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 そんな今夜の天気は雨だった。 蒼「雨だね…。」 マ「ああ、ひどい雨だね。」   二人で窓際に腰を下ろして空を見上げている。だが、無情に降り注ぐ雨のせいで何も見えない。 蒼「雨って事は、織姫と彦星は会えないんだよね。一年に一度しか会える機会が無いのに……。」  案の定、蒼星石は我が事のように落ち込んでしまっている。 マ「あんまり落ち込まないで、ね?」 蒼「でも、でも、愛している人と離れ離れになって会えないなんて、また一年待たなければならないなんて…辛すぎるよ。   数時間会えないだけでも胸が締め付けられるように切なくなるのに、そんなの…そんなの!」  どうやら自分の身と重ね合わせて感情移入しているようだ。  大変光栄な事ではあるのだが、そんな顔をされるとこちらまで悲しくなってくる。 マ「元気を出して、織姫と彦星はちゃんと会えるからさ。」 蒼「え?」 マ「七夕の日にだけ織姫と彦星は天の川を渡って逢瀬を遂げることが許されている。   でも地上が雨の時、天の川は氾濫していて二人は対岸から見つめあうほか無い。   これは知ってる?」 蒼「うん、知ってるよ。でも姿は見えてもふれあえないなんて、そんなのかえって残酷だよ…。」 マ「この話には先があってね、二人が対岸に立っていると、どこからともなく無数のカササギという鳥がやってきて   二人のための橋をかけてくれるんだ。そうして二人は出会う事が出来るんだよ。」 蒼「それって、本当?」 マ「もちろん本当だよ。少なくとも中国の故事ではそうなってる。」  今日のために多少は調べた事であるから間違いではない。  正直言えば雨が降ったら二人は会えないものだと自分も誤解していたが。 蒼「でもなんでカササギさんが?」 マ「さあ、そこまでは知らないや。ひょっとしたら二人を引き裂いた天帝からの計らいなのかもしれないし、もしかしたら…」  そこでちょっと間を置く。少し照れくさくて躊躇してしまったからだ。 マ「もしかしたら、二人が会えないことを悲しむ僕と蒼星石みたいな地上の恋人達の気持ちが、   カササギの姿になって二人のところに飛んで行くのかもね。」  蒼星石は無言でこちらを見ている。 マ「どうしたの?」  柄にもない事を言ってしまったかな、という内心の動揺を隠して尋ねる。 蒼「マスター…そんな風に思ってたんだ……。」 マ「僕だって好きな人と離れている辛さはいつも痛感してるからね。   好きになるほど、愛しさがつのるほど、二人の心の距離が近づいたと思える分だけ離れるのが辛くなる。   普段胸を締め付けられているのは蒼星石だけじゃないんだよ?」 蒼「そ、それも嬉しいけれど…」  蒼星石がこちらに寄り添ってくる。 蒼「ボクとマスターも、ち…地上の恋人、なんだよね?だったら、恋人らしく………しよ?」 マ「うん……。」  そう言って自分も体を預ける。  激しい雨の音ももう聞こえない。  もう離れていて寂しくてもきっと耐えられる。  この日、二人の距離がゼロになった。
  そんな今夜の天気は雨だった。 蒼「雨だね…。」 マ「ああ、ひどい雨だね。」    二人で窓際に腰を下ろして空を見上げている。だが、無情に降り注ぐ雨のせいで何も見えない。 蒼「雨って事は、織姫と彦星は会えないんだよね。一年に一度しか会える機会が無いのに……。」   案の定、蒼星石は我が事のように落ち込んでしまっている。 マ「あんまり落ち込まないで、ね?」 蒼「でも、でも、愛している人と離れ離れになって会えないなんて、また一年待たなければならないなんて…辛すぎるよ。    数時間会えないだけでも胸が締め付けられるように切なくなるのに、そんなの…そんなの!」   どうやら自分の身と重ね合わせて感情移入しているようだ。   大変光栄な事ではあるのだが、そんな顔をされるとこちらまで悲しくなってくる。 マ「元気を出して、織姫と彦星はちゃんと会えるからさ。」 蒼「え?」 マ「七夕の日にだけ織姫と彦星は天の川を渡って逢瀬を遂げることが許されている。    でも地上が雨の時、天の川は氾濫していて二人は対岸から見つめあうほか無い。    これは知ってる?」 蒼「うん、知ってるよ。でも姿は見えてもふれあえないなんて、そんなのかえって残酷だよ…。」 マ「この話には先があってね、二人が対岸に立っていると、どこからともなく無数のカササギという鳥がやってきて    二人のための橋をかけてくれるんだ。そうして二人は出会う事が出来るんだよ。」 蒼「それって、本当?」 マ「もちろん本当だよ。少なくとも中国の故事ではそうなってる。」   今日のために多少は調べた事であるから間違いではない。   正直言えば雨が降ったら二人は会えないものだと自分も誤解していたが。 蒼「でもなんでカササギさんが?」 マ「さあ、そこまでは知らないや。ひょっとしたら二人を引き裂いた天帝からの計らいなのかもしれないし、もしかしたら…」   そこでちょっと間を置く。少し照れくさくて躊躇してしまったからだ。 マ「もしかしたら、二人が会えないことを悲しむ僕と蒼星石みたいな地上の恋人達の気持ちが、    カササギの姿になって二人のところに飛んで行くのかもね。」   蒼星石は無言でこちらを見ている。 マ「どうしたの?」   柄にもない事を言ってしまったかな、という内心の動揺を隠して尋ねる。 蒼「マスター…そんな風に思ってたんだ……。」 マ「僕だって好きな人と離れている辛さはいつも痛感してるからね。    好きになるほど、愛しさがつのるほど、二人の心の距離が近づいたと思える分だけ離れるのが辛くなる。    普段胸を締め付けられているのは蒼星石だけじゃないんだよ?」 蒼「そ、それも嬉しいけれど…」   蒼星石がこちらに寄り添ってくる。 蒼「ボクとマスターも、ち…地上の恋人、なんだよね?だったら、恋人らしく………しよ?」 マ「うん……。」   そう言って自分も体を預ける。   激しい雨の音ももう聞こえない。   もう離れていて寂しくてもきっと耐えられる。   この日、二人の距離がゼロになった。

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