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遊園地へ行こう4」(2006/06/07 (水) 22:56:41) の最新版変更点

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   遊園地入り口にて人間五人とドール五体が佇んでいる。    ドールは五体ともお揃いの地味な上着とズボンを着ている。    人間側はそれぞれ何の変哲も無い私服姿だ。        やっと着いた・・・・    なんかここまで色々あったが、我々一向はついに遊園地の目前まで来た。    しかし、ここからが本番なのだ。気を緩めることはできない。    俺は各人に入場チケットを渡しながら言う。 マ:「いいか、これからくんくんのショーが始まるまで時間がかなりある。    その間、遊園地のアトラクションで遊ぶわけだが。」    俺はドール達をジロリと一瞥する。 マ:「はぐれないように、各パートナーから絶対離れないこと! いいな?」 皆:「は~い!」    遊園地内を移動するにあたりドール一体につき人間一人が付く算段になっている。    また、組み合わせとなった者同士は決して離れないようお互いを監視し合うことにもなっている。    で、各組み合わせは最初はこう決まっていた。        俺&蒼星石ペア ジュン&真紅ペア のり&翠星石ペア 巴&雛苺ペア みっちゃん&金糸雀ペア        こう決めてはいたんだが、    昨日の説明会でこの組み合わせを発表した際、翠星石が何か言いたそうだった。    ずっとあとで蒼星石曰く、「ジュン君と一緒になりたかったんじゃないのかな?」ということらしい。    ということで俺は皆が歩き出す直前、組み合わせの変更を宣言した。 マ:「ジュン君。真紅と翠星石二人の面倒お願いな。のりちゃんはその補助で。」 ジ:「え!? な、なんで急に僕が二人も!?」 翠:「え!? な、なんでそんな急に、翠星石がチビ人間と!?」 の:「わかりましたわ~♪」 真:「・・・・。」 マ:「ほら、ジュン君、さっさと真紅と翠星石と手を繋いだ繋いだ!    なんのために手が二本あると思ってんだ?」    俺はジュン君に真紅と翠星石と手を繋げるよう急かした。    互いに悪態をつきながらも渋々ジュン君を中心に手を繋ぎだす三人。ああ仲良きことは美しきかな。    いよいよ遊園地に入る。 の:「みなさ~ん、ここでチケットを係りの人に見せるんですよ~。」    俺が係りの人にチケットを渡してる時、先に入場した巴ちゃんがおずおずと近づいてきた。 巴:「あのう、ごめんなさい。」 マ:「ん、どした?」 巴:「雛苺がいなくなっちゃいました・・・。」 皆:「!」    え、えぇーー?  早い!早いよ! 雛苺さーーん!!    光の速さでいなくなった雛苺に対して俺は驚きを隠せなかった。    え? まだ全員入場してないよ? マ:「ちょっと皆ここで待ってろ!」    そう言うや俺は急ぎ入場し、辺りを見回す。    どこだ!? どこ行った!?    いたーーーーー!    来場者に風船を配ってる熊の着ぐるみの背中に、雛苺がぺったり張り付いてるぅーーー!    どうやら熊の着ぐるみの中の人は雛苺に全く気付いていないようだ。 マ:「こらーーー! な・に・を・やっちょるかーー!」    俺は熊の着ぐるみの方に迫った。 熊:「!」    熊の着ぐるみの人は怒鳴りながら猛然と迫ってくる俺を見て驚き、持っていた風船を手放してしまった。    天空に舞い上がっていく風船達。 マ:「あ・・・。」    しまった。熊の着ぐるみの人を驚かせてしまった。    そりゃ金髪のニイちゃんが怒鳴りながら迫ってきたら驚くわな。    雛苺はあい変わらず楽しそうに熊の背中にぶら下がっている。こ、この子は~!    俺は熊の着ぐるみの人に説明する。 マ:「すいませ~ん、あの、あなたの背中に連れの子がくっ付いてまして・・・。」 熊:「???」    我ながら何言ってるかわからんな。    俺は熊の着ぐるみの人の背後に廻り、雛苺を引っぺがした。 雛:「あう~~!くまさ~ん!」 マ:「こら! 勝手に行動しちゃ駄目だろ!」 雛:「うにゅ~! くまさんフカフカなの~♪」    この子は~! 完全にハイテンションだ。 熊:「・・・・。」    熊の人は俺をジ~と見ている。 マ:「あ、すいませんすいません。風船弁償します!」    先ほど俺が驚かしてしまったせいで飛んでった風船の弁償をせねばなるまい。    しかし、いくら出せばいいんだろう? 相場がわからん。 マ:「あのう、おいくらになるでしょうか・・・?」    財布を取り出した俺に、熊の人は盛んにイラナイのジェスチャーをしている。    お、こりゃラッキー。俺は人の好意は遠慮なく受け取るタイプだ。 マ:「んじゃ失礼しました~。」    俺は雛苺を小脇に抱え、そそくさと立ち去った。    なんか戻る間、背中に熊の人の視線を感じっぱなしだった。やはり怒ってたのか?    さて、皆と合流を果たした俺。    巴ちゃんと雛苺には厳重注意だ。    黙って聞き入る巴ちゃん。 雛:「トモエを苛めちゃめーっなの~~!」    こらこら、誰のせいで怒られてると思ってるのだ。 マ:「ふむ、雛苺。まだよくわかってないようだな。あのな、巴ちゃんが叱られ・・・」 巴:「いえ、いいんです。私が目を離したのが悪いんですから・・・。」    なんか巴ちゃんが気の毒に思えてきた。 マ:「んじゃ巴ちゃんは離れないようずっと雛苺と抱っこしとくように。いいね?」 巴:「はい・・。」 雛:「わ~い。トモエ抱っこなの~!」    すかざず巴ちゃんに抱きつく雛苺。    今日の雛苺はいつにも増してテンションが高い。    無理も無いか、初めての遊園地だろうからな~。        さて、移動を開始する俺ら一行。    ドール達は物珍しげに周りをキョロキョロしっぱなしだ。 マ:「ではまず最初に乗るアトラクションはこれだ。」    俺はあるアトラクションを指差した。コーヒーカップだ。王道だな。    保護者同伴なら赤ん坊でも乗れる。    それぞれのコーヒーカップにおっかなびっくり乗り込むドール達。 真:「なんか、変な気分だわね。」    紅茶愛飲家の真紅は巨大カップの中で何か居心地悪そうだった。    それぞれのカップに全員乗り込み、やがてカップは動きだした。    俺は蒼星石と二人っきりで乗っている。    コーヒーカップといえば恋人同士の定番の乗り物だよな。    やべぇ、なんかその点を意識したらオラ年甲斐も無くドキドキしてきたぞ。 蒼:「わぁ、目が回るね~。マスター。」 マ:「いや、物足りないな。」      俺はカップ中央のハンドルを勢いよく回し始めた。    カップの回転速度が急激に高まる。 蒼:「わ、わ。ま、マスター! ちょっと、早いよ!」 マ:「舌噛むなよ。」    俺はさらに回す。 蒼:「わぁ~~~。」    ありゃ、調子に乗って回しすぎたか。    遠心力で体を支えきれなくなったのか、蒼星石が座ったまま俺の腰に抱きついてきた。 蒼:「目が、目が回る~~!」    あはは、俺もだ。    おやおや、俺らのとこの他にも高速回転してるカップがあるぞ。    ジュン君、真紅、翠星石、のりちゃんが乗ってるカップだ・・・    翠星石がこれでもかと回している。何かムキになってるようにも見えるが、何かあったのか・・・?    コーヒーカップが終了し、降りてきた俺、蒼星石、ジュン君、真紅、翠星石、のりちゃんは    フラフラの千鳥足になっていた。    そんな俺らを写真に収めるみっちゃん。 翠:「フラフラするですぅ~。」 ジ:「だから止めとけって言っただろ。」    フラフラしながら言い合う二人。 真:「別に蒼星石のとこと張り合う必要なんて無かったのだわ。」    真紅もよろめきながら言う。    なるほど、翠星石も負けず嫌いだなぁ。    あ、のりちゃんがとうとうへたり込んだ。 マ:「大丈夫かよ。」 蒼:「マスター、お空がグルングルン回ってるよ~♪」    あ、蒼星石の目がヤバイ。        小休憩し、次のアトラクションに進む俺ら。    でかい怪しげな建物が見えてきた。 マ:「次はこのミラーハウスに挑戦だ。」 蒼:「ミラーハウスって何? マスター。」 マ:「鏡の壁で出来た迷路だな。 皆、出口に出ても全員揃うまで待ってろよ。」    そして、次々にミラーハウスに突入する我ら一行。    皆、辺り一面の鏡の壁に自分達が映し出される様に息を呑む。 蒼:「わぁ、僕がいっぱいいる。マスターも・・・。」 マ:「くれぐれもはぐれるなよ。・・・いて!」    曲がり角に気付かず、鏡に頭からぶつかってしまった。鏡のせいで前の状況がよくわからん。 蒼:「はは、何やってるの、マスター。」 翠:「さすがアホ人間ですぅ~♪」 蒼:「痛!」 翠:「痛!」    鏡に同時にぶつかる双子。いいものが見れた。 マ:「ははは、余所見してるから。」    やがてT字路に差し掛かった。 マ:「俺と蒼星石は左へ行こう。」(俺&蒼星石) 翠:「じゃあ、翠星石達も左へ行くですぅ!」(ジュン君&真紅&翠星石&のりちゃん) 巴:「じゃあ私達は右へ。」(巴ちゃん&雛苺) 金:「右に行くかしら~。」(みっちゃん&金糸雀)    二手に分かれる俺ら。 ジ:「けっこう広そうだね、この迷路。」 マ:「ああ、迷ったらけっこう悲惨かもな。」    またT字路に差し掛かった。 蒼:「どうしよう、マスター?」 マ:「左に行こう。」 翠:「じゃあ、翠星石達も左に行くですぅ!」    おいおい、ずっと付いてくる気か。 ジ:「いや、そろそろ分かれよう。あんまり狭い通路をゾロゾロ移動してもな。」    おや、ジュン君もしかして俺と蒼星石に気を使ってくれてるのか?    翠星石が少しごねたがジュン君が引き続き説得すると 翠:「チビ人間がそこまで言うなら、渋々承知してやるですぅ・・・。」    かくしてジュン君達は右への通路を進んで行き、俺と蒼星石だけになった。    歩みを再開する俺と蒼星石。    しかし、初めは侮っていたがなかなか本格的な作りの迷路だ。    しかもミラーハウスなものだから難易度はなお更高い。    さらにいくつか分岐点を通り、行ったりきたりしたが出口になかなか着かない。    つうか、他の人にも会わないな。    う~む。 蒼:「なんかここから一生出られない気がするね・・・。」    不安なのか蒼星石が手を繋いできた。    俺は優しく手を握り返す。 マ:「まぁ、いざとなったら『nのフィールド』使えば一発だけどな。幸いそこらじゅう鏡だらけだ。」 蒼:「あ、そうだね。忘れてたよ。」    蒼星石から不安な表情は消え去り、クスクスと笑い始めた。    さらに数分歩き回ったが出口に着かない。    う~む。 ?:「もう一生出られないんだわ~~!」 ?:「もう、みっちゃん泣いちゃ駄目かしら~。」    おや、この声は。    声がした方へ行くと、うずくまるみっちゃんを金糸雀が励ましてた。    これじゃどっちが保護者だかわからんな。 金:「あ、蒼星石達かしら~。」    こちらに気付いた金糸雀が明るい声を掛けてきた。 マ:「泣くこたぁないだろ、みっちゃん。」    まったくもう、いい大人が。 み:「でももう二時間も歩き続けてるのよ~!」    は? 蒼:「二時間って、まだ十数分しか経ってないと思うけど。」 金:「え?」    俺は携帯電話を取り出して時間を見た。うむ、十数分しか経っていない。    が、おかしい。電波が圏外になっている。そんな田舎か、ここは?    むむむ、なにかおかしい。俺の中で不安感が急速に広がっていった。 マ:「よし、ひとまず『nのフィールド』で出ちまおう。蒼星石。」 金:「もう二回も『nのフィールド』を使ってみたけれど駄目だったかしら・・・。」 マ:「なんだと?」 蒼:「え、どういうこと?」 金:「二回とも鏡を通った瞬間、反対側の壁の鏡に出ちゃったのよ。」    むむむ。どういうことだ? マ:「とりあえず俺らも試してみよう。」 蒼:「うん、マスター。」 マ:「さ、金糸雀とみっちゃんも。」    横の鏡にダイブしようとした俺らだったが ?:「いけませんね~。ズルは。ペナルティを科しますよ?」    不意に声を掛けられた。誰だ?    10メートルほど離れた壁の鏡から、人が出てきた。    いや、人か? なんだこの兎頭は? 蒼:「ラプラス!」    ん、蒼星石のお知り合いさんか?    でも、蒼星石の態度から、なんか相手は友好的ではないような・・・。    蒼星石と金糸雀は身構えている。    みっちゃんはいきまりの兎頭の登場に目をパチクリさせている。 ラ:「どうです? わたしが改築して差し上げたミラーハウスは。」 蒼:「なんだって、まさか・・?」 ラ:「はい、すでにここは私めの『nのフィールド』でございます。」    ん、何かおかしかったのはコイツの仕業か? マ:「おい、兎頭。」 ラ:「おや、蒼星石さんのマスター様でございますね。そちらは金糸雀さんのマスター様。    私は『ラプラスの魔』と申す、しがない道化師でございます。以後お見知りおきを。」 マ:「んなことはどうでもいい。さっさと元に戻すんだ。」    今日の遊園地ツアーを邪魔する者は何人たりとも許さんぞ。 ラ:「おや、私の迷路、お気に召しませんでしたか?」 マ:「今までに気に入られたためしがあるのか?」 ラ:「・・・・。」    兎頭は俺をじっと見据えた。    兎頭と数秒目が合う。なんだ、背筋が冷たくなってきた。 マ:「なんだ?」 ラ:「あなたは・・・・・ほお、これは凄い! まるで『切り札の塊』のような人だ!    なるほど、ローゼンメイデンのマスターになるのも当然ですね。」 蒼:「?」 金:「?」 み:「?」 ラ:「・・・ここは大人しく退散しましょう。ではまた御機嫌よう。」    兎頭はそう言うと出てきた鏡へ消えていった。 マ:「なんだ? あの野郎。」    不気味で尚且つ勝手なやつだ。 蒼:「マスター、ここから脱出するよ!」 マ:「ん、ああ。」        ミラーハウスの出口にジュン君達と巴ちゃん達が待ちくたびれていた。 翠:「まったく、遅いですぅ~~!」 マ:「いや~、ごめんごめん。ラプラスとかいう兎頭にチョッカイ出されてさ。」 翠:「!」 真:「!」 雛:「!」 ジ:「!」    こいつら全員兎頭のこと知ってるのか。 真:「なんともなかったの?」 蒼:「うん、勝手に帰っていったよ。    金糸雀達が少し酷い目にあったみたいだけど。」 金:「二時間も迷わされたかしら~!」    金糸雀達は二時間と言ってるが実時間は十数分しか経っていない。    時間の感覚でも狂わされたんだろか。 マ:「大方皆と分かれて早々『nのフィールド』使ってズルしようとしたんだろ。    それであの兎頭にペナルティをくらったと。」 金:「くぅうう! 悔しいかしら~!」    ふう、さて、だいぶスケジュールが乱れてるな。 マ:「よし、気を取り直して、お昼ご飯にするか。」 雛:「ごっはん~♪ ごっはん~♪」        広い芝生まで移動し、敷物の上に弁当を広げる我ら一行。    弁当はあらかじめ各自で何を作ってくるかをちゃんと分担してあるから無駄がない。    いや~、蒼星石を始め、女性陣は料理の上手な人ばかりだからな、凄い豪華だ。    俺はオニギリを手に取った・・・が、なんだこのイビツな形は・・・    ん~? なんか視線を感じた。    真紅が俺を凝視している・・・。    てことは・・・ゆ、油断したーーー! これは真紅の握ったオニギリだーー!    一回真紅の作ったお菓子を食べてえらい目にあったことがあるのを思い出した。    く、オニギリがちゃんと握りきれていないため俺の手の中で崩れていく!    俺は女性が作ってくれたものをむげに出来ない性分なので必死にオニギリを口に運んだ。だが、    ゆがむゆがむ・・・崩れる崩れる・・・米が落ちる落ちる・・・    く、これは強敵だ。つうかよく今まで形を保ってたな。    俺はとうとう両手をフルに使いオニギリにパクついた。 マ:「・・・。」    しょ、しょっぺー!! 塩かけ過ぎだよぉ。    だがこれは想定内だ。俺は覚悟を持って口に入れたため、表情には出てないはずだ。 真:「・・・・。」    真紅がまだ見てるよぉ。    俺はすぐにでも飲み物で塩辛さに毒された口内を洗い流したかった。 真:「・・・・。」 マ:「うむ、このオニギリ美味いねぇ。」    俺は手に持ってるオニギリを全部平らげた。口内はえらいことになっていた。    蒼星石が無言でお茶が入ったコップを差し出してくれた。    ああ、蒼星石・・・・。そんな君だから俺は・・・。    俺はゆっくりとお茶を飲み干した。美味い、なんて美味いお茶なんだ。    よし、生き返った。次は・・・    俺は玉子焼きを選んだ。口に放り込む。 マ:「・・・・!」    あま、甘~い! 砂糖入れ過ぎだよぉ。    先ほどのオニギリと違い、今回は覚悟がなかったため俺の顔は引きついた。    雛苺や金糸雀は実に美味しそうにこの玉子焼きを食べている。どういうことだ?    う、うぐ。オニギリから続く急激な味覚の変化に俺の舌は痺れに近いものを感じていた。    むむむ。ジュン君や巴ちゃんは美味しそうに料理に舌鼓を打っている。    どうやら俺は数ある弁当の料理の中から地雷だけピンポイントに引き当ててしまっているらしい。    そうだ、蒼星石の料理を食べるんだ。今朝台所で甲斐甲斐しく弁当を作っていた蒼星石を思い出した。    これならハズレはない。    しかし・・・どれだ?    みんな似たような弁当箱なので見分けがつかない。    思い出せ! 今朝蒼星石は何を作っていた!?    ・・・・・思い出した! から揚げ作ってた!    ってことは、から揚げが入ってるこの弁当箱だぁああ!    俺が蒼星石が作った弁当箱に箸を伸ばそうとした時、 蒼:「マスター、これ美味しいよ。」 マ:「え、うん。」    蒼星石に勧められて俺はミニシュウマイを口にした。 蒼:「さすがのりさん、お料理上手だなぁ。」    のりちゃん作ったやつか、確かに美味いが。    だがな、俺は蒼星石のを食べたいのだよ。    ミニシュウマイを食べ終え、再び蒼星石の作った弁当へ箸を伸ばす俺、だが 蒼:「マスター、これも美味しいよ。」 マ:「え、うん。」    蒼星石にまた勧められて俺は一口大のキッシュを口にした。 蒼:「みっちゃんさんもお料理上手だよね。」    みっちゃん作ったやつか。うむ、美味いな。    だがな、だがな、俺は蒼星石のが食べたいの。    キッシュを食べ終え、再び蒼星石の作った弁当へ箸を伸ばす俺、だが 蒼:「マスター、これも美味しいんだよ。」    ぶち マ:「俺は蒼星石が食べたいんだよ!」    あ・・・俺は蒼星石に向かって言ったあとハッと気付いた。 蒼:「え・・・?」    まずい。思わず口に出てしまった・・・というか言い間違えたよな、俺?    あ・・・というかとんでもない言い間違えじゃないか?    周りを見るとみんな食事の手を止め俺と蒼星石を凝視してる・・・。    き、聞かれた・・・。    俺は顔から火が出そうだった。    蒼星石の顔も途端に真っ赤になった。湯気が出そうだ。 真:「乱れてるわね・・・。」 翠:「あ、あ、アホ人間・・・・てめぇって奴は・・・・!」 の:「凄いわねぇ・・・。」 ジ:「・・・。」 巴:「・・・。」 金:「食事中に言うべきことじゃないかしら~。」 雛:「蒼星石を食べちゃめ~っなの~。」    みっちゃんは俺と蒼星石の様子をカメラに収めている・・・・ マ:「あ、あ・・・ち、違う・・・い、い、いやぁあああああ!!」    蒼:「マ、マスター!」    俺はその場から脱兎のごとく逃げ出した。                                                                                                                「遊園地へ行こう5」に続く                                          
   遊園地入り口にて人間五人とドール五体が佇んでいる。    ドールは五体ともお揃いの地味な上着とズボンを着ている。    人間側はそれぞれ何の変哲も無い私服姿だ。        やっと着いた・・・・    なんかここまで色々あったが、我々一向はついに遊園地の目前まで来た。    しかし、ここからが本番なのだ。気を緩めることはできない。    俺は各人に入場チケットを渡しながら言う。 マ:「いいか、これからくんくんのショーが始まるまで時間がかなりある。    その間、遊園地のアトラクションで遊ぶわけだが。」    俺はドール達をジロリと一瞥する。 マ:「はぐれないように、各パートナーから絶対離れないこと! いいな?」 皆:「は~い!」    遊園地内を移動するにあたりドール一体につき人間一人が付く算段になっている。    また、組み合わせとなった者同士は決して離れないようお互いを監視し合うことにもなっている。    で、各組み合わせは最初はこう決まっていた。        俺&蒼星石ペア ジュン&真紅ペア のり&翠星石ペア 巴&雛苺ペア みっちゃん&金糸雀ペア        こう決めてはいたんだが、    昨日の説明会でこの組み合わせを発表した際、翠星石が何か言いたそうだった。    ずっとあとで蒼星石曰く、「ジュン君と一緒になりたかったんじゃないのかな?」ということらしい。    ということで俺は皆が歩き出す直前、組み合わせの変更を宣言した。 マ:「ジュン君。真紅と翠星石二人の面倒お願いな。のりちゃんはその補助で。」 ジ:「え!? な、なんで急に僕が二人も!?」 翠:「え!? な、なんでそんな急に、翠星石がチビ人間と!?」 の:「わかりましたわ~♪」 真:「・・・・。」 マ:「ほら、ジュン君、さっさと真紅と翠星石と手を繋いだ繋いだ!    なんのために手が二本あると思ってんだ?」    俺はジュン君に真紅と翠星石と手を繋げるよう急かした。    互いに悪態をつきながらも渋々ジュン君を中心に手を繋ぎだす三人。ああ仲良きことは美しきかな。    いよいよ遊園地に入る。 の:「みなさ~ん、ここでチケットを係りの人に見せるんですよ~。」    俺が係りの人にチケットを渡してる時、先に入場した巴ちゃんがおずおずと近づいてきた。 巴:「あのう、ごめんなさい。」 マ:「ん、どした?」 巴:「雛苺がいなくなっちゃいました・・・。」 皆:「!」    え、えぇーー?  早い!早いよ! 雛苺さーーん!!    光の速さでいなくなった雛苺に対して俺は驚きを隠せなかった。    え? まだ全員入場してないよ? マ:「ちょっと皆ここで待ってろ!」    そう言うや俺は急ぎ入場し、辺りを見回す。    どこだ!? どこ行った!?    いたーーーーー!    来場者に風船を配ってる熊の着ぐるみの背中に、雛苺がぺったり張り付いてるぅーーー!    どうやら熊の着ぐるみの中の人は雛苺に全く気付いていないようだ。 マ:「こらーーー! な・に・を・やっちょるかーー!」    俺は熊の着ぐるみの方に迫った。 熊:「!」    熊の着ぐるみの人は怒鳴りながら猛然と迫ってくる俺を見て驚き、持っていた風船を手放してしまった。    天空に舞い上がっていく風船達。 マ:「あ・・・。」    しまった。熊の着ぐるみの人を驚かせてしまった。    そりゃ金髪のニイちゃんが怒鳴りながら迫ってきたら驚くわな。    雛苺はあい変わらず楽しそうに熊の背中にぶら下がっている。こ、この子は~!    俺は熊の着ぐるみの人に説明する。 マ:「すいませ~ん、あの、あなたの背中に連れの子がくっ付いてまして・・・。」 熊:「???」    我ながら何言ってるかわからんな。    俺は熊の着ぐるみの人の背後に廻り、雛苺を引っぺがした。 雛:「あう~~!くまさ~ん!」 マ:「こら! 勝手に行動しちゃ駄目だろ!」 雛:「うにゅ~! くまさんフカフカなの~♪」    この子は~! 完全にハイテンションだ。 熊:「・・・・。」    熊の人は俺をジ~と見ている。 マ:「あ、すいませんすいません。風船弁償します!」    先ほど俺が驚かしてしまったせいで飛んでった風船の弁償をせねばなるまい。    しかし、いくら出せばいいんだろう? 相場がわからん。 マ:「あのう、おいくらになるでしょうか・・・?」    財布を取り出した俺に、熊の人は盛んにイラナイのジェスチャーをしている。    お、こりゃラッキー。俺は人の好意は遠慮なく受け取るタイプだ。 マ:「んじゃ失礼しました~。」    俺は雛苺を小脇に抱え、そそくさと立ち去った。    なんか戻る間、背中に熊の人の視線を感じっぱなしだった。やはり怒ってたのか?    さて、皆と合流を果たした俺。    巴ちゃんと雛苺には厳重注意だ。    黙って聞き入る巴ちゃん。 雛:「トモエを苛めちゃめーっなの~~!」    こらこら、誰のせいで怒られてると思ってるのだ。 マ:「ふむ、雛苺。まだよくわかってないようだな。あのな、巴ちゃんが叱られ・・・」 巴:「いえ、いいんです。私が目を離したのが悪いんですから・・・。」    なんか巴ちゃんが気の毒に思えてきた。 マ:「んじゃ巴ちゃんは離れないようずっと雛苺と抱っこしとくように。いいね?」 巴:「はい・・。」 雛:「わ~い。トモエ抱っこなの~!」    すかざず巴ちゃんに抱きつく雛苺。    今日の雛苺はいつにも増してテンションが高い。    無理も無いか、初めての遊園地だろうからな~。        さて、移動を開始する俺ら一行。    ドール達は物珍しげに周りをキョロキョロしっぱなしだ。 マ:「ではまず最初に乗るアトラクションはこれだ。」    俺はあるアトラクションを指差した。コーヒーカップだ。王道だな。    保護者同伴なら赤ん坊でも乗れる。    それぞれのコーヒーカップにおっかなびっくり乗り込むドール達。 真:「なんか、変な気分だわね。」    紅茶愛飲家の真紅は巨大カップの中で何か居心地悪そうだった。    それぞれのカップに全員乗り込み、やがてカップは動きだした。    俺は蒼星石と二人っきりで乗っている。    コーヒーカップといえば恋人同士の定番の乗り物だよな。    やべぇ、なんかその点を意識したらオラ年甲斐も無くドキドキしてきたぞ。 蒼:「わぁ、目が回るね~。マスター。」 マ:「いや、物足りないな。」      俺はカップ中央のハンドルを勢いよく回し始めた。    カップの回転速度が急激に高まる。 蒼:「わ、わ。ま、マスター! ちょっと、早いよ!」 マ:「舌噛むなよ。」    俺はさらに回す。 蒼:「わぁ~~~。」    ありゃ、調子に乗って回しすぎたか。    遠心力で体を支えきれなくなったのか、蒼星石が座ったまま俺の腰に抱きついてきた。 蒼:「目が、目が回る~~!」    あはは、俺もだ。    おやおや、俺らのとこの他にも高速回転してるカップがあるぞ。    ジュン君、真紅、翠星石、のりちゃんが乗ってるカップだ・・・    翠星石がこれでもかと回している。何かムキになってるようにも見えるが、何かあったのか・・・?    コーヒーカップが終了し、降りてきた俺、蒼星石、ジュン君、真紅、翠星石、のりちゃんは    フラフラの千鳥足になっていた。    そんな俺らを写真に収めるみっちゃん。 翠:「フラフラするですぅ~。」 ジ:「だから止めとけって言っただろ。」    フラフラしながら言い合う二人。 真:「別に蒼星石のとこと張り合う必要なんて無かったのだわ。」    真紅もよろめきながら言う。    なるほど、翠星石も負けず嫌いだなぁ。    あ、のりちゃんがとうとうへたり込んだ。 マ:「大丈夫かよ。」 蒼:「マスター、お空がグルングルン回ってるよ~♪」    あ、蒼星石の目がヤバイ。        小休憩し、次のアトラクションに進む俺ら。    でかい怪しげな建物が見えてきた。 マ:「次はこのミラーハウスに挑戦だ。」 蒼:「ミラーハウスって何? マスター。」 マ:「鏡の壁で出来た迷路だな。 皆、出口に出ても全員揃うまで待ってろよ。」    そして、次々にミラーハウスに突入する我ら一行。    皆、辺り一面の鏡の壁に自分達が映し出される様に息を呑む。 蒼:「わぁ、僕がいっぱいいる。マスターも・・・。」 マ:「くれぐれもはぐれるなよ。・・・いて!」    曲がり角に気付かず、鏡に頭からぶつかってしまった。鏡のせいで前の状況がよくわからん。 蒼:「はは、何やってるの、マスター。」 翠:「さすがアホ人間ですぅ~♪」 蒼:「痛!」 翠:「痛!」    鏡に同時にぶつかる双子。いいものが見れた。 マ:「ははは、余所見してるから。」    やがてT字路に差し掛かった。 マ:「俺と蒼星石は左へ行こう。」(俺&蒼星石) 翠:「じゃあ、翠星石達も左へ行くですぅ!」(ジュン君&真紅&翠星石&のりちゃん) 巴:「じゃあ私達は右へ。」(巴ちゃん&雛苺) 金:「右に行くかしら~。」(みっちゃん&金糸雀)    二手に分かれる俺ら。 ジ:「けっこう広そうだね、この迷路。」 マ:「ああ、迷ったらけっこう悲惨かもな。」    またT字路に差し掛かった。 蒼:「どうしよう、マスター?」 マ:「左に行こう。」 翠:「じゃあ、翠星石達も左に行くですぅ!」    おいおい、ずっと付いてくる気か。 ジ:「いや、そろそろ分かれよう。あんまり狭い通路をゾロゾロ移動してもな。」    おや、ジュン君もしかして俺と蒼星石に気を使ってくれてるのか?    翠星石が少しごねたがジュン君が引き続き説得すると 翠:「チビ人間がそこまで言うなら、渋々承知してやるですぅ・・・。」    かくしてジュン君達は右への通路を進んで行き、俺と蒼星石だけになった。    歩みを再開する俺と蒼星石。    しかし、初めは侮っていたがなかなか本格的な作りの迷路だ。    しかもミラーハウスなものだから難易度はなお更高い。    さらにいくつか分岐点を通り、行ったりきたりしたが出口になかなか着かない。    つうか、他の人にも会わないな。    う~む。 蒼:「なんかここから一生出られない気がするね・・・。」    不安なのか蒼星石が手を繋いできた。    俺は優しく手を握り返す。 マ:「まぁ、いざとなったら『nのフィールド』使えば一発だけどな。幸いそこらじゅう鏡だらけだ。」 蒼:「あ、そうだね。忘れてたよ。」    蒼星石から不安な表情は消え去り、クスクスと笑い始めた。    さらに数分歩き回ったが出口に着かない。    う~む。 ?:「もう一生出られないんだわ~~!」 ?:「もう、みっちゃん泣いちゃ駄目かしら~。」    おや、この声は。    声がした方へ行くと、うずくまるみっちゃんを金糸雀が励ましてた。    これじゃどっちが保護者だかわからんな。 金:「あ、蒼星石達かしら~。」    こちらに気付いた金糸雀が明るい声を掛けてきた。 マ:「泣くこたぁないだろ、みっちゃん。」    まったくもう、いい大人が。 み:「でももう二時間も歩き続けてるのよ~!」    は? 蒼:「二時間って、まだ十数分しか経ってないと思うけど。」 金:「え?」    俺は携帯電話を取り出して時間を見た。うむ、十数分しか経っていない。    が、おかしい。電波が圏外になっている。そんな田舎か、ここは?    むむむ、なにかおかしい。俺の中で不安感が急速に広がっていった。 マ:「よし、ひとまず『nのフィールド』で出ちまおう。蒼星石。」 金:「もう二回も『nのフィールド』を使ってみたけれど駄目だったかしら・・・。」 マ:「なんだと?」 蒼:「え、どういうこと?」 金:「二回とも鏡を通った瞬間、反対側の壁の鏡に出ちゃったのよ。」    むむむ。どういうことだ? マ:「とりあえず俺らも試してみよう。」 蒼:「うん、マスター。」 マ:「さ、金糸雀とみっちゃんも。」    横の鏡にダイブしようとした俺らだったが ?:「いけませんね~。ズルは。ペナルティを科しますよ?」    不意に声を掛けられた。誰だ?    10メートルほど離れた壁の鏡から、人が出てきた。    いや、人か? なんだこの兎頭は? 蒼:「ラプラス!」    ん、蒼星石のお知り合いさんか?    でも、蒼星石の態度から、なんか相手は友好的ではないような・・・。    蒼星石と金糸雀は身構えている。    みっちゃんはいきまりの兎頭の登場に目をパチクリさせている。 ラ:「どうです? わたしが改築して差し上げたミラーハウスは。」 蒼:「なんだって、まさか・・?」 ラ:「はい、すでにここは私めの『nのフィールド』でございます。」    ん、何かおかしかったのはコイツの仕業か? マ:「おい、兎頭。」 ラ:「おや、蒼星石さんのマスター様でございますね。そちらは金糸雀さんのマスター様。    私は『ラプラスの魔』と申す、しがない道化師でございます。以後お見知りおきを。」 マ:「んなことはどうでもいい。さっさと元に戻すんだ。」    今日の遊園地ツアーを邪魔する者は何人たりとも許さんぞ。 ラ:「おや、私の迷路、お気に召しませんでしたか?」 マ:「今までに気に入られたためしがあるのか?」 ラ:「・・・・。」    兎頭は俺をじっと見据えた。    兎頭と数秒目が合う。なんだ、背筋が冷たくなってきた。 マ:「なんだ?」 ラ:「あなたは・・・・・ほお、これは凄い! まるで『切り札の塊』のような人だ!    なるほど、ローゼンメイデンのマスターになるのも当然ですね。」 蒼:「?」 金:「?」 み:「?」 ラ:「・・・ここは大人しく退散しましょう。ではまた御機嫌よう。」    兎頭はそう言うと出てきた鏡へ消えていった。 マ:「なんだ? あの野郎。」    不気味で尚且つ勝手なやつだ。 蒼:「マスター、ここから脱出するよ!」 マ:「ん、ああ。」        ミラーハウスの出口にジュン君達と巴ちゃん達が待ちくたびれていた。 翠:「まったく、遅いですぅ~~!」 マ:「いや~、ごめんごめん。ラプラスとかいう兎頭にチョッカイ出されてさ。」 翠:「!」 真:「!」 雛:「!」 ジ:「!」    こいつら全員兎頭のこと知ってるのか。 真:「なんともなかったの?」 蒼:「うん、勝手に帰っていったよ。    金糸雀達が少し酷い目にあったみたいだけど。」 金:「二時間も迷わされたかしら~!」    金糸雀達は二時間と言ってるが実時間は十数分しか経っていない。    時間の感覚でも狂わされたんだろか。 マ:「大方皆と分かれて早々『nのフィールド』使ってズルしようとしたんだろ。    それであの兎頭にペナルティをくらったと。」 金:「くぅうう! 悔しいかしら~!」    ふう、さて、だいぶスケジュールが乱れてるな。 マ:「よし、気を取り直して、お昼ご飯にするか。」 雛:「ごっはん~♪ ごっはん~♪」        広い芝生まで移動し、敷物の上に弁当を広げる我ら一行。    弁当はあらかじめ各自で何を作ってくるかをちゃんと分担してあるから無駄がない。    いや~、蒼星石を始め、女性陣は料理の上手な人ばかりだからな、凄い豪華だ。    俺はオニギリを手に取った・・・が、なんだこのイビツな形は・・・    ん~? なんか視線を感じた。    真紅が俺を凝視している・・・。    てことは・・・ゆ、油断したーーー! これは真紅の握ったオニギリだーー!    一回真紅の作ったお菓子を食べてえらい目にあったことがあるのを思い出した。    く、オニギリがちゃんと握りきれていないため俺の手の中で崩れていく!    俺は女性が作ってくれたものをむげに出来ない性分なので必死にオニギリを口に運んだ。だが、    ゆがむゆがむ・・・崩れる崩れる・・・米が落ちる落ちる・・・    く、これは強敵だ。つうかよく今まで形を保ってたな。    俺はとうとう両手をフルに使いオニギリにパクついた。 マ:「・・・。」    しょ、しょっぺー!! 塩かけ過ぎだよぉ。    だがこれは想定内だ。俺は覚悟を持って口に入れたため、表情には出てないはずだ。 真:「・・・・。」    真紅がまだ見てるよぉ。    俺はすぐにでも飲み物で塩辛さに毒された口内を洗い流したかった。 真:「・・・・。」 マ:「うむ、このオニギリ美味いねぇ。」    俺は手に持ってるオニギリを全部平らげた。口内はえらいことになっていた。    &ref(遊園地4イラスト.gif)    蒼星石が無言でお茶が入ったコップを差し出してくれた。    ああ、蒼星石・・・・。そんな君だから俺は・・・。    俺はゆっくりとお茶を飲み干した。美味い、なんて美味いお茶なんだ。    よし、生き返った。次は・・・    俺は玉子焼きを選んだ。口に放り込む。 マ:「・・・・!」    あま、甘~い! 砂糖入れ過ぎだよぉ。    先ほどのオニギリと違い、今回は覚悟がなかったため俺の顔は引きついた。    雛苺や金糸雀は実に美味しそうにこの玉子焼きを食べている。どういうことだ?    う、うぐ。オニギリから続く急激な味覚の変化に俺の舌は痺れに近いものを感じていた。    むむむ。ジュン君や巴ちゃんは美味しそうに料理に舌鼓を打っている。    どうやら俺は数ある弁当の料理の中から地雷だけピンポイントに引き当ててしまっているらしい。    そうだ、蒼星石の料理を食べるんだ。今朝台所で甲斐甲斐しく弁当を作っていた蒼星石を思い出した。    これならハズレはない。    しかし・・・どれだ?    みんな似たような弁当箱なので見分けがつかない。    思い出せ! 今朝蒼星石は何を作っていた!?    ・・・・・思い出した! から揚げ作ってた!    ってことは、から揚げが入ってるこの弁当箱だぁああ!    俺が蒼星石が作った弁当箱に箸を伸ばそうとした時、 蒼:「マスター、これ美味しいよ。」 マ:「え、うん。」    蒼星石に勧められて俺はミニシュウマイを口にした。 蒼:「さすがのりさん、お料理上手だなぁ。」    のりちゃん作ったやつか、確かに美味いが。    だがな、俺は蒼星石のを食べたいのだよ。    ミニシュウマイを食べ終え、再び蒼星石の作った弁当へ箸を伸ばす俺、だが 蒼:「マスター、これも美味しいよ。」 マ:「え、うん。」    蒼星石にまた勧められて俺は一口大のキッシュを口にした。 蒼:「みっちゃんさんもお料理上手だよね。」    みっちゃん作ったやつか。うむ、美味いな。    だがな、だがな、俺は蒼星石のが食べたいの。    キッシュを食べ終え、再び蒼星石の作った弁当へ箸を伸ばす俺、だが 蒼:「マスター、これも美味しいんだよ。」    ぶち マ:「俺は蒼星石が食べたいんだよ!」    あ・・・俺は蒼星石に向かって言ったあとハッと気付いた。 蒼:「え・・・?」    まずい。思わず口に出てしまった・・・というか言い間違えたよな、俺?    あ・・・というかとんでもない言い間違えじゃないか?    周りを見るとみんな食事の手を止め俺と蒼星石を凝視してる・・・。    き、聞かれた・・・。    俺は顔から火が出そうだった。    蒼星石の顔も途端に真っ赤になった。湯気が出そうだ。 真:「乱れてるわね・・・。」 翠:「あ、あ、アホ人間・・・・てめぇって奴は・・・・!」 の:「凄いわねぇ・・・。」 ジ:「・・・。」 巴:「・・・。」 金:「食事中に言うべきことじゃないかしら~。」 雛:「蒼星石を食べちゃめ~っなの~。」    みっちゃんは俺と蒼星石の様子をカメラに収めている・・・・ マ:「あ、あ・・・ち、違う・・・い、い、いやぁあああああ!!」    蒼:「マ、マスター!」    俺はその場から脱兎のごとく逃げ出した。                                                                                                                「遊園地へ行こう5」に続く                                          

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