「双子」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

双子」(2006/08/31 (木) 01:20:00) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

   翠星石と僕はずっとずっと一緒だった。    双子の庭師、二人で一つの存在。    今までも、そして、これからもずっと・・・。   ――― いらっしゃい、双子さん。 ―――    マスターの呼ぶ声がする。僕ら二人を呼ぶ声が。   翠「なんですかぁ、マスター?」   蒼「マスター、今行きます。」    二人でマスターの前に立つ。マスターは何かを取り出す。   ――― これを二人に上げたいの。 ―――    こぎれいに飾り付けられた箱が差し出れる。   翠「開けてもいいですか?」   ――― ええ、もちろん。 ―――    それを聞いた翠星石は早速箱に手をかける。   翠「わあっ・・!」   ――― 二人おそろいのティーカップよ。 ―――    箱の中からペアカップが顔を出す。    入れられているラインが翠星石のが緑で僕のが青という以外、違いはないようだ。   ――― 三人でお茶をするときに使いましょうね。 ―――   翠「はいですぅ♪」   蒼「・・・ありがとうございます。」    今回のマスターもそうだ。僕ら二人に分け隔てなく接してくれる。    女の子らしくかわいい翠星石にも、男の子みたいで可愛げの無い僕にも。    今までもそうであったように、僕らが一対の、双子という存在だからだ・・・。     オ マ エ ハ カ ガ ミ ニ ウ ツ ッ タ タ ダ ノ カ ゲ ダ   蒼「・・・う・・・・・んっ!」    視界にさっきまでとは全く違う風景が飛び込んでくる。   蒼「夢を・・見ていたのか・・・。」   翠「あっ、お目覚めですか、蒼星石。」   蒼「そっか、お夕飯の支度を済ませて一休みしてて・・・。」    時計を見ると普段ならもうマスターがとっくに帰っている時間だった。   翠「蒼星石はだらしないアイツの世話を焼いてばかりで疲れてるですよ。     甘やかさないでちょっとは自分でやらせたほうがアイツのためにもなるですぅ。」   蒼「翠星石、そんなことを言うもんじゃないよ。今日だってマスターは遅くまで頑張ってるんだ。」   翠「どうせ遊んでるに決まってるです。まったく、今日はどこをほっつき歩いてやがるですかね。」    噂をすればなんとやら、玄関の開く音がマスターの帰宅を告げる。   マ「ただいま。」   蒼「お帰りなさい、マスター。遅くまでお疲れ様でした。」   翠「遅いですよ、ご飯も食べずに待っててやる方の身にもなれですぅ!」   マ「ははは、ごめんごめん。お土産を買ってたら遅くなっちゃってね。」     マスターが両手に一つずつ箱を持ってこちらへと差し出す。   翠「もう開けるですよ。」   マ「どうぞ、ご遠慮なく。」    翠星石はひったくる様に箱を受け取ると中身を取り出す。    白地に色とりどりの植物がたくさん描かれたカラフルなティーカップだった。   マ「どーよ?庭師らしさをイメージしてみたんだけど。」   翠「お前にしては、なかなかセンスが良いですよ。褒めてやるですぅ。」   マ「三人でお茶でも飲む時に使いたいからね。真剣に選んだよ。」    三人でお茶・・・か・・・。      ガッシャーーーン!!   翠「ごめんなさいですぅ。もらったカップを割っちゃったですぅ。」   ――― 大丈夫?怪我しないようにね。 ―――   蒼「・・・僕が片付けますよ。」    椅子から立ち上がる時に肘とカップが接触する。      カ シ ャ ン・・・   蒼「あっ・・・。」   ――― あらあら、慌てて落としちゃったのかしら? ―――   蒼「すみません、マスター。せっかくいただいたものを・・・。」   ――― いいのよ。二人とも気にしないで。 ―――   蒼「本当に、すみませんでした。」    ・・・だが、これでいいんだ。自分のした事が許されざることだとは思う。    でも、対で存在するべきものがその片割れを失ってしまったら、残った方にももう価値はない。    片方だけでは中途半端な存在・・・ジャンクだ・・・。だったら残された片割れも無くなってしまったほうが良いんだ・・・。    いや・・・そんなものが存在していてはいけないんだ!     モ ウ カ タ ホ ウ モ キ リ オ ト シ テ シ マ エ    自分の頭の中に、狂気とも、どす黒い本性ともつかぬ声が響く。   マ「あれ、どうしたの蒼星石?なんかボーっとして。」   翠「蒼星石はお前のせいでストレスがたまってるですぅ!現にさっきまで疲れて眠りこけてたですよ。」   蒼「翠星石!僕がだらしない様な事を言わないで欲しいな。今日は・・・たまたまですよ。」   マ「そっか、いつもありがとう。感謝の印になるかは分からないけれど受け取ってよ。」   蒼「ええ、いただきますね。」     あまり派手なのは好きじゃないんだけどな・・・。     包装紙をはずし、箱を開ける。   蒼「あ・・。」     そこにあったのは、白地に・・・蒼い薔薇のワンポイントがあしらわれた素朴なティーカップだった。   マ「どうかな?蒼星石が好きそうなデザインにしたつもりだけど。」   翠「ちょっ、何で翠星石と蒼星石のがおそろいでねえですか!納得いかんですぅ。」   マ「しょうがないだろ。翠星石と蒼星石にどんなのが喜ばれるかを考えてたら別々の物に行き着いたんだから。     これでも時間をかけてじっくりと考えたんだぞ!」   翠「ふん、下手の考え休むに似たり、ってやつですよ。」   マ「うは、ひでえ。」   蒼「いえ、僕は気に入りましたよ、マスター。」   マ「そう?そう言ってもらえると嬉しいな。」   翠「蒼星石の言葉に免じて今回は許してやるですよ。ありがたく思えです。」   マ「はいはい・・・。しかし面白いもんだねえ。」   翠「何がですか?」   マ「ん、蒼星石はテープをきれーいに剥がして開けたのに、翠星石は包装紙をびりびりに破いちゃってさ。     がさつな性格が如実に現れているというか・・・。」   翠「てめー、乙女を侮辱するとは許せねー野郎です。     『早く開けたくてテープを剥がすのももどかしいわ~♪』という演出をしてやった翠星石のやさしさを思い知れですぅ!」   マ「やさしい乙女が大の男に飛び掛って攻撃を仕掛けるかっ!おしとやかな蒼星石を見習ってもっと女の子らしくだなあ・・・。」   翠「きいぃぃぃーーっ!てめえは翠星石のマスターでもあるくせに翠星石だけ邪険にするとはとんでもねえ不届き物です!」   マ「だったらもっとマスターとして敬った態度で接してくれよ。」   翠「ふん、今のてめえには敬う価値はねえです!敬うに値するように翠星石が再教育してやるです!」   マ「ちょ、待て!蒼星石、君も君でこういった場面では活発すぎる姉を見習って助けに入ってくれてもさあ・・・。」   翠「翠星石の事ならともかく、蒼星石の悪口は許せねえです!覚悟しやがれです!!」   マ「嘘をつくな嘘を!あんまり調子に乗ってるとこっちも反撃するぞ!!」     相変わらず二人は揉み合い続けている。   蒼「ふふふっ・・・。」       ぴたっ     二人の動きが止まった。   翠「蒼星石・・・?」   マ「どうかしたかな?」   蒼「いや、別になんでもないよ。」   マ(今の何か笑うような事か?ボーっとしたり急に笑ったり、なんか様子が変じゃないか?)   翠(き、きっと翠星石たちがストレスを与えてるですよ!もうケンカはやめるですぅ。)   マ(だな!)   マ「と、とにかくもう降りて。ね?」   翠「きょ、今日のところはこれくらいで勘弁してやるですよ。」    じゃれあうのをやめた二人がこちらに目を向けてくる。    僕を双子の片割れとしてではなく、『蒼星石』という一つの独立した存在として見てくれる。    僕は・・・、    僕という存在だけを見てくれる人がいる限り・・・、    僕だけの名前を呼んでくれる人がいる限り・・・、      ジ ャ ン ク な ん か じ ゃ な い !    翠星石と僕はずっとずっと一緒だった。    双子の庭師、二人で一つの存在。    今までも、そして、これからもずっと・・・。
作者ですがいったん消去します。 編集してくれた方すみません。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: