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回転寿司アフター」(2006/10/14 (土) 23:48:01) の最新版変更点

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前作[[回転寿司]]へ  翠「今日の夕食は翠星石がうまいもの作ってご馳走してやるですよ。」  マ「へえ・・・一体どんな風の吹き回しで?」  翠「この間寿司を食べに連れて行ってもらったことを話したら、    のりのやつがお礼に夕食でも作ればいいと言ったですよ。    せいぜい感謝しやがれですぅ。」  マ「へえ、のりちゃんがそんな事をねえ・・・・・・ヨケイナコトヲ。」  翠「ん、何か言ったですか?」  マ「いえいえ、余計申し訳ないと。で、何を作っていただけるんで?スコーンとかですか?」  翠「ふっ、今回はお菓子ではなくちゃんとした料理を作ってやるですよ。」   ちゃんとした料理・・・たかがゆで卵作りで電子レンジを無茶苦茶にしたり、   オムレツを闇鍋のごとくカオスな物に仕上げたという彼女の場合はそれすらも一つの奇跡という気がする。   伝え聞いた限りでは、その腕は壊滅的なまでに殺人的、圧倒的破壊力の歯車的小宇宙・・・だとか。   曰く、ストマック・ブレイカー。曰く、ポイズンコック。   全国津々浦々の薔薇乙女からそんな情報を耳にしている。  マ「それで・・・具体的には何を作る予定なんでしょうか?」   おそるおそる尋ねる。  翠「聞いて驚けです。ビーフストノガロフですよ!てめえなぞ食べたことないんじゃねえですか?」  マ「確かにないけれど・・・せめて名前ぐらいは言えるものに挑戦してください・・・。」   もはや半泣きで慈悲を請う。  翠「感涙ですか。そこまで喜ばれたら翠星石としても手を抜くわけにはいかねえですね。    アクセル全開フルスロットルで行くから期待してろです。」   どうやらこちらの真意はまったく伝わらなかったようだ。  マ「・・・・・・胃が・・・。」   片手でお腹を押さえつつ、壁にもう片方の手をついてうつむいてしまう。  蒼「大丈夫、マスター?」  翠「なんですか、もう期待で腹が減ってしまったですか?まあ向こうで胸弾ませて待ってろです。」  マ「いえ、ぜひお手伝いさせてください!ぜひ!!」  翠「そんな気を使わずとも別にいいですよ。お前はゆっくり休んでろです。」  マ「そこをなんとか!!!」   必死に懇願した結果、なんとか手伝うのを認めてもらえた。  マ「それで材料はどうするの?」   材料さえこちらで用意するのであれば無難な料理に誘導できるし、最悪でも変な物を混ぜられることは防げるはずだ。  翠「のりが持たせてくれたですよ。」  マ「へえ、どれどれ・・・。」   翠星石の持っていた袋には牛肉、玉ねぎ、マッシュルーム・・・といったものが入っている。  マ「あれ、サワークリームがないよ?うちにも置いてないし。買って来る?」  蒼「生クリームならあるんだけどね。代用できないかな?」  翠「それならわざわざ買いに行かなくても生クリームに酢をぶち込んでやればいいですよ。」  マ「それってクリームが固まるだけだと思う・・・。」   本当にこんなんでお菓子作りが得意なのかも怪しいものだが、実際そうなのだから不思議なものだ。  翠「しゃあねえですね。まあ牛肉さえ使ってればビーフストロガノフって事で構わないですよね?」   構うって。なんでお菓子作りは計量が命なのにその他の料理に対してはそんなに大雑把なんだ。  蒼「翠星石、ビーフストロガノフはロシア料理だからビーフは牛肉のことじゃないよ。」  マ「~風や~流という意味の単語だそうです。」  翠「むう、じゃあどうすればいいでしょうかね。」  マ「もうカレーとかでいいですよ。わざわざ手を煩わせるのも悪いし。」  蒼「そうだよ、その気持ちだけでも十分にありがたいからさ。」  翠「むっ!二人とも翠星石の腕を見くびってるですね。たかがカレーごときで済ませる気はねえですよ!」   『見くびってるも何もそのカレーごときをまともに作れるの?ありがた迷惑だからもうやめてよ!!』   ・・・と言える性格だったらどんなにか良かっただろうか。  蒼「でもさ、もっと他の料理でもいいと思うよ?」  翠「うーん、でも・・・。」   蒼星石の言葉に翠星石も多少考えを改める気配を見せる。   今ならうまくやれば翠星石のプライドを傷つけず簡単な料理に変更させられそうだ。  マ「そうだ!すき焼きをお願いします。目には目を、和には和を!お寿司にはすき焼きを。そういうことで頼みます。」  翠「すき焼きですか・・・。それはいいですね。翠星石も食べたいですよ。」   自分でもどういうことかが分からない、かなり強引な提案だが翠星石が受け入れてくれてほっとする。  蒼「じゃあ材料を用意するね。」   何とかうまい具合に事が運んだようである。これでこちら側でまともな材料さえきちんと用意してしまえばいい。   後はそれを切って適当に煮るだけのようなものだから大丈夫だろう、たぶん、流石に、そう信じたい、お願い神様。   さて、翠星石が蒼星石と材料を切るという比較的危険の少ない仕事をしている間に割り下の調合はすんだ。   これで基本的に味付けは狂わないはずだ。材料を切るほうも蒼星石のフォローのおかげでうまくいったようで何よりだ。   三人で手分けして切った野菜や豆腐といった材料を食卓へと運ぶ。   後は卓上調理器で事足りるだろう。  翠「すき焼きってどういう手順で作ればいいですか?」   翠星石が調理器をいじり回しながら聞いてきた。  マ「まあいろいろなやり方があるけれど、まずお肉を焼いて・・・」   そこで蒼星石が鍋の方に集中している翠星石の目を盗んでこっそりと耳打ちしてくる。  蒼「あんまり簡単そうに説明しちゃうとまた翠星石がごねるかもしれないから、多少大変そうに言った方がいいよ。」   なるほどごもっともだ。蒼星石の言葉に頷き、改めて説明を始める。  マ「まず牛脂で肉を焼く。あまり焼きすぎず、かといって生過ぎず、適度な加減で。    そこにお酒と砂糖、醤油を適量加えて味付けをする。やはりここのさじ加減が大事。    そうしたら次はその他の材料を加えていく。ねぎや豆腐といったものは後でもいいけど、白菜なんかは早めに。    ここはいかに計画性があるかが要求される重要なポイントだったりする。その後も少なくなった具は補充する。    その際も、割り下と汁を吸う麩のバランスの良い使い分けが欠かせなかったりする訳です。」   なんだか分かりにくい言い回しになってしまったが、まあ簡単過ぎるという不満は出ないだろう。  翠「要するに肉を焼いたら酒、砂糖、醤油を入れて、基本的に火の通りやすいものから煮る。    後は割り下と麩で汁の量を調整しつつ材料を補充して煮続けろ、って事ですよね?    ぐだぐだとした能書きは要らないから、もっと要領よく説明しろです。」  マ「うんその通りだよね、はは・・・。」   なんだろう、このやり場のない空しさと敗北感は・・・。  蒼「あ、あの・・・ごめんねマスター。」   蒼星石がしょげている自分の頭をなでなでしてくれる。   我ながら単純だがそれだけで不幸が裏返って幸福の絶頂に到達してしまった。   しばし幸福に浸っているとなにやら焦げくさい匂いに気づく。  マ「あれ、お砂糖が焦げかけてない?」  翠「ん、カラメルシロップみたいにしてみても旨そうじゃねえですか?」   なぜ基本も知らぬ者がいきなりアグレッシブな応用に走るんだーーー!!  マ「普通でお願いします。普通で!」   その後は変なアレンジは控えてくれたようで無難に出来上がった。   散々と苦労した甲斐もあってか味もきちんと食べられるものになってくれている。  翠「お味はどうですか?まあ、これなら不満はねえとは思いますが・・・。」   珍しいことにやや不安げな様子で翠星石が感想を求めてくる。  マ「ええもちろん満足ですよ。とっても美味しくできてますとも。ご馳走様です。」  蒼「ありがとう翠星石。すっごく美味しいよ。」  翠「えへへ、それは良かったですよ。」   賞賛の言葉に翠星石の顔がほころぶ。まあ気苦労しただけの意味はあったのかもしれない。  マ「しかしこうして三人でお鍋をつついて食べるのもオツなもんだね。」  蒼「うん、こうして大切な人たちと仲良く一緒に食事できるって幸せなことだよね。」  翠「また回転寿司にでも連れてってくれたらいつでも作ってやるですよ。」  マ「あははは・・・だが断る。」  翠「ちいっ、そこまで甘くはないですか。」   むしろ連れて行かなければ作ると脅されたら連れて行ってしまいそうだが黙っておく。  マ「さて、そろそろおうどんの出番かな。」  蒼「あ、マスターは食べててよ。僕が取ってくるから。」   こちらが立ち上がりかけたところを、そう言うが早いか台所へ行ってしまった。  翠「・・・ちょっと聞けです。」  マ「はい、なんでしょう?」   二人きりになったところで翠星石が話しかけてくる。  翠「やい、お前には翠星石と違ってどんなにやりたくても蒼星石にやってやれない事があるですよ。それを忘れるなです!」  マ「うん・・・その通りだよね。これからも蒼星石を支えて上げて欲しい。僕ではできない分も。」  翠「そんな事お前に言われるまでもねえです!    ・・・ですが・・・ですがね、お前も翠星石ではできない事を蒼星石にしてやれるですよ?    その事も忘れずに、これからもずうっと蒼星石を支え続けてやるですよ・・・。いいですね!!」  マ「・・・もちろんですとも。」   ふっと同じ思いを抱く者同士で二人で微笑みを交わす。  蒼「あれ?二人で見つめ合っちゃってどうしたの?」   蒼星石がおうどんを取って戻ってきたようだ。  翠「なんでもないですよ。蒼星石の分まで肉を食べないように見張っていただけですから。」  マ「そうそう、翠星石が食べちゃわないように僕が見張ってたの。」  翠「なーんですってぇ!?」  蒼「本当?なーんか、あやしいなあ・・・。」  翠「お前って信頼されてねえですね。」  マ「むっ、翠星石こそ!」  蒼「あー!二人とも目が笑ってる!!何か隠してるね?言わないとおうどんあげないよっ!」  翠「それは困るですよ!」  マ「いやね、お互いに相手の愛を確認できただけだよ。」  蒼「うそ・・・だ。」  翠「おま・・・こんな時に何を馬鹿な冗談を言ってるですか!?」  マ「・・・蒼星石への愛を、ね。」  蒼「え!?」  マ「だからさ、主役がそんな顔してないでこっちに来てよ。」  蒼「ぼ、僕そんなにすごい顔してた?」  マ「してた、してた。もう嫉妬に狂ったか、世の中に絶望したか、ってくらい。」  蒼「う、嘘だよっ!・・・マスターの意地悪っ、マスターなんか嫌いだよ!!」  マ「ははは、嫌われちゃった。まあ・・・その分翠星石と仲良くしてね。」  蒼「え、あの。・・・それでいいの?」  マ「まあ嫌われちゃったのなら仕方ないさ。翠星石になら任せても安心だし。」  翠「ちょっと待てです!お前蒼星石のマスターのくせして無責任ですよ。    しっかりと自覚を持って蒼星石を悲しませるような事はするなです!」  蒼「え?え?二人ともどうしちゃったの?」   なにやら普段と違う二人の様子に蒼星石が戸惑っている。  マ「それじゃあ蒼星石、何でもするから機嫌を直してくれない?」  翠「そうですよ、翠星石もなんだってやってやるです!」  蒼「どうしたのさ二人とも、もしかして二人で僕をからかってるんじゃ・・・。」  マ「そんな事はない!」  翠「思いは一つ!」  マ・翠「蒼星石の幸せのために!!」  蒼「ほ、本当?笑わないでよね。じゃあ・・・・・・。」   その後、ぴったりと寄り添う翠星石と蒼星石の二人を膝に乗っけておうどんを美味しくいただきましたとさ。
前作[[回転寿司]]へ  翠「今日の夕食は翠星石がうまいもの作ってご馳走してやるですよ。」  マ「へえ・・・一体どんな風の吹き回しで?」  翠「この間寿司を食べに連れて行ってもらったことを話したら、    のりのやつがお礼に夕食でも作ればいいと言ったですよ。    せいぜい感謝しやがれですぅ。」  マ「へえ、のりちゃんがそんな事をねえ・・・・・・ヨケイナコトヲ。」  翠「ん、何か言ったですか?」  マ「いえいえ、余計申し訳ないと。で、何を作っていただけるんで?スコーンとかですか?」  翠「ふっ、今回はお菓子ではなくちゃんとした料理を作ってやるですよ。」   ちゃんとした料理・・・たかがゆで卵作りで電子レンジを無茶苦茶にしたり、   オムレツを闇鍋のごとくカオスな物に仕上げたという彼女の場合はそれすらも一つの奇跡という気がする。   伝え聞いた限りでは、その腕は壊滅的なまでに殺人的、圧倒的破壊力の歯車的小宇宙・・・だとか。   曰く、ストマック・ブレイカー。曰く、ポイズンコック。   全国津々浦々の薔薇乙女からそんな情報を耳にしている。  マ「それで・・・具体的には何を作る予定なんでしょうか?」   おそるおそる尋ねる。  翠「聞いて驚けです。ビーフストノガロフですよ!てめえなぞ食べたことないんじゃねえですか?」  マ「確かにないけれど・・・せめて名前ぐらいは言えるものに挑戦してください・・・。」   もはや半泣きで慈悲を請う。  翠「感涙ですか。そこまで喜ばれたら翠星石としても手を抜くわけにはいかねえですね。    アクセル全開フルスロットルで行くから期待してろです。」   どうやらこちらの真意はまったく伝わらなかったようだ。  マ「・・・・・・胃が・・・。」   片手でお腹を押さえつつ、壁にもう片方の手をついてうつむいてしまう。  蒼「大丈夫、マスター?」  翠「なんですか、もう期待で腹が減ってしまったですか?まあ向こうで胸弾ませて待ってろです。」  マ「いえ、ぜひお手伝いさせてください!ぜひ!!」  翠「そんな気を使わずとも別にいいですよ。お前はゆっくり休んでろです。」  マ「そこをなんとか!!!」   必死に懇願した結果、なんとか手伝うのを認めてもらえた。  マ「それで材料はどうするの?」   材料さえこちらで用意するのであれば無難な料理に誘導できるし、最悪でも変な物を混ぜられることは防げるはずだ。  翠「のりが持たせてくれたですよ。」  マ「へえ、どれどれ・・・。」   翠星石の持っていた袋には牛肉、玉ねぎ、マッシュルーム・・・といったものが入っている。  マ「あれ、サワークリームがないよ?うちにも置いてないし。買って来る?」  蒼「生クリームならあるんだけどね。代用できないかな?」  翠「それならわざわざ買いに行かなくても生クリームに酢をぶち込んでやればいいですよ。」  マ「それってクリームが固まるだけだと思う・・・。」   本当にこんなんでお菓子作りが得意なのかも怪しいものだが、実際そうなのだから不思議なものだ。  翠「しゃあねえですね。まあ牛肉さえ使ってればビーフストロガノフって事で構わないですよね?」   構うって。なんでお菓子作りは計量が命なのにその他の料理に対してはそんなに大雑把なんだ。  蒼「翠星石、ビーフストロガノフはロシア料理だからビーフは牛肉のことじゃないよ。」  マ「~風や~流という意味の単語だそうです。」  翠「むう、じゃあどうすればいいでしょうかね。」  マ「もうカレーとかでいいですよ。わざわざ手を煩わせるのも悪いし。」  蒼「そうだよ、その気持ちだけでも十分にありがたいからさ。」  翠「むっ!二人とも翠星石の腕を見くびってるですね。たかがカレーごときで済ませる気はねえですよ!」   『見くびってるも何もそのカレーごときをまともに作れるの?ありがた迷惑だからもうやめてよ!!』   ・・・と言える性格だったらどんなにか良かっただろうか。  蒼「でもさ、もっと他の料理でもいいと思うよ?」  翠「うーん、でも・・・。」   蒼星石の言葉に翠星石も多少考えを改める気配を見せる。   今ならうまくやれば翠星石のプライドを傷つけず簡単な料理に変更させられそうだ。  マ「そうだ!すき焼きをお願いします。目には目を、和には和を!お寿司にはすき焼きを。そういうことで頼みます。」  翠「すき焼きですか・・・。それはいいですね。翠星石も食べたいですよ。」   自分でもどういうことかが分からない、かなり強引な提案だが翠星石が受け入れてくれてほっとする。  蒼「じゃあ材料を用意するね。」   何とかうまい具合に事が運んだようである。これでこちら側でまともな材料さえきちんと用意してしまえばいい。   後はそれを切って適当に煮るだけのようなものだから大丈夫だろう、たぶん、流石に、そう信じたい、お願い神様。   さて、翠星石が蒼星石と材料を切るという比較的危険の少ない仕事をしている間に割り下の調合はすんだ。   これで基本的に味付けは狂わないはずだ。材料を切るほうも蒼星石のフォローのおかげでうまくいったようで何よりだ。   三人で手分けして切った野菜や豆腐といった材料を食卓へと運ぶ。   後は卓上調理器で事足りるだろう。  翠「すき焼きってどういう手順で作ればいいですか?」   翠星石が調理器をいじり回しながら聞いてきた。  マ「まあいろいろなやり方があるけれど、まずお肉を焼いて・・・」   そこで蒼星石が鍋の方に集中している翠星石の目を盗んでこっそりと耳打ちしてくる。  蒼「あんまり簡単そうに説明しちゃうとまた翠星石がごねるかもしれないから、多少大変そうに言った方がいいよ。」   なるほどごもっともだ。蒼星石の言葉に頷き、改めて説明を始める。  マ「まず牛脂で肉を焼く。あまり焼きすぎず、かといって生過ぎず、適度な加減で。    そこにお酒と砂糖、醤油を適量加えて味付けをする。やはりここのさじ加減が大事。    そうしたら次はその他の材料を加えていく。ねぎや豆腐といったものは後でもいいけど、白菜なんかは早めに。    ここはいかに計画性があるかが要求される重要なポイントだったりする。その後も少なくなった具は補充する。    その際も、割り下と汁を吸う麩のバランスの良い使い分けが欠かせなかったりする訳です。」   なんだか分かりにくい言い回しになってしまったが、まあ簡単過ぎるという不満は出ないだろう。  翠「要するに肉を焼いたら酒、砂糖、醤油を入れて、基本的に火の通りやすいものから煮る。    後は割り下と麩で汁の量を調整しつつ材料を補充して煮続けろ、って事ですよね?    ぐだぐだとした能書きは要らないから、もっと要領よく説明しろです。」  マ「うんその通りだよね、はは・・・。」   なんだろう、このやり場のない空しさと敗北感は・・・。  蒼「あ、あの・・・ごめんねマスター。」   蒼星石がしょげている自分の頭をなでなでしてくれる。   我ながら単純だがそれだけで不幸が裏返って幸福の絶頂に到達してしまった。   しばし幸福に浸っているとなにやら焦げくさい匂いに気づく。  マ「あれ、お砂糖が焦げかけてない?」  翠「ん、カラメルシロップみたいにしてみても旨そうじゃねえですか?」   なぜ基本も知らぬ者がいきなりアグレッシブな応用に走るんだーーー!!  マ「普通でお願いします。普通で!」   その後は変なアレンジは控えてくれたようで無難に出来上がった。   散々と苦労した甲斐もあってか味もきちんと食べられるものになってくれている。  翠「お味はどうですか?まあ、これなら不満はねえとは思いますが・・・。」   珍しいことにやや不安げな様子で翠星石が感想を求めてくる。  マ「ええもちろん満足ですよ。とっても美味しくできてますとも。ご馳走様です。」  蒼「ありがとう翠星石。すっごく美味しいよ。」  翠「えへへ、それは良かったですよ。」   賞賛の言葉に翠星石の顔がほころぶ。まあ気苦労しただけの意味はあったのかもしれない。  マ「しかしこうして三人でお鍋をつついて食べるのもオツなもんだね。」  蒼「うん、こうして大切な人たちと仲良く一緒に食事できるって幸せなことだよね。」  翠「また回転寿司にでも連れてってくれたらいつでも作ってやるですよ。」  マ「あははは・・・だが断る。」  翠「ちいっ、そこまで甘くはないですか。」   むしろ連れて行かなければ作ると脅されたら連れて行ってしまいそうだが黙っておく。  マ「さて、そろそろおうどんの出番かな。」  蒼「あ、マスターは食べててよ。僕が取ってくるから。」   こちらが立ち上がりかけたところを、そう言うが早いか台所へ行ってしまった。  翠「・・・ちょっと聞けです。」  マ「はい、なんでしょう?」   二人きりになったところで翠星石が話しかけてくる。  翠「やい、お前には翠星石と違ってどんなにやりたくても蒼星石にやってやれない事があるですよ。それを忘れるなです!」  マ「うん・・・その通りだよね。これからも蒼星石を支えて上げて欲しい。僕ではできない分も。」  翠「そんな事お前に言われるまでもねえです!    ・・・ですが・・・ですがね、お前も翠星石ではできない事を蒼星石にしてやれるですよ?    その事も忘れずに、これからもずうっと蒼星石を支え続けてやるですよ・・・。いいですね!!」  マ「・・・もちろんですとも。」   ふっと同じ思いを抱く者同士で二人で微笑みを交わす。  蒼「あれ?二人で見つめ合っちゃってどうしたの?」   蒼星石がおうどんを取って戻ってきたようだ。  翠「なんでもないですよ。蒼星石の分まで肉を食べないように見張っていただけですから。」  マ「そうそう、翠星石が食べちゃわないように僕が見張ってたの。」  翠「なーんですってぇ!?」  蒼「本当?なーんか、あやしいなあ・・・。」  翠「お前って信頼されてねえですね。」  マ「むっ、翠星石こそ!」  蒼「あー!二人とも目が笑ってる!!何か隠してるね?言わないとおうどんあげないよっ!」  翠「それは困るですよ!」  マ「いやね、お互いに相手の愛を確認できただけだよ。」  蒼「うそ・・・だ。」  翠「おま・・・こんな時に何を馬鹿な冗談を言ってるですか!?」  マ「・・・蒼星石への愛を、ね。」  蒼「え!?」  マ「だからさ、主役がそんな顔してないでこっちに来てよ。」  蒼「ぼ、僕そんなにすごい顔してた?」  マ「してた、してた。もう嫉妬に狂ったか、世の中に絶望したか、ってくらい。」  蒼「う、嘘だよっ!・・・マスターの意地悪っ、マスターなんか嫌いだよ!!」  マ「ははは、嫌われちゃった。まあ・・・その分翠星石と仲良くしてね。」  蒼「え、あの。・・・それでいいの?」  マ「まあ嫌われちゃったのなら仕方ないさ。翠星石になら任せても安心だし。」  翠「ちょっと待てです!お前蒼星石のマスターのくせして無責任ですよ。    しっかりと自覚を持って蒼星石を悲しませるような事はするなです!」  蒼「え?え?二人ともどうしちゃったの?」   なにやら普段と違う二人の様子に蒼星石が戸惑っている。  マ「それじゃあ蒼星石、何でもするから機嫌を直してくれない?」  翠「そうですよ、翠星石もなんだってやってやるです!」  蒼「どうしたのさ二人とも、もしかして二人で僕をからかってるんじゃ・・・。」  マ「そんな事はない!」  翠「思いは一つ!」  マ・翠「蒼星石の幸せのために!!」  蒼「ほ、本当?笑わないでよね。じゃあ・・・・・・。」   その後、ぴったりと寄り添う翠星石と蒼星石の二人を膝に乗っけておうどんを美味しくいただきましたとさ。 [[回転寿司ピリオド]]へ

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