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「買えないスマイル」(2007/05/12 (土) 22:03:52) の最新版変更点
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何かストーカーみたいになってしまったwww
モノレールって山登りのあれじゃないですよ。一応補足
スマイル99個下さい
タイトル「買えないスマイル」
「それじゃ先帰るわ」
「お疲れ様です」
サークルの後輩に一足先に別れの挨拶を告げると、俺は大学を後にした。
厳しいサッカーの練習で棒になった足には普段はなんともない駅までの距離がとても負担に感じる。
こういう時に限ってエスカレーターいつもが故障中なので、誰かが意図的にやっているのではと疑いたくなる。
重い足を動かして階段を上り、モノレールの到着を待つ。今日は幸運にもジャストタイミングで来た。
迷わず家に帰りたいところだが、最近はよく寄り道して腹ごしらえをする。それもいつも同じ店で。
高架線の上を行くモノレールの窓際に体を寄りかけ外の景色を眺める。そして降りるまでのたった二駅間の間決まって「あの子」の事を考える。
「あの子」とは駅前のハンバーガーショップで働いている「あの子」の事だ。
「あの子」は今日も来ているだろうか。「あの子」は今日も店による客に笑顔で微笑みかけているのだろうか。
そんな事を考えていると、気付いたらいつも降りる駅に着いている。それぐらい深く考えているのだ。
モノレールの駅を出ると、そこに広がっているのは多くの人で賑わう繁華街だ。
学校帰りの学生や仕事帰りのサラリーマン、これから夜の仕事に向かう若者など、朝とは違うもう一つの街の顔が現われる。
すっかり日が暮れて辺りは薄暗くなっているのに店の照明が明るくちっとも暗く感じない。これが東京の日暮れ。
溢れかえりそうな人の波の中を縫うように歩いて行き、この信号を渡るといつものハンバーガーショップに着く。
今日も繁盛しているようだ。関係のないはずなのに何故か自分事のように嬉しく思えた。
「いらっしゃいませ」
店に足を踏み入れると元気な声で迎えられた。列の最後尾に並びレジの方を見る。今日も「あの子」はいた。
店の制服に身を包み、客に笑顔で対応していた。客の注文を奥の工房に叫ぶ度に栗色のショートヘアーが揺れる。
着々と列は詰められあっと言う間に俺の番になる。「あの子」は変わらぬ態度で俺に対応した。
「いらっしゃいませ!ご注文をどうぞ」
「えー、チーズバーガー二つとエビフィレオ二つとポテトのLにウーロン茶。後は・・・」
いつも決まったものを注文する。何故だか自分でも分からないが。
「はい」
「スマイル一つ」
これも一つ決まって注文する。変わった人だと思われるかもしれないが。
「チーズバーガー二つにエビフィレオ二つにポテトのLにウーロン茶。後はスマイルですね」
注文を繰り返しているときにチラと名札を見る。「ソウセイセキ」さん、か・・・。
胸元から青い物が見えたのは内緒だ。
「はい」
「ご注文の方は少しお時間かかりますので先にスマイルの方をどうぞ」
そう言うと蒼星石は俺にニコリと笑顔で微笑んで見せた。俺はこのスマイルを見るといつも嬉しくなる。
だがすぐに悲しくなる。それはこのスマイルは営業用のスマイルだからだ。店側から命令されて出てくる物だからだ。
お金で買える誰にでも見せるスマイルだからだ。
「お待たせしました。お気をつけてお運び下さい」
そう言ってトレイに乗せられたハンバーガーを手渡される。俺はそれを持って一人用の窓際の椅子に腰掛けると
チーズバーガーの包装を開いた。チーズバーガーを口に運ぶ前にウーロン茶を一口啜る。
そしてハンバーガーを食べながら先のスマイルを思い出す。
俺に見せたスマイルは確かに彼女の笑顔だ。だが違う。俺が見たいのはあのスマイルではない。
俺が見たいのはお金では買えない、店からの命令でもない、「彼女自身のスマイル」が見たいのだ。俺にしか見せないスマイルが欲しいのだ。
そうだ。俺は彼女に恋をしているのだ。だからこんな事を考えてしまうのだ。
そして俺は蒼星石の笑顔を独り占めできる存在になりたいのだ。
果たしてなれるのだろうか。いや、なれないだろう。俺は「客」なのだ。彼女が一日に何百と相手する人間の中の一人なのだから。
増してや俺が彼女と会える場所は此処しかないの。望み薄どころか無いに等しい。
俺は最後のエビフィレオを食べ終わると、トレイを置きに席を立った。そしてゴミを捨てると店を出ようとした。
「ありがとうございました」
店を出るときに聞こえた彼女の言葉。何百人もの客に掛ける決まり文句。俺は耳を傾ける事無く店を出た。
外は薄暗かったのがすっかり暗くなっていた。時刻は9時。さっきまで7時ぐらいだったはずだが。
ホームに向かいガラ空きの電車の席に腰掛けると、練習の疲れからそのまま眠ってしまった。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「チーズバーガー二つにエビフィレオ二つにポテトのLにウーロン茶。後はスマイル」
「ご注文の品をどうぞ」
これは・・・夢か。夢の中でまで彼女にハンバーガーを頼むなんて。彼女は何と思っているのだろうか。
何時もと同じチーズバーガー二つにエビフィレオ二つにポテトのL、それにウーロン茶。
それだけのはずなのに一つ見知らぬものがあった。
綺麗に折りたたまれた一枚の紙切れ。席に着くと俺はその紙を開いた。中を見て俺は驚いた。
「拝啓 エビフィレオさんへ 毎日遅くまでお疲れ様です。
いつもご利用ありがとうございます。でもいつも同じものだと流石に飽きませんか?
たまには違うものも注文して下さいね。 蒼星石
P・S もし良かったらメールして下さい Lapis-lazuristern@rozen.ne.jp」
ここで俺は目が覚めた。妙にリアルな夢だった。まさか正夢・・・そんなわけないか。
次の日、また俺はいつものようにハンバーガーショップへと向かった。
今日も蒼星石はいた。いつもと変わらず笑顔で客に対応していた。
俺の番になり、何時もと同じ注文をする。
昨日の夢の事を思い出したが、あれは夢だと何度も自分に言い聞かせた。
いらっしゃいませ。ご注文は?」
「チーズバーガー二つにエビフィレオ二つにポテトのLにウーロン茶。後はスマイル」
「商品のほうは少々時間がかかるので、先にスマイルのほうをどうぞ」
何時ものようにスマイルを見た後、商品を受け取る。トレイに乗っているのはいつも通りだ。
何時もと同じチーズバーガー二つにエビフィレオ二つにポテトのL、それにウーロン茶。
それと・・・一枚の紙切れ・・・?まさか。
そんな馬鹿なと思いながらも裏返しのその紙切れを捲る。
「何だ。レシートか・・・」
少し期待した自分がバカであった。その分ショックが大きくなった。
それを忘れようとハンバーガーを食べるためにチーズバーガーを手に取ると、下に綺麗に折られた紙切れがあった。
「また広告か何かだろう。」と期待せずにそれを開いてみた。俺は驚いた。
「拝啓 エビフィレオさんへ 毎日遅くまでお疲れ様です。
いつもご利用ありがとうございます。でもいつも同じものだと流石に飽きませんか?
たまには違うものも注文して下さいね。 蒼星石
P・S もし良かったらメールして下さい Lapis-lazuristern@rozen.ne.jp」
思わずその場で周囲を気にせず自分の頬を抓る。痛い。紛れも無くこれは現実だ。
昨日の夢は正夢だったのだ。俺はすぐさま携帯を取り出すと彼女は仕事中にもかかわらずそのメールアドレスに
一番気になる事を打つとメールを送った。
「彼氏、いるの?」
彼女がメールに気付いたらしく、ピクリと反応を示した。そしてチラとこちらを見るとニコリと笑って見せた。
そして暫くするとメールが返ってきた。
Re:メール返してくれたんだ。ありがとう。今は居ないよ。気になっている人はいるけどね
この「気になっている人」が果たして誰なのかは分からないが俺には分からないがひょっとしたらひょっとするのか、も。
俺は全てのハンバーガーを食べ終わると練習で疲れているのに軽い足取りで店を出た。
「ありがとうございました」
彼女、蒼星石のこの言葉が少しだけ憂いを込めて放たれたような気がした。
もしかしたら彼女の本当の「スマイル」を独り占めできる時が来るのかもしれない。いや、してみせる。
心の中で固い決意が生まれた。外はまだ暮れかけの太陽で微かに明るかった。
fin
おまけ
「その後のメール」
「タイトル 無し 本文 バイトお疲れ様。毎日ご苦労様です」
「Re:労いの言葉どうもありがとう。また明日も来てくれるのかな?」
「Re:来て欲しいの?」
「Re:さあ、どうだろうね」
fin
後書き
作品中のメアドにメールしても蒼星石からは返事は来ないのであしからずw
何かストーカーみたいになってしまったwww
モノレールって山登りのあれじゃないですよ。一応補足
スマイル99個下さい
タイトル「買えないスマイル」
「それじゃ先帰るわ」
「お疲れ様です」
サークルの後輩に一足先に別れの挨拶を告げると、俺は大学を後にした。
厳しいサッカーの練習で棒になった足には普段はなんともない駅までの距離がとても負担に感じる。
こういう時に限ってエスカレーターいつもが故障中なので、誰かが意図的にやっているのではと疑いたくなる。
重い足を動かして階段を上り、モノレールの到着を待つ。今日は幸運にもジャストタイミングで来た。
迷わず家に帰りたいところだが、最近はよく寄り道して腹ごしらえをする。それもいつも同じ店で。
高架線の上を行くモノレールの窓際に体を寄りかけ外の景色を眺める。そして降りるまでのたった二駅間の間決まって「あの子」の事を考える。
「あの子」とは駅前のハンバーガーショップで働いている「あの子」の事だ。
「あの子」は今日も来ているだろうか。「あの子」は今日も店による客に笑顔で微笑みかけているのだろうか。
そんな事を考えていると、気付いたらいつも降りる駅に着いている。それぐらい深く考えているのだ。
モノレールの駅を出ると、そこに広がっているのは多くの人で賑わう繁華街だ。
学校帰りの学生や仕事帰りのサラリーマン、これから夜の仕事に向かう若者など、朝とは違うもう一つの街の顔が現われる。
すっかり日が暮れて辺りは薄暗くなっているのに店の照明が明るくちっとも暗く感じない。これが東京の日暮れ。
溢れかえりそうな人の波の中を縫うように歩いて行き、この信号を渡るといつものハンバーガーショップに着く。
今日も繁盛しているようだ。関係のないはずなのに何故か自分事のように嬉しく思えた。
「いらっしゃいませ」
店に足を踏み入れると元気な声で迎えられた。列の最後尾に並びレジの方を見る。今日も「あの子」はいた。
店の制服に身を包み、客に笑顔で対応していた。
客の注文を奥の工房に叫ぶ度に栗色のショートヘアーが揺れる。
着々と列は詰められあっと言う間に俺の番になる。「あの子」は変わらぬ態度で俺に対応した。
「いらっしゃいませ!ご注文をどうぞ」
「えー、チーズバーガー二つとエビフィレオ二つとポテトのLにウーロン茶。後は・・・」
いつも決まったものを注文する。何故だか自分でも分からないが。
「はい」
「スマイル一つ」
これも一つ決まって注文する。変わった人だと思われるかもしれないが。
「チーズバーガー二つにエビフィレオ二つにポテトのLにウーロン茶。後はスマイルですね」
注文を繰り返しているときにチラと名札を見る。「ソウセイセキ」さん、か・・・。
胸元から青い物が見えたのは内緒だ。
「はい」
「ご注文の方は少しお時間かかりますので先にスマイルの方をどうぞ」
そう言うと蒼星石は俺にニコリと笑顔で微笑んで見せた。俺はこのスマイルを見るといつも嬉しくなる。
だがすぐに悲しくなる。それはこのスマイルは営業用のスマイルだからだ。店側から命令されて出てくる物だからだ。お金で買える誰にでも見せるスマイルだからだ。
「お待たせしました。お気をつけてお運び下さい」
そう言ってトレイに乗せられたハンバーガーを手渡される。俺はそれを持って一人用の窓際の椅子に腰掛けるとチーズバーガーの包装を開いた。チーズバーガーを口に運ぶ前にウーロン茶を一口啜る。
そしてハンバーガーを食べながら先のスマイルを思い出す。
俺に見せたスマイルは確かに彼女の笑顔だ。だが違う。俺が見たいのはあのスマイルではない。
俺が見たいのはお金では買えない、店からの命令でもない、「彼女自身のスマイル」が見たいのだ。俺にしか見せないスマイルが欲しいのだ。
そうだ。俺は彼女に恋をしているのだ。だからこんな事を考えてしまうのだ。
そして俺は蒼星石の笑顔を独り占めできる存在になりたいのだ。
果たしてなれるのだろうか。いや、なれないだろう。俺は「客」なのだ。彼女が一日に何百と相手する人間の中の一人なのだから。
増してや俺が彼女と会える場所は此処しかないの。望み薄どころか無いに等しい。
俺は最後のエビフィレオを食べ終わると、トレイを置きに席を立った。そしてゴミを捨てると店を出ようとした。
「ありがとうございました」
店を出るときに聞こえた彼女の言葉。何百人もの客に掛ける決まり文句。俺は耳を傾ける事無く店を出た。
外は薄暗かったのがすっかり暗くなっていた。時刻は9時。さっきまで7時ぐらいだったはずだが。
ホームに向かいガラ空きの電車の席に腰掛けると、練習の疲れからそのまま眠ってしまった。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「チーズバーガー二つにエビフィレオ二つにポテトのLにウーロン茶。後はスマイル」
「ご注文の品をどうぞ」
これは・・・夢か。夢の中でまで彼女にハンバーガーを頼むなんて。彼女は何と思っているのだろうか。
何時もと同じチーズバーガー二つにエビフィレオ二つにポテトのL、それにウーロン茶。
それだけのはずなのに一つ見知らぬものがあった。
綺麗に折りたたまれた一枚の紙切れ。席に着くと俺はその紙を開いた。中を見て俺は驚いた。
「拝啓 エビフィレオさんへ 毎日遅くまでお疲れ様です。
いつもご利用ありがとうございます。でもいつも同じものだと流石に飽きませんか?
たまには違うものも注文して下さいね。 蒼星石
P・S もし良かったらメールして下さい Lapis-lazuristern@rozen.ne.jp」
ここで俺は目が覚めた。妙にリアルな夢だった。まさか正夢・・・そんなわけないか。
次の日、また俺はいつものようにハンバーガーショップへと向かった。
今日も蒼星石はいた。いつもと変わらず笑顔で客に対応していた。
俺の番になり、何時もと同じ注文をする。
昨日の夢の事を思い出したが、あれは夢だと何度も自分に言い聞かせた。
いらっしゃいませ。ご注文は?」
「チーズバーガー二つにエビフィレオ二つにポテトのLにウーロン茶。後はスマイル」
「商品のほうは少々時間がかかるので、先にスマイルのほうをどうぞ」
何時ものようにスマイルを見た後、商品を受け取る。トレイに乗っているのはいつも通りだ。
何時もと同じチーズバーガー二つにエビフィレオ二つにポテトのL、それにウーロン茶。
それと・・・一枚の紙切れ・・・?まさか。
そんな馬鹿なと思いながらも裏返しのその紙切れを捲る。
「何だ。レシートか・・・」
少し期待した自分がバカであった。その分ショックが大きくなった。
それを忘れようとハンバーガーを食べるためにチーズバーガーを手に取ると、下に綺麗に折られた紙切れがあった。
「また広告か何かだろう。」と期待せずにそれを開いてみた。俺は驚いた。
「拝啓 エビフィレオさんへ 毎日遅くまでお疲れ様です。
いつもご利用ありがとうございます。でもいつも同じものだと流石に飽きませんか?
たまには違うものも注文して下さいね。 蒼星石
P・S もし良かったらメールして下さい Lapis-lazuristern@rozen.ne.jp」
思わずその場で周囲を気にせず自分の頬を抓る。痛い。紛れも無くこれは現実だ。
昨日の夢は正夢だったのだ。俺はすぐさま携帯を取り出すと彼女は仕事中にもかかわらずそのメールアドレスに一番気になる事を打つとメールを送った。
「彼氏、いるの?」
彼女がメールに気付いたらしく、ピクリと反応を示した。そしてチラとこちらを見るとニコリと笑って見せた。
そして暫くするとメールが返ってきた。
Re:メール返してくれたんだ。ありがとう。今は居ないよ。気になっている人はいるけどね
この「気になっている人」が果たして誰なのかは分からないが俺には分からないがひょっとしたらひょっとするのか、も。
俺は全てのハンバーガーを食べ終わると練習で疲れているのに軽い足取りで店を出た。
「ありがとうございました」
彼女、蒼星石のこの言葉が少しだけ憂いを込めて放たれたような気がした。
もしかしたら彼女の本当の「スマイル」を独り占めできる時が来るのかもしれない。いや、してみせる。
心の中で固い決意が生まれた。外はまだ暮れかけの太陽で微かに明るかった。
fin
おまけ
「その後のメール」
「タイトル 無し 本文 バイトお疲れ様。毎日ご苦労様です」
「Re:労いの言葉どうもありがとう。また明日も来てくれるのかな?」
「Re:来て欲しいの?」
「Re:さあ、どうだろうね」
fin
後書き
作品中のメアドにメールしても蒼星石からは返事は来ないのであしからずw