束の間、顔面に雪球が炸裂した。 蒼:「ふっ…」 真:「………」    真紅が雪まみれの顔を前方へ向けると、得意満面の蒼星石がいた。    真紅よりも一足早く雪球を作り終え、投げたのだった。 真:「私の負けね…」    潔く負けを認める真紅。    今の勝負、勝敗の鍵は雪球を握るスピードだった。 真:「どうやればそんなに早く握れるのかしら?」 蒼:「ふふ、それはね。おばあさんに教わったオニギリの握り方を応用したんだ」    真紅に勝てたのが嬉しいのか、蒼星石は上機嫌だ。 真:「オニギリ?」 蒼:「うん、こんな風にね」 真:「………」    蒼星石が雪を握るさまをまじまじと眺める真紅。    蒼星石の手の中の雪がどんどん三角型のオムスビ状になっていく。 蒼:「真紅もちょっとはお料理できるようになったほうがいいと思うよ」    リズミカルに手の中の雪球を回転させ握っていく蒼星石。 真:「なぜ?」 蒼:「なぜって……、ジュン君に手料理とかを食べさせてあげたいとか思わないの?」    真:「え、なっ。べ、別に思わないわよ! な、なぜ私がジュンに…!」 蒼:「ふーん」 真:「よ、余計なお世話なのだわ。別に料理ができなくても……」    この時、真紅は翠星石がよくジュンにお菓子を振舞っていることを思い出した。    お菓子の美味しさに顔を綻ばすジュンと、ジュンの笑みに顔を綻ばす翠星石。    最近、いい仲である。 真:「………」    やがて蒼星石の手の中に雪球が出来上がった。 蒼:「ね、こんなふうに作るんだよ」 真:「そう…」 蒼:「………」 真:「………」 真:「………」 蒼:「………」 蒼:「あれ、何か忘れてるような……」 真:「………」 蒼:「………」 真:「………」 蒼:「………」 真:「………」 蒼:「あーーー! ますたぁあああ!」    雪球を放り投げ、一目散に蒼星石は走り出した。    猛ダッシュで走り去っていく蒼星石。    その後姿を見送りながら、真紅は軽く物憂げに溜め息をついたのだった。 真:「ふぅ……」 マ:「落ち着けって翠星石 話せばわかる!」 翠:「ハァ…! ハァ…!」    なんかものっそい興奮してる。    これはもう俺の言葉が耳に入ってないんじゃなかろうか。    なぜにここまで翠星石が思いつめるのか…    思い当たる節が無いことも無いが、ここ最近特に酷い。    金糸雀はというと、翠星石の強面にすっかり怯えてしまい、止めてくれる気配は無い。 マ:「………」    だからといってこれ以上翠星石に横暴な真似をさせるわけにはいかない。さて、どうすんべか。    この窮地を脱する方法……    うーむ。    思いつくっちゃあ思いつくが、どれもこれも暴力的で、とてもとてもこの子達に対して実行できるものではない。    なんとか平和的解決策は無いものだろうか。    ああ、やばい。    今にも翠星石は俺にハリセンを振り下ろそうとしてる。 マ:「……ガクッ」    突然俺は目をつぶって力なくこうべを垂れた。    もうこうなりゃ非暴力・不服従の道しかねぇ。半ば開き直りだ。    くるならこい! 俺は耐えてみせよう。 翠:「?」 金:「?」 マ:「………」 翠:「………」 金:「………」    目をつぶり、こうべを垂れてるので2人の様子はわからない。 翠:「アホ人間……?」 金:「マスターさん……?」 マ:「………」 翠:「どうしたですか……?」    翠星石がおずおずと俺の腕をつつく。    何かさっきまでと比べて2人の様子がおかしい。 翠:「目を開けるですよ…?」 金:「目を開けるかしら…?」    翠星石と金糸雀が俺を揺さぶった。 翠:「どうしたですか、アホ人間。目を開けるですよ」 マ:「………」 翠:「アホ人間」    蒼星石がさらに激しく俺を揺さぶった。 マ:「………」 金:「これは一体どうしたことかしら? マスターさん急に動かなくなってしまったかしら?」 翠:「起きるですぅ~、アホ人間~!」 金:「きっと翠星石がいろいろ無茶するからマスターさんが力尽きてしまったかしら!」 マ:「………」    もしや、これはこのまま狸寝入りを続けた方が得策か? 翠:「まずいですぅ。こんなグッタリしたアホ人間を蒼星石に見られたら、何されるかわかったもんじゃないのですぅ」 金:「ぞ、ゾゾ~~。ああ、翠星石が無茶するから~~!」 翠:「金糸雀だってアホ人間に色々したですぅ~!」 金:「カ、カナは翠星石に命令されてイヤイヤだったかしら!」 翠:「嘘つけですぅ! すご~く楽しそうにやってたですぅ!」 金:「何言うかしら! 楽しそうにやってたのは翠星石のほうかしら! か、カナはただ…」  翠:「ああ~っ、さては蒼星石にもそう言い逃れる気ですぅう!?」    なんか揉め始めた。    この後もギャーギャーと言い争いを続ける翠星石と金糸雀。    俺はどうすればいいんだろか。 マ:「………」 翠:「もうこうなったらこのままアホ人間を放置して逃げるしかないです……」    おいおい。 金:「それよりも適当なとこにマスターさん埋めちゃえば春まで発見されないで済むかしら!」    済まないよ! 根本的に解決になってないから! やめて! 翠:「………」 金:「………」    2人から視線を感じる……    身じろぎすらできない。 マ:「………」 金:「………」 翠:「起きないですねぇ」    金糸雀が俺の頬に手を当てた。 金:「とっても冷たいかしら」    そりゃあれだけ雪責めにあったからな。 金:「……このままじゃマスターさん、凍死……かしらっ」 翠:「!」    んん? 翠:「アホ人間! 起きろですぅ~! 寝たら死ぬですぅ~~!」    バシィッ! マ:「ぶべら!」    いきなりハリセンでぶったたかれた。 翠:「起きるですぅ!」    バキ! マ:「りべら!」 翠:「起~き~る~ですぅ~~~!」    ドゲシ! マ:「おりば!」    ・    ・    ・    ・ マ:「グゥ………」    マスター完全に沈黙。    舌出して気絶している。 金:「どうするかしら。なんか悪化したように見えるかしら」 翠:「や、やっちまったです……!」 蒼:「ま~す~た~~!!」 金:「!!」 翠:「!!」    蒼星石、ついに到着。だが目に入ってきたのは……    縄で木に縛り付けられ、ぐったりとのびているマスターであった。 蒼:「そんな……、マスターー!」    慌てて駆け寄る蒼星石。 蒼:「レンピカ!」    蒼星石は鋏を取り出し、マスターを呪縛する縄を一刀の元に切断した。    ドサッ    崩れ落ちるマスター。 蒼:「ああ、マスター! マスター!」    蒼星石が必死にマスターに呼び掛ける。 マ:「う~~ん……」 翠:「に、逃げるですぅ…!」 金:「逃げるかしら…!」    蒼星石がマスターに気をとられてる間に、翠星石、金糸雀は逃走の構えに入った。 蒼:「翠星石! 金糸雀!」 翠:「ひぃい!」 金:「ゆ、許してかしらぁ!」    蒼星石のあまりの剣幕に2人の足がもつれる。 マ:「う……ん、……て…んしさま?」 蒼:「マスター!」 マ:「寒いよぅ寒いよぅ」    ぶるぶると震えるマスター。 蒼:「マスター、しっかりして!」 マ:「寒いよぅ寒いよぅ、ぼく、なんだかとても疲れたみたいだよ……そうせいせき……」 蒼:「ああ、どうしよう!」 マ:「寒い……さむさむ」    しきりに寒さを訴えるマスターに、蒼星石は何も打つ手が無かった。 翠:「蒼星石、これを使うですぅ!」 蒼:「これは!」    翠星石から渡されたのは、のりが残していった、熱いお茶が入った水筒だった。    急いで水筒の蓋を開け放つ蒼星石。 翠:「はやく飲ませ…」 蒼:「これであったまって! マスター!」    なんと蒼星石、何を思ったか水筒の中身を全部マスターの全身にぶちまけたではないか。    次の瞬間……! マ:「あちぃああああああああああ!!」    そこには元気に雪原を転がり回るマスターの姿が! 金:「な、なんてことするかしら!?」 蒼:「この方が早くあったかくなれると思って……」 マ:「あじゃじゃああああああああ!!」    ひとしきり転がり回ったあと、マスターの動きがパタッと止った。 蒼:「マスター!」    蒼星石が駆け寄りマスターの顔を心配そうに覗きこむ。 蒼:「マスター、しっかりして!」 マ:「ぜぇぜぇ……! も…もう、もう翠星石の前で蒼星石とイチャイチャしたりなんかしないよ……ガクッ」 蒼:「ますたぁあああ!!」                                                                     「スノーレジャーその7」に続く
   俺は、ほんのちょっとだけ羽目を外して蒼星石とイチャイチャしただけだった。    だがしかし、それを目撃した翠星石は大激怒。    今俺は木の根元に縛られ、翠星石から復讐の虐待を加えられている真っ最中である。 マ:「なぁ、もう勘弁してくれよ」    雪を無理やり食わされるはハリセンでぶっ叩かれて雪球を何発も何発も当てられるは、    俺は心身ともにかなりグロッキー状態になっていた。 マ:「もう気が済んだだろう? 縄解いてくれ、なぁ?」    雪解け水が俺の服を浸食し、ありえないほど体温を奪っていく。    このままでは低体温症になるのは確定的に明らか。 翠:「いーや、ま~だまだこんなもんじゃないですよぅ。    もう二度と蒼星石に破廉恥なことをできないように徹底的に体に覚えこませてやるですぅ」    うへぇ、今までのはまだ序の口だというのか。    楽しそうに俺の顔を覗き込む翠星石と金糸雀。    明らかに調子に乗っている。 翠:「さぁて、次はどんな責め苦を味あわせてやるですかねぇ」    これはそろそろ怒った方がいいかな……?などと考えていると、 金:「でも翠星石、これ以上マスターさんに何かしたら……蒼星石がすご~く怒りそうな気がするかしら」    おずおずと金糸雀が翠星石に切り出した。 翠:「うっ」    嫌な想像が脳裏によぎったのか一瞬翠星石の動きが止まった。    うむ、確かに怒った蒼星石は怖い。    正座させられるのは当たり前。あの峻厳な目でまっすぐ見つめられると    どんなやつでも居竦まれずにはいられない。    気付いたときには謝罪の言葉を述べているのだ。    翠星石もたびたび俺に度が過ぎたイタズラをしては蒼星石に怒られている。    だが、翠星石は嫌な想像を振り払うように頭をブンブンと振ると金糸雀に詰め寄り俺を指差した。 翠:「あのアホ人間のボロボロぶりを見るです。    もう後には引けねぇのです! 金糸雀、こうなったからには、最後まで付き合ってもらうですよぅ…」    どうやら開き直ってしまったようだ。 金:「そ、そんな…かしら!」    金糸雀も蒼星石に怒られたくないようだが、もう遅い。    翠星石の目に狂気じみた光が宿り始めてる。ここで降りたら何をされるか。    翠星石が顔だけをゆ~っくりと俺に向けた。 マ:「………」 翠:「そろそろ真紅が蒼星石を引き止めていられるのも限界ですぅ。ここらで一気に……!」    翠星石の持つハリセンが鈍く光を反射させた。 翠:「何度も何度も繰り返しイタぶれば、ちったぁこのアホケダモノ人間も    蒼星石に手を出せば只では済まないってことを体で覚えるですぅ~」    邪悪な笑みを浮かべ、翠星石が俺にハリセンを振りかぶった。    ああ、これは、やられるなぁ~。 真:「………」 蒼:「………」    かれこれ睨み合うこと数分、蒼星石、真紅は互いに動けないでいた。    2人とももう雪球は無い。とっくに撃ち尽くしている。 真:「………」 蒼:「………」    相手を仕留めるには、一旦足元の雪をすくって雪球を作らねばならない。    状況は双方ともに一緒……と思われたが違った。 蒼:「くっ…」    蒼星石は焦っていた。    一刻も早くマスターの元へ行きたい。 真:「ふ…」    対する真紅は余裕の笑みを口元に浮かべていた。    なぜならば真紅の目的は蒼星石の足止めである。    真紅の望み通りの展開だ。精神的余裕があった。 蒼:「………」    このままでは埒が明かない。    蒼星石は勝負に出た。 蒼:「はっ!」    横っ飛びから雪原を横転し、瞬時に雪をすくう。 真:「!」    負けじと真紅も反応し、蒼星石とは反対方向に横っ飛びを繰り出し、雪原を横転しつつ雪をすくった。 蒼:「はぁ!」 真:「は!」    ニギニギニギニギ……    脇目も振らずニギニギと必死に雪球を作る蒼星石と真紅。    ニギニギニギニギ……    2人とも目が真剣であった。    ニギニギニギニギ……    そして真紅の手の中に相手を仕留めるのに充分な硬さを持った雪球が出来上がった。 真:「できたのだわ! ぶっ!」    真紅が雪球の完成を喜んだのも束の間、顔面に雪球が炸裂した。 蒼:「ふっ…」 真:「………」    真紅が雪まみれの顔を前方へ向けると、得意満面の蒼星石がいた。    真紅よりも一足早く雪球を作り終え、投げたのだった。 真:「私の負けね…」    潔く負けを認める真紅。    今の勝負、勝敗の鍵は雪球を握るスピードだった。 真:「どうやればそんなに早く握れるのかしら?」 蒼:「ふふ、それはね。おばあさんに教わったオニギリの握り方を応用したんだ」    真紅に勝てたのが嬉しいのか、蒼星石は上機嫌だ。 真:「オニギリ?」 蒼:「うん、こんな風にね」 真:「………」    蒼星石が雪を握るさまをまじまじと眺める真紅。    蒼星石の手の中の雪がどんどん三角型のオムスビ状になっていく。 蒼:「真紅もちょっとはお料理できるようになったほうがいいと思うよ」    リズミカルに手の中の雪球を回転させ握っていく蒼星石。 真:「なぜ?」 蒼:「なぜって……、ジュン君に手料理とかを食べさせてあげたいとか思わないの?」    真:「え、なっ。べ、別に思わないわよ! な、なぜ私がジュンに…!」 蒼:「ふーん」 真:「よ、余計なお世話なのだわ。別に料理ができなくても……」    この時、真紅は翠星石がよくジュンにお菓子を振舞っていることを思い出した。    お菓子の美味しさに顔を綻ばすジュンと、ジュンの笑みに顔を綻ばす翠星石。    最近、いい仲である。 真:「………」    やがて蒼星石の手の中に雪球が出来上がった。 蒼:「ね、こんなふうに作るんだよ」 真:「そう…」 蒼:「………」 真:「………」 真:「………」 蒼:「………」 蒼:「あれ、何か忘れてるような……」 真:「………」 蒼:「………」 真:「………」 蒼:「………」 真:「………」 蒼:「あーーー! ますたぁあああ!」    雪球を放り投げ、一目散に蒼星石は走り出した。    猛ダッシュで走り去っていく蒼星石。    その後姿を見送りながら、真紅は軽く物憂げに溜め息をついたのだった。 真:「ふぅ……」 マ:「落ち着けって翠星石 話せばわかる!」 翠:「ハァ…! ハァ…!」    なんかものっそい興奮してる。    これはもう俺の言葉が耳に入ってないんじゃなかろうか。    なぜにここまで翠星石が思いつめるのか…    思い当たる節が無いことも無いが、ここ最近特に酷い。    金糸雀はというと、翠星石の強面にすっかり怯えてしまい、止めてくれる気配は無い。 マ:「………」    だからといってこれ以上翠星石に横暴な真似をさせるわけにはいかない。さて、どうすんべか。    この窮地を脱する方法……    うーむ。    思いつくっちゃあ思いつくが、どれもこれも暴力的で、とてもとてもこの子達に対して    実行できるものではない。    なんとか平和的解決策は無いものだろうか。    ああ、やばい。    今にも翠星石は俺にハリセンを振り下ろそうとしてる。 マ:「……ガクッ」    突然俺は目をつぶって力なくこうべを垂れた。    もうこうなりゃ非暴力・不服従の道しかねぇ。半ば開き直りだ。    くるならこい! 俺は耐えてみせよう。 翠:「?」 金:「?」 マ:「………」 翠:「………」 金:「………」    目をつぶり、こうべを垂れてるので2人の様子はわからない。 翠:「アホ人間……?」 金:「マスターさん……?」 マ:「………」 翠:「どうしたですか……?」    翠星石がおずおずと俺の腕をつつく。    何かさっきまでと比べて2人の様子がおかしい。 翠:「目を開けるですよ…?」 金:「目を開けるかしら…?」    翠星石と金糸雀が俺を揺さぶった。 翠:「どうしたですか、アホ人間。目を開けるですよ」 マ:「………」 翠:「アホ人間」    翠星石がさらに激しく俺を揺さぶった。 マ:「………」 金:「これは一体どうしたことかしら? マスターさん急に動かなくなってしまったかしら?」 翠:「起きるですぅ~、アホ人間~!」 金:「きっと翠星石がいろいろ無茶するからマスターさんが力尽きてしまったかしら!」 マ:「………」    もしや、これはこのまま狸寝入りを続けた方が得策か? 翠:「まずいですぅ。こんなグッタリしたアホ人間を蒼星石に見られたら、何されるかわかったもんじゃないのですぅ」 金:「ぞ、ゾゾ~~。ああ、翠星石が無茶するから~~!」 翠:「金糸雀だってアホ人間に色々したですぅ~!」 金:「カ、カナは翠星石に命令されてイヤイヤだったかしら!」 翠:「嘘つけですぅ! すご~く楽しそうにやってたですぅ!」 金:「何言うかしら! 楽しそうにやってたのは翠星石のほうかしら! か、カナはただ…」  翠:「ああ~っ、さては蒼星石にもそう言い逃れる気ですぅう!?」    なんか揉め始めた。    この後もギャーギャーと言い争いを続ける翠星石と金糸雀。    俺はどうすればいいんだろか。 マ:「………」 翠:「もうこうなったらこのままアホ人間を放置して逃げるしかないです……」    おいおい。 金:「それよりも適当なとこにマスターさん埋めちゃえば春まで発見されないで済むかしら!」    済まないよ! 根本的に解決になってないから! やめて! 翠:「………」 金:「………」    2人から視線を感じる……    身じろぎすらできない。 マ:「………」 金:「………」 翠:「起きないですねぇ」    金糸雀が俺の頬に手を当てた。 金:「とっても冷たいかしら」    そりゃあれだけ雪責めにあったからな。 金:「……このままじゃマスターさん、凍死……かしらっ」 翠:「!」    んん? 翠:「アホ人間! 起きろですぅ~! 寝たら死ぬですぅ~~!」    バシィッ! マ:「ぶべら!」    いきなりハリセンでぶったたかれた。 翠:「起きるですぅ!」    バキ! マ:「りべら!」 翠:「起~き~る~ですぅ~~~!」    ドゲシ! マ:「おりば!」    ・    ・    ・    ・ マ:「グゥ………」    マスター完全に沈黙。    舌出して気絶している。 金:「どうするかしら。なんか悪化したように見えるかしら」 翠:「や、やっちまったです……!」 蒼:「ま~す~た~~!!」 金:「!!」 翠:「!!」    蒼星石、ついに到着。だが目に入ってきたのは……    縄で木に縛り付けられ、ぐったりとのびているマスターであった。 蒼:「そんな……、マスターー!」    慌てて駆け寄る蒼星石。 蒼:「レンピカ!」    蒼星石は鋏を取り出し、マスターを呪縛する縄を一刀の元に切断した。    ドサッ    崩れ落ちるマスター。 蒼:「ああ、マスター! マスター!」    蒼星石が必死にマスターに呼び掛ける。 マ:「う~~ん……」 翠:「に、逃げるですぅ…!」 金:「逃げるかしら…!」    蒼星石がマスターに気をとられてる間に、翠星石、金糸雀は逃走の構えに入った。 蒼:「翠星石! 金糸雀!」 翠:「ひぃい!」 金:「ゆ、許してかしらぁ!」    蒼星石のあまりの剣幕に2人の足がもつれる。 マ:「う……ん、……て…んしさま?」 蒼:「マスター!」 マ:「寒いよぅ寒いよぅ」    ぶるぶると震えるマスター。 蒼:「マスター、しっかりして!」 マ:「寒いよぅ寒いよぅ、ぼく、なんだかとても疲れたみたいだよ……そうせいせき……」 蒼:「ああ、どうしよう!」 マ:「寒い……さむさむ」    しきりに寒さを訴えるマスターに、蒼星石は何も打つ手が無かった。 翠:「蒼星石、これを使うですぅ!」 蒼:「これは!」    翠星石から渡されたのは、のりが残していった、熱いお茶が入った水筒だった。    急いで水筒の蓋を開け放つ蒼星石。 翠:「はやく飲ませ…」 蒼:「これであったまって! マスター!」    なんと蒼星石、何を思ったか水筒の中身を全部マスターの全身にぶちまけたではないか。    次の瞬間……! マ:「あちぃああああああああああ!!」    そこには元気に雪原を転がり回るマスターの姿が! 金:「な、なんてことするかしら!?」 蒼:「この方が早くあったかくなれると思って……」 マ:「あじゃじゃああああああああ!!」    ひとしきり転がり回ったあと、マスターの動きがパタッと止った。 蒼:「マスター!」    蒼星石が駆け寄りマスターの顔を心配そうに覗きこむ。 蒼:「マスター、しっかりして!」 マ:「ぜぇぜぇ……! も…もう、もう翠星石の前で蒼星石とイチャイチャしたりなんかしないよ……ガクッ」 蒼:「ますたぁあああ!!」                                                                     「スノーレジャーその7」に続く

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: