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蒼薔薇」(2006/08/31 (木) 01:19:45) の最新版変更点

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   マスターの膝の上で一緒にテレビを見ていると薔薇園の特集が映った。    色とりどりの薔薇が所狭しとひしめき合って大変豪華な印象を与える。   マ「蒼星石、今の見た!?蒼い薔薇だよ!なんだか蒼星石みたいだね。」    しばらくしてマスターが屈託のない笑顔で話しかけてきた。    この人はいつもそうだ。僕とは違って思ったことや感情をそのまま表に出してしまう。    ・・・時として、それが誰かを傷つけてしまうなどとは夢にも思わずに。   マ「蒼星石・・・?」   蒼「そうだね、僕みたいだと思うよ。花言葉の『絶望』が象徴するようにね・・・。」   マ「え?さっきテレビじゃ花言葉は『希望』だって・・・。」   蒼「自然の薔薇は青色の色素を持っていないから、かつては蒼い薔薇も決して存在し得ないものだったんだ。     ・・・少なくとも僕の作られた時代にはね。だから『絶望』という花言葉だったんだ。     その後、人工的に蒼い薔薇が出来るようになってからは『希望』になったようだけどね。」   マ「へえー、そうだったんだ。」   蒼「実に僕にふさわしいと思わない?薔薇乙女の一員でありながら髪だって短くて全く女性らしくもなく、     究極の少女であるアリスの片鱗も備えていない、・・・まさにお父様の絶望の権化のような僕にさ。」   マ「それは・・・蒼星石はネガティブすぎるよ・・・。」    自嘲的な僕の言葉にマスターがとりなしを入れる。   蒼「・・・・・。」   マ「確かに、ローゼンさんも絶望しかけ、挫折しかけたんだろうね。でも、その後も他の姉妹を作り続けたじゃないか。」   蒼「でも真紅たちは愛を注がれた!ちゃんと女の子らしく、可愛らしく作られた・・・。     僕なんかとは・・・違うんだ・・・。気休めなんか・・・いらないよ・・・。」   マ「・・・・・。」    今度はマスターのほうが黙り込んでしまう。マスターが悲痛な面持ちで何やらじっと考え込んでいる。    ・・・自分はいつだってそうだ。咲かせる花もないくせに、棘だけは人一倍に持っていて、周囲も、そして自分自身すらも傷つけてしまう。    マスターは僕のことを励まそうとしてくれただけなのに、自分だって本心ではそうされるのを望んでいたはずなのに、    僕はそれをはねつけてマスターの笑顔を曇らせてしまった。マスターの心を傷つけてしまった。    僕なんかがいたから・・・。僕は本当に余計な存在なんだ・・・。   蒼「マスター・・・ごめんなさい。」   マ「絶望の蒼薔薇・・か、確かにその通りなのかもね。」    その一言に衝撃が走る。ああ、自分はついにこの人に見放され、絶望されてしまったんだろうか。    でもいいんだ、それならもう失うことを恐れないですむ。何も・・・期待しなくてもすむ。   マ「蒼薔薇ってさ、アリスにも似てるよね。」   蒼「アリスに?」   マ「決して存在しえぬはずの幻の存在。どんなに求めても手に入らずに絶望視されていた存在。     でも人がその美しさを追い求め続け、ついに完成させた存在。     まあ、アリスはまだ誕生していないけどさ、なんとなく似てないかな?」   蒼「そう・・かもね。」   マ「でさ、アリスを生み出すことに絶望しかけたローゼンさんは蒼星石に希望を託したんじゃないかな?」   蒼「希望?」   マ「そう、希望。この短い髪はいつの日かまだ見ぬアリスのような髪型へと変化することへの期待をこめて、     他に女性らしくないと蒼星石が思うところも、将来アリスのような女性に成長するようにとあえてニュートラルに、     アリスというものの姿が分からないからこそ、いつかアリスへと花開く希望のつぼみとして作られたんじゃないのかな?」   蒼「そんなこと・・・考えたこともなかったよ。」   マ「もちろん真実は分からないけどさ、少なくとも僕はそう信じるね。」    曇りも迷いもない、やさしさと自信に満ちた目でそう言ってくれた。   蒼「本当にマスターの言う通りで、お父様が僕を愛して下さっていたのならいいんだけどな・・・。」   マ「いや、ローゼンさんだってきっと蒼星石を愛していたと思うよ。そうじゃなければ・・・」   蒼「そうじゃなければ?」   マ「どんな名工だってこーーーんな可愛い子を作れるもんかーーーー!!」    言うが早いか凄まじい勢いで頬ずりをしてくる。   蒼「うひゃぁ!苦しいよ、マスター!」   マ「可愛いぞ、可愛いぞぉおおーー!!」   蒼「分かったからもうやめてー。」    なんとかそう口にしたところでやっと解放してもらえた。   蒼「まったく、マスターはポジティブすぎるよ。」   マ「でもその方が生きてて楽しいでしょ?」   蒼「たしかにマスターはいつ見ても幸せそうだよね。」   マ「蒼星石がずっと一緒にいてくれるからね。」    本当にこの人ときたら、無邪気にそういうことを言ってしまうんだから。    ・・・時として、それが僕の心をどれだけ激しく揺さぶるかなど気にも留めずに。   マ「蒼星石・・・君は幸せ?」   蒼「そうだね、僕も幸せだよ。マスターが希望を与えてくれるからね・・・。」    貴方が僕を蒼薔薇のつぼみだと信じてくれるのなら、僕は貴方の傍にずっといたい・・・。    きっと、そのつぼみが一番美しく咲き誇れる場所がそこにはあるから・・・。
作者ですがいったん消去します。 編集してくれた方すみません。

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