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サマーヒート」(2006/07/23 (日) 20:58:57) の最新版変更点

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世間では夏休みと言った所だろうが、残念ながら俺に長期休暇という物は存在しない。 そんな中での一日の休みは、『貴重』という言葉そのものだった。 「ハハハ、ガキなんか暑い中で日焼けでもして黒くなっとけってんだ、バーローwwww」 「・・・マスター、そんな僻まなくても・・・」 海の日を過ぎた辺りから、毎朝毎朝外から聞こえてくる遊ぶ子ども達の大きな声。 それを聞きながら俺は蒼星石と遅めの朝御飯を摂っていた。 「ごちそうさまー」 「ちょっと待って」 席を立つのを蒼星石に止められる。 「マスター・・・今日もご飯残してるね。ちゃんと食べないと駄目だよ?」 ・・確かに蒼星石の言う通りだった。 毎朝完璧なる食事を用意する蒼星石。 今までそれを残すことは俺としては考えられなかったんだが、 「ここんとこ食欲がなくてね。食い切れないんだ」 「でも・・・」 心配そうな顔をする蒼星石。 「最近マスターってば、全然ご飯食べ切ってくれないから・・」 「悪い悪い。そうだ、昼はまた素麺にしてよ」 「・・・・・」 ポン、と蒼星石の頭に手を置く。 素麺ぐらいだったらしっかり食べれそうな気もする。 それに今日は滅多に無い休み。 一日ぐらいは涼しく生きてやろう、と心に決めた。 ・・・決めたはずだったんだが。 「蒼・・・俺もう帰っていいですか?」 部屋でクーラーを利かせて昼寝と洒落込んでいた俺。 昼前になって、その甘夢は蒼い影によって無残にも破壊された。 「駄目だよ。折角マスターお休みなんだから、買出しに出ないと」 俺の手を引いて近くのスーパーへ向かう蒼星石。 空からは煮干になりそうなぐらいの量の日が射している気がする。 その後、頭がボーっとなりながらも、俺は蒼星石に引かれてスーパーへ辿り着いた。 入った瞬間にしっかり利いた冷房が俺の体を包み込む。 「はい、マスター。コレお願い」 カートを持ち出してくる蒼星石。 「えーと、ニラとレバーが足りなくなっt」 「ごめん。俺体がしんどいから、ベンチで休んどくよ。買い物は頼んだ」 カートを受け取らずに蒼星石に英世を数人渡す俺。 「え?」 「じゃ後はよろしく」 確か外に自販機があったな。 「・・・ひょっとして、マスター・・」 後ろで蒼星石が何か呟いたようだったが、すでに俺の関心は買おうとする水の方へ向いていた。          ▼△ 夕方。 「はいっ、召し上がれ!」 ドーンと俺の前に置かれる重箱。 「今日は土用の丑の日だし、鰻にしたんだ」 そう言いながら自分の分の蓋を開ける蒼星石。 気温も高いのに、ぼんやりと湯気が立つ。 「・・・俺さ、食欲g」 「その言い訳は通用しないよ」 へ? 「結局マスターはお昼も全然食べなかったし、冷たいもの飲んでばかりだったよね?ここ最近もそうだったけど」 話を聞きながら俺も蓋を開けてみる。 そこには予想を裏切らずビッグな蒲焼が白飯の上に乗っていた。 「今日確信したよ。マスター、夏バテになってる」 ・・・思い当たる節はあったけど。 ここまで面向かって言われるのは、ガンときた。 「だから・・・それ食べて元気出して?」 「・・・・・」 無言のまま、目の前に鎮座する鰻を眺める。 そして箸を持って一切れを口に押し込んだ。 「マスター・・・」 「・・・うっ」 瞬間、重箱を持ってかき込む俺。 「うーまーいーぞぉー!」 味皇ばりの言い方になったが、実際それぐらい美味いから困る。 その様に満足したのか、蒼星石も嬉しそうに自分の鰻重を食べ始めた。 「あー食った食った」 お茶を啜りながら、見事に膨らんだ腹を叩く俺。 「ふふ、お粗末さまでした。どう?元気でた?」 食卓を片しながら蒼星石が満足気に問いかけてくる。 「もちろん。鰻は精力がつくからn・・・・あれ?」 「?どうかした?」 俺の顔を覗きこむ蒼星石。 その手には、 「蒼、まさか俺と同じ量を食べたのか?」 俺のと同サイズの重箱が持たれている。 中を見るに、どちらも空だから蒼星石も完食したらしかった。 「そうだけど・・・何か変かな?」 なんてこったい。こんな可愛らしい子が大の男と同量食うなんて。 恐るべしローゼンメイデン。          ▼△ その夜。 少し前に降り始めた雨はすぐに強くなり、雷も鳴り始めている。 時刻は午後十時前。 今夜は蒼星石の意向で『早く寝たほうがいい』とのこと。 睡眠は夏バテ気味の体には必要だろうし、俺もそれに従って今現在ベッドの中に居た。 こんなに早く寝るのは久々だけど、蒼星石が心配してくれている手前、仕方ないかな。 とりあえず俺は目を閉じることにした。 ・・・・・ どれくらい経っただろうか。 まどろんでいる所をノックで起こされる。 「どぞ」 「・・マスター起きてる?」 当然の如く、声の主は蒼星石だった。 「・・・悪い。まだ寝れてない」 「そっ・・か」 薄目を開けると、ドアから蒼星石が入った所だった。暗い所為でシルエットの様にしか見えないが。 「その、マスターさ・・・何ともない・・の?」 「お蔭様でね。鰻食べたら元気でたよ」 「違っ、そっちじゃ・・・ぅぅ・・」 入り口付近でもじもじしているらしい蒼星石。 「雷も鳴ってるし・・僕、マスターとまた・・・」 ああ、成る程ね。 タオルケットを上げて手招きする俺。 「マスター・・っ!」 蒼星石が足早に駆け寄ってくる。 一緒に寝たいなんて、可愛いなぁ。 何か興奮してるようだけど、多分気のせいだろう。 蒼星石がベッドに飛び込んでくるのを確認して、俺は再び眠りへと落ちようとした。 END

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