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第4ドール蒼星石の退屈(5)」(2006/06/05 (月) 02:48:28) の最新版変更点

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 さらに俺の置かれる状況は悪化していく。 「あー。窓際のあそこが空いてるな。あそこ、座ってくれ。」 担任が指定した席とは俺の後ろの席だろう。俺は最前列なので八方塞になったということだ。  実はこれが翠星石とのファーストコンタクトではない。以前彼女が家に遊びに来たときがあった。 窓を破るという非現実的な入室方法だった。その後もなにかとやらかして俺を不安のどん底に陥れた悪女だ。 あれが蒼星石の双子の姉というから驚きだ。しかし外見は性格の判断材料にはなり得ない。休憩時間になると 周りにはどこかで見たような黒山の人だかりが。それに翠星石はあたかも"優しい女性"のように接している。 俺は蒼星石に問題起こさないのか聞いてみる。 「大丈夫だよ。こういう公共機関の中だと流石に問題は起こさないと思うよ」 蒼星石の落ち着いた言葉にこれ以上ない安心感を覚える。本当に起こしてくれないといいけど。  1時間目、数学。今日は先生が出張で居ないので自習プリントが配布された。内容は中学三年生レベルの問題 だ。ほら、展開とか根号とか三平方なんとかいうやつだ。俺がスラスラとプリントを進める中、横に居る蒼星石は まったく鉛筆が動いていない様子だ。ちなみに後ろからもカリカリと音はしない。そこで蒼星石が、 「マスター、この問題よくわからないんだ。教えてくれないかな。」 と弱気になる。俺は周りの目など気にせずに乗法公式から加法・減法など何から何まで教える。蒼星石はそれを 理解していった。よく俺の説明でわかるものだな。俺の教授が終わり、俺も蒼星石もプリントにとりかかる。相変わらず 後ろから音沙汰はない。しかししばらくすると、翠星石が蒼星石の机にコソコソと近寄って「教えるですぅ」と蒼星石に 助けを乞う。それを蒼星石は受け止め律儀に教授し始める。これはこれで微笑ましい光景だ。俺の視線に気がついた蒼星石が 「こっちみんな」と言わんばかりの表情をする。俺は冷や汗をかいてプリントへ視線を戻す。 そんな事があった1時間目も終了を継げるチャイムが鳴り響く。刹那、何者かが俺の首根っこを鷲掴みにしてそのまま万力 で俺を引きずる。おそらく翠星石だろう。直感がそう俺に教える。教室を出る瞬間視界に俺と同じ用に首根っこをつかまれ 引きずられている男子生徒が映る。そして彼を引きずっている女子生徒が翠星石を追い抜かす。その際に、 「よお、お前も大変だな。」 とその男子生徒が話し掛けてきた。 「ああ。自分を見ているかのようだ。」 「俺はこの後何されるかわからん。そのときは骨を拾っておいてくれ。」 「わかった。遺骨はその怪しげな部に送りつけといてやる」 俺は引きずられながらも答える。相手も俺の言葉を聞いてニヤリと笑って見せた。そしてそいつはそのまま何処かへ拉致 られていった。同じ境遇に居るもの同士の奇妙な友情が芽生えた瞬間だった。  俺は屋上へと続く階段の一番上まで拉致られた犯人は思ったとおり翠星石だ。 「お前に言っておく事があるですぅ」 不意に翠星石が口を開く。一体何を言われるのか。蒼星石に手を出したらぶち殺すぞ、とか言われるんじゃあないだろうな。 「お前は蒼星石に今近づいちゃいけねぇです」 あー、内容は同じようなことを言われました。 「わかったですか?わかったら三べん回ってワンと咆えろですぅ」 何ワケのわからないことを。俺は反論する。 「何でだよ?ワケを詳しく原稿用紙一枚以内で答えてくれないか。」 翠星石はむっとこちらを睨んだ後重々しく話す。 「だが断るです」 そう言うとさっさと階段を下りて行ってしまった。どうやら単なる焼きもちだったようだ。俺も授業に遅れそうなので 戻ることにした。 「おかえり」 と席についた俺に蒼星石が迎えてくれた。俺はさきほど言われたことを無視して蒼星石といつものように接する。 しかしこの後、今やっていることを後悔するはめになる。

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