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お泊り - 涙 -」(2006/09/18 (月) 22:56:54) の最新版変更点

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  マスターが一日に疲れて帰宅する。  マ「ただいまー・・・。」   ドアを開けたら玄関に翠星石がいた。  翠「あ、もう帰ってきやがったですか。」    パタン・・・   もう一度ドアをそっと開けてみる。  翠「お前、何やってるですか?」  マ「・・・お義姉さん、こんばんは。」   マスターが予想外の出迎えに面食らっていると奥から蒼星石が現れた。  蒼「お帰りなさい、マスター。今日も一日お疲れ様です。」  マ「あ、ただいま。今日もありがとう。」   いつもの笑顔に迎えられて、マスターの顔から自然と笑みがこぼれた。  翠「ふん、露骨に反応を変えやがってやらしい野郎ですね。」   そもそも出迎えられ方からして全然違っていた気がするが、マスターも絡まれるのはいつもの事なので特に気にしない。  翠「今日はお前のところに泊まるですよ!」  マ「はあ、それで蒼星石はなんて?」  翠「もちろん快く了承してくれたですよぉ。後はお前の許可だけですぅ。」  蒼「う・・・うん。」  マ「じゃあ、どうぞ。たいしたおもてなしも出来ないかもしれませんが。」  翠「嫌だと言っても無駄ですよ。お前が蒼星石に変な事しないか見張ってやる・・・って、いいですか?」  マ「ええ、どうぞ。ごゆっくりしていって下さい。」   意外にもマスターはにこやかに快諾した。  翠「そ、そうですか。じゃあお望み通り泊まってやるですよ・・・。」   いささか拍子抜けしてしまったのか、多少しどろもどろにそう言った。  翠「さぁ蒼星石、あっちで姉妹水入らずでお話しするですぅ。」  蒼「ごめん、お夕飯の支度があるから、ちょっと待って欲しい。」  翠「そうですか、じゃあ翠星石は荷物の整理でもして待ってるですね。」   そう言って翠星石がすごすごと引き下がる。  マ「ねえ蒼星石、翠星石がいつもに比べると元気ないみたいだけど何かあったの?」  蒼「実はね、ジュン君とケンカしたんだって。それで急に泊めてほしいってやって来て・・・。」   どうやら翠星石は自分のミーディアムとケンカしてしまい飛び出してきたようである。   どことなく元気が無いのもそのためのようだ。  マ「今日の夕飯はどうするつもり?」  蒼「人数が急に増えたし、明日の朝のこともあるからカレーにしようと思うんだ。」  マ「じゃあさ、それぐらいなら夕飯は僕が作るから蒼星石は翠星石の傍に居ておやり。」  蒼「でも…。」  マ「いいんだよ。翠星石が落ち込んでるから心配なんでしょ?    それに双子だけど、こうしてじっくりと話をする機会もそうそうある訳じゃないだろうからさ。」   マスターがにこりと微笑みかけながらそう言った。  蒼「じゃあ、お言葉に甘えるね。ありがとう、マスター。」   内心はやはり気にかけていたのだろう、蒼星石は翠星石のもとに小走りで向かっていった。   夕食。普段よりも一人多いだけだが、だいぶ賑やかな感じになる。   いや実際に翠星石が一人でかなりはしゃいでいたわけだが。   蒼星石と話しをしたからかだいぶ元気になったようだ。  翠「やい人間、せっかく久しぶりに蒼星石の手料理を堪能できるはずだったのに何て事してくれたですか?」  マ「お口に合いませんでしたか?蒼星石には敵わずとも頑張ったんですがね。」   毒を吐けるくらいに持ち直した翠星石に、マスターが苦笑しながらそう言った。  翠「ふ、ふん!まあ蒼星石に敵うわけはないですからね。お前にしては健闘した方だからちゃんと食べてやるですよ。」   殊勝なマスターの言葉に肩透かしを食らった翠星石がそう言った。   どうやら下手に出る相手への対応にはあまり慣れていないらしい。  マ「それは良かった。明日の朝食もこのカレーですからどうしようかと思いましたよ。」  翠「ええー、朝もですかぁ?」  マ「まあ、一晩寝かせれば多少は美味しくなりますかね。あとトッピングにハンバーグやソーセージくらいなら用意できますよ?」  翠「せめて一食ぐらいは蒼星石の手料理を味わいたかったですよ・・・。」  蒼「翠星石、せっかくマスターが気を使ってくれたんだからさ・・・。」   さすがに見かねたのか蒼星石もフォローを入れる。  翠「どうせ翠星石は自分勝手ですよ・・・。」  蒼「えっ!?いや、そこまで言うつもりは・・・。」  マ「まあまあ、義姉さんの気持ちも分かるし、また機を改めてということで。    今回は急のおいでだったし、今度は事前に連絡してから来ていただければ。    二人ともそれでいいでしょう?」  翠「・・・分かったです。」  蒼「うん、マスターがそれでいいのなら・・・。」   マスターのにこやかなとりなしが功を奏したのか、それでとりあえずその場は収まった。  マ「ふぅ、やれやれ・・・。」   マスターが寝室で横になる。   今日は蒼星石は翠星石と一緒に寝たので部屋にいつもの鞄はない。   久しぶりに一人ぼっちで寝ることになる。   どことなく寂しさを覚えつつまどろんでいると、不意にお腹の辺りに重さを感じた。   わずかな期待と共に身を起こしつつそちらをうかがうと、闇の中に見覚えのある面立ちがあった。  マ「あっ、そうせい・・・じって美味しいですよね、義姉さん。」  翠「別にごまかさなくてもいいですよ。それよりもお前に話したいことがあるです。」  マ「話・・・蒼星石のことですか?」  翠「違うです。今回は・・・お前なんかでも一応は一人の男だと見込んで相談したいことがあるです。    だから、敬語なんかもいらねえですからその代わりに腹を割って話しやがれです。」   いつになく真剣な表情で翠星石がそう言った。むしろどこか切羽詰った感じがすると言うべきかもしれない。  マ「相談・・・それは珍しいですね。・・・分かりました、いや、分かったよ。できる限り相談に乗るよ。」   そう答えると、マスターが話を聞くために上体を起こす。  翠「じゃあ・・・正直に言ってお前は翠星石のことをどう思ってるですか?」  マ「どう、ってのは?」  翠「もう蒼星石から聞いてるとは思うですが、翠星石はジュンとケンカして飛び出してきたです。」  マ「それは聞いたけれど、いったいなぜ?」  翠「ジュンは・・・翠星石のことを性悪人形呼ばわりしたり、明らかに翠星石を邪険にしてる節があるです。    それが腹立たしくなって、つい・・・。」  マ「ふうん、ジュン君のことが本当に好きなんだね。」  翠「茶化すなですぅ!・・・やっぱり男というのは蒼星石のように素直でおとなしい女性を好むのですか?    もしそうだったら、お前と蒼星石のようにいつでも笑って話をできる関係になれたのでしょうかね・・・・。    やっぱり・・・翠星石のような性格は自分勝手だと疎ましがられるですか?」  マ「詳しくは知らないがジュン君もいろいろと大変な悩みを抱えているそうだし、微妙なお年頃だからね。    確かに・・・翠星石は多少言動に荒っぽく感じられるところがあって、思ったことを隠さず出しちゃうことも多いし、    我を張っては周囲を振り回すタイプみたいだからいさかいも起こるだろうね。」  翠「やはりそうなのですか・・・。」   翠星石が珍しくしゅんとした顔をマスターの前で見せる。  マ「・・・でも、それでいて実は人一倍に繊細で、他人の気持ちに配慮して親身になって考えてもあげられるし、    本当につらい時でも最後まで自分の希望を諦めようとしないという一面もあって、一人の女性としてとても魅力的だし素敵だと思うよ。」  翠「な、お前いきなり何を言い出してるですか!?」  マ「いや、ありのままどう思ってるか話せと言われたから・・・。」  翠「だけど・・・仮にそうだとしても結局、ジュンともめるのは避けられないってことですよね。」  マ「まあドールとミーディアムの関係は非常に密接だからね。そんなに近くにいたら衝突の一つも起こるのが普通さ。    うちの場合はひとえに蒼星石がいろいろと配慮を利かせてくれたのが大きいだろうね。    もしも契約していたのが蒼星石以外だったらきっと何度か意見の衝突なんかもあったろうさ。」  翠「やはり今のままでは駄目ですか・・・。」  マ「でも、だからと言ってそれは翠星石よりも蒼星石が優れているだとか、どういった性格が好まれるかといったことではないと思う。    そもそも、僕とジュン君だって同じ男性ではあってもぜんぜん違っているだろうし、その辺はみんなバラバラだろうさ。    だけど一人一人に違った魅力もあれば欠点もある・・・それだけのことじゃないのかな?」  翠「でも、でも・・・実際にジュンは翠星石のことを・・・。」   そう言って翠星石は何かをじっとこらえている。  マ「やれやれ・・・。」   マスターが膝の上の翠星石をそっと自分の方へと抱き寄せる。  翠「な・・・お前いきなり何をしやがるですかっ?」  マ「まあまあ、たまにはちょっとくらいいいでしょ?確かに蒼星石以外にこうしてるのは変な感じだけどさ。    この際つらいものはみんな吐き出しちゃいなよ・・・本当は話をする時ってのは相手の顔が見えなくちゃ困るんだろうけどね。」   その言葉を聞いた翠星石がマスターの胸の中でぐずりだす。   おそらくは姉として、蒼星石の前では涙を見せまいと努めていたのだろう。  マ「まあ、今はいろいろと障害があってもそのうちにきっと乗り越えられるさ。    それにさっきも言ったけど、翠星石だって十分魅力的なんだから自信を持ってさ!」  翠「ふ、ふん、調子に乗りすぎですよ!」   翠星石がわずかに照れながらマスターのあごにアッパーを炸裂させる。  マ「ちょ・・・痛いじゃないか!いてて、まともに入ったし・・・。さっそく元気になったのは大いに結構だけどさあ、    照れ隠しなのかは知らないけれどまずその辺から直していけ・・れ・・ば・・・。」   のけぞらされた体勢を元に戻そうとしていたマスターが途中でそのまま固まる。  翠「どうしたですか?今ので脳がシェイクされちまいましたか?」   マスターが無言で指差すほうを翠星石も振り向いて見ると、寝室の入り口に蒼星石が静かに立っていた。   いつからいたのかは分からないが、何やら思いつめたような雰囲気を漂わせている。   しかし、蒼星石が今どんな思いでいるのかは、二人ともその無表情な顔からは読み取れなかった。  マ「あ、蒼星石・・・・・」   マスターの呼びかけも無視し、無言のまま蒼星石が部屋から駆け出していく。  マ「これってさあ・・・何らかの誤解を招いていやしませんか?」  翠「何も言わないで出て行ったところを見るとかなりヤバい誤解をされてそうですね。」  マ「そんな他人事のように言わないでよ!」  翠「まあ今回は協力してやるですから早く追いかけるですよ。」  マ「いくらなんでもそりゃ当然でしょう!!」   そのまま翠星石を抱えて、半泣きのマスターが慌てて部屋を出て行った。                       [つづく]
  マスターが一日に疲れて帰宅する。  マ「ただいまー・・・。」   ドアを開けたら玄関に翠星石がいた。  翠「あ、もう帰ってきやがったですか。」    パタン・・・   もう一度ドアをそっと開けてみる。  翠「お前、何やってるですか?」  マ「・・・お義姉さん、こんばんは。」   マスターが予想外の出迎えに面食らっていると奥から蒼星石が現れた。  蒼「お帰りなさい、マスター。今日も一日お疲れ様です。」  マ「あ、ただいま。今日もありがとう。」   いつもの笑顔に迎えられて、マスターの顔から自然と笑みがこぼれた。  翠「ふん、露骨に反応を変えやがってやらしい野郎ですね。」   そもそも出迎えられ方からして全然違っていた気がするが、マスターも絡まれるのはいつもの事なので特に気にしない。  翠「今日はお前のところに泊まるですよ!」  マ「はあ、それで蒼星石はなんて?」  翠「もちろん快く了承してくれたですよぉ。後はお前の許可だけですぅ。」  蒼「う・・・うん。」  マ「じゃあ、どうぞ。たいしたおもてなしも出来ないかもしれませんが。」  翠「嫌だと言っても無駄ですよ。お前が蒼星石に変な事しないか見張ってやる・・・って、いいですか?」  マ「ええ、どうぞ。ごゆっくりしていって下さい。」   意外にもマスターはにこやかに快諾した。  翠「そ、そうですか。じゃあお望み通り泊まってやるですよ・・・。」   いささか拍子抜けしてしまったのか、多少しどろもどろにそう言った。  翠「さぁ蒼星石、あっちで姉妹水入らずでお話しするですぅ。」  蒼「ごめん、お夕飯の支度があるから、ちょっと待って欲しい。」  翠「そうですか、じゃあ翠星石は荷物の整理でもして待ってるですね。」   そう言って翠星石がすごすごと引き下がる。  マ「ねえ蒼星石、翠星石がいつもに比べると元気ないみたいだけど何かあったの?」  蒼「実はね、ジュン君とケンカしたんだって。それで急に泊めてほしいってやって来て・・・。」   どうやら翠星石は自分のミーディアムとケンカしてしまい飛び出してきたようである。   どことなく元気が無いのもそのためのようだ。  マ「今日の夕飯はどうするつもり?」  蒼「人数が急に増えたし、明日の朝のこともあるからカレーにしようと思うんだ。」  マ「じゃあさ、それぐらいなら夕飯は僕が作るから蒼星石は翠星石の傍に居ておやり。」  蒼「でも…。」  マ「いいんだよ。翠星石が落ち込んでるから心配なんでしょ?    それに双子だけど、こうしてじっくりと話をする機会もそうそうある訳じゃないだろうからさ。」   マスターがにこりと微笑みかけながらそう言った。  蒼「じゃあ、お言葉に甘えるね。ありがとう、マスター。」   内心はやはり気にかけていたのだろう、蒼星石は翠星石のもとに小走りで向かっていった。   夕食。普段よりも一人多いだけだが、だいぶ賑やかな感じになる。   いや実際に翠星石が一人でかなりはしゃいでいたわけだが。   蒼星石と話しをしたからかだいぶ元気になったようだ。  翠「やい人間、せっかく久しぶりに蒼星石の手料理を堪能できるはずだったのに何て事してくれたですか?」  マ「お口に合いませんでしたか?蒼星石には敵わずとも頑張ったんですがね。」   毒を吐けるくらいに持ち直した翠星石に、マスターが苦笑しながらそう言った。  翠「ふ、ふん!まあ蒼星石に敵うわけはないですからね。お前にしては健闘した方だからちゃんと食べてやるですよ。」   殊勝なマスターの言葉に肩透かしを食らった翠星石がそう言った。   どうやら下手に出る相手への対応にはあまり慣れていないらしい。  マ「それは良かった。明日の朝食もこのカレーですからどうしようかと思いましたよ。」  翠「ええー、朝もですかぁ?」  マ「まあ、一晩寝かせれば多少は美味しくなりますかね。あとトッピングにハンバーグやソーセージくらいなら用意できますよ?」  翠「せめて一食ぐらいは蒼星石の手料理を味わいたかったですよ・・・。」  蒼「翠星石、せっかくマスターが気を使ってくれたんだからさ・・・。」   さすがに見かねたのか蒼星石もフォローを入れる。  翠「どうせ翠星石は自分勝手ですよ・・・。」  蒼「えっ!?いや、そこまで言うつもりは・・・。」  マ「まあまあ、義姉さんの気持ちも分かるし、また機を改めてということで。    今回は急のおいでだったし、今度は事前に連絡してから来ていただければ。    二人ともそれでいいでしょう?」  翠「・・・分かったです。」  蒼「うん、マスターがそれでいいのなら・・・。」   マスターのにこやかなとりなしが功を奏したのか、それでとりあえずその場は収まった。  マ「ふぅ、やれやれ・・・。」   マスターが寝室で横になる。   今日は蒼星石は翠星石と一緒に寝たので部屋にいつもの鞄はない。   久しぶりに一人ぼっちで寝ることになる。   どことなく寂しさを覚えつつまどろんでいると、不意にお腹の辺りに重さを感じた。   わずかな期待と共に身を起こしつつそちらをうかがうと、闇の中に見覚えのある面立ちがあった。  マ「あっ、そうせい・・・じって美味しいですよね、義姉さん。」  翠「別にごまかさなくてもいいですよ。それよりもお前に話したいことがあるです。」  マ「話・・・蒼星石のことですか?」  翠「違うです。今回は・・・お前なんかでも一応は一人の男だと見込んで相談したいことがあるです。    だから、敬語なんかもいらねえですからその代わりに腹を割って話しやがれです。」   いつになく真剣な表情で翠星石がそう言った。むしろどこか切羽詰った感じがすると言うべきかもしれない。  マ「相談・・・それは珍しいですね。・・・分かりました、いや、分かったよ。できる限り相談に乗るよ。」   そう答えると、マスターが話を聞くために上体を起こす。  翠「じゃあ・・・正直に言ってお前は翠星石のことをどう思ってるですか?」  マ「どう、ってのは?」  翠「もう蒼星石から聞いてるとは思うですが、翠星石はジュンとケンカして飛び出してきたです。」  マ「それは聞いたけれど、いったいなぜ?」  翠「ジュンは・・・翠星石のことを性悪人形呼ばわりしたり、明らかに翠星石を邪険にしてる節があるです。    それが腹立たしくなって、つい・・・。」  マ「ふうん、ジュン君のことが本当に好きなんだね。」  翠「茶化すなですぅ!・・・やっぱり男というのは蒼星石のように素直でおとなしい女性を好むのですか?    もしそうだったら、お前と蒼星石のようにいつでも笑って話をできる関係になれたのでしょうかね・・・・。    やっぱり・・・翠星石のような性格は自分勝手だと疎ましがられるですか?」  マ「詳しくは知らないがジュン君もいろいろと大変な悩みを抱えているそうだし、微妙なお年頃だからね。    確かに・・・翠星石は多少言動に荒っぽく感じられるところがあって、思ったことを隠さず出しちゃうことも多いし、    我を張っては周囲を振り回すタイプみたいだからいさかいも起こるだろうね。」  翠「やはりそうなのですか・・・。」   翠星石が珍しくしゅんとした顔をマスターの前で見せる。  マ「・・・でも、それでいて実は人一倍に繊細で、他人の気持ちに配慮して親身になって考えてもあげられるし、    本当につらい時でも最後まで自分の希望を諦めようとしないという一面もあって、一人の女性としてとても魅力的だし素敵だと思うよ。」  翠「な、お前いきなり何を言い出してるですか!?」  マ「いや、ありのままどう思ってるか話せと言われたから・・・。」  翠「だけど・・・仮にそうだとしても結局、ジュンともめるのは避けられないってことですよね。」  マ「まあドールとミーディアムの関係は非常に密接だからね。そんなに近くにいたら衝突の一つも起こるのが普通さ。    うちの場合はひとえに蒼星石がいろいろと配慮を利かせてくれたのが大きいだろうね。    もしも契約していたのが蒼星石以外だったらきっと何度か意見の衝突なんかもあったろうさ。」  翠「やはり今のままでは駄目ですか・・・。」  マ「でも、だからと言ってそれは翠星石よりも蒼星石が優れているだとか、どういった性格が好まれるかといったことではないと思う。    そもそも、僕とジュン君だって同じ男性ではあってもぜんぜん違っているだろうし、その辺はみんなバラバラだろうさ。    だけど一人一人に違った魅力もあれば欠点もある・・・それだけのことじゃないのかな?」  翠「でも、でも・・・実際にジュンは翠星石のことを・・・。」   そう言って翠星石は何かをじっとこらえている。  マ「やれやれ・・・。」   マスターが膝の上の翠星石をそっと自分の方へと抱き寄せる。  翠「な・・・お前いきなり何をしやがるですかっ?」  マ「まあまあ、たまにはちょっとくらいいいでしょ?確かに蒼星石以外にこうしてるのは変な感じだけどさ。    この際つらいものはみんな吐き出しちゃいなよ・・・本当は話をする時ってのは相手の顔が見えなくちゃ困るんだろうけどね。」   その言葉を聞いた翠星石がマスターの胸の中でぐずりだす。   おそらくは姉として、蒼星石の前では涙を見せまいと努めていたのだろう。  マ「まあ、今はいろいろと障害があってもそのうちにきっと乗り越えられるさ。    それにさっきも言ったけど、翠星石だって十分魅力的なんだから自信を持ってさ!」  翠「ふ、ふん、調子に乗りすぎですよ!」   翠星石がわずかに照れながらマスターのあごにアッパーを炸裂させる。  マ「ちょ・・・痛いじゃないか!いてて、まともに入ったし・・・。さっそく元気になったのは大いに結構だけどさあ、    照れ隠しなのかは知らないけれどまずその辺から直していけ・・れ・・ば・・・。」   のけぞらされた体勢を元に戻そうとしていたマスターが途中でそのまま固まる。  翠「どうしたですか?今ので脳がシェイクされちまいましたか?」   マスターが無言で指差すほうを翠星石も振り向いて見ると、寝室の入り口に蒼星石が静かに立っていた。   いつからいたのかは分からないが、何やら思いつめたような雰囲気を漂わせている。   しかし、蒼星石が今どんな思いでいるのかは、二人ともその無表情な顔からは読み取れなかった。  マ「あ、蒼星石・・・・・」   マスターの呼びかけも無視し、無言のまま蒼星石が部屋から駆け出していく。  マ「これってさあ・・・何らかの誤解を招いていやしませんか?」  翠「何も言わないで出て行ったところを見るとかなりヤバい誤解をされてそうですね。」  マ「そんな他人事のように言わないでよ!」  翠「まあ今回は協力してやるですから早く追いかけるですよ。」  マ「いくらなんでもそりゃ当然でしょう!!」   そのまま翠星石を抱えて、半泣きのマスターが慌てて部屋を出て行った。                       [[つづく>お泊り - 笑 -]]

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