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「遊園地へ行こう2」(2006/05/22 (月) 22:42:57) の最新版変更点
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前回、なかば嵌められた格好で真紅達、五体のドール達を遊園地に連れて行くことを約束させられた俺。
場面は前回の直後から。
えらいこと引き受けちまった~!
俺ははしゃぐドール達を尻目にジュン君の部屋に呆然と立ち尽くしていた。
そんな俺の様子に気付いたのか、蒼星石が心配そうに俺を見上げ、
蒼:「マスター、やっぱり駄目なのかな・・・?」
と訊いてきた。
はぁ~、今更、断れないだろう。
マ:「あ~~~~。大丈夫・・・大丈夫だ・・・・何とかするから大丈夫だ・・・。
蒼星石、俺を信じろ・・・。」
半ばやけくそ気味に答えたが
蒼:「マスター、ありがとう・・・」
蒼星石が俺の足に抱きついてきた。
俺はそうっと蒼星石の頭を撫でる。
さて、これから作戦を練らなければなるまい。
人形であることが誰にもバレず、尚且つ他の事故もなく、安全に楽しく
ドール達に遊園地を楽しんでいただくためには・・・・!
やるからには徹底的にやるぞ、俺は。
帰宅後、色々考え、悩み抜いた末、
やっぱり一人で五人の面倒見るのは無理だっつの!
との結論に達し、俺はとある複数の人物に泣きの電話を入れた。
数日後、遊園地にてくんくんショーが終日を迎える日曜日・・・の前日
つまり土曜日。その昼一時過ぎ、桜田家のリビングルームにてそうそうたるメンバーが集まった。
まず人間側、ジュン君、のりちゃん、巴ちゃん、みっちゃん、そして俺。
ちなみに、俺はみっちゃんの本名を未だに知らない。まぁいいか。
そしてドール側、真紅、雛苺、翠星石、蒼星石、金糸雀。
俺が召集をかけたのだ。自分の家を集合場所にしないのがミソである。
さっきからみんな好き勝手にワイワイガヤガヤしててかなり騒々しい。
さて。俺は両手をパンッ!と叩いて注意を引き付け、大きな声で
マ:「これから明日行く遊園地の説明会するぞ~!」
と宣言した。
みんな一斉にこちらを向く。
マ:「え~、今日は皆さんお忙しい中お集まり頂き誠にどうも。」
翠:「まったくですぅ。」
金:「早く終わらせてほしいかしら~。」
くおら、明日、置いてくぞ。
マ:「では挨拶はこれぐらいにして、まずはこれを・・・」
俺はカバンから冊子を取り出し、片手で掲げた。
マ:「明日のために俺が作成した冊子だ。明日の予定とかが色々書いてある。
んじゃ蒼星石、配ってくれ。」
蒼:「はい、マスター。」
俺は蒼星石に冊子の束を手渡そうとしたが・・・
翠:「こら、アホ人間、てめぇが配りやがれですぅ!」
・・・本当に置いてっちゃおうかな・・・
この前和解したはずだが、まだまだ翠星石の俺に対する風当たりは強かった。
俺が憮然として動きを止めていると、
翠:「まったく。じゃあ翠星石が配るですよ!」
蒼:「あ・・・。」
翠星石は俺から冊子をひったくり、せっせと配り始めた。
この子はよくわからん。
マ:「ちゃんと漢字にはふり仮名振ってあるからな。」
真:「いい心がけね。」
マ:「どうも。」
翠星石が配ってる間も俺は話を続ける。
マ:「今集ってるメンバーで明日の遊園地行くわけだ。真紅達も普通に遊園地内を歩くわけなんだが。
一つ注意してもらいたいことがある。」
俺は語気を強める。
マ:「絶対に目立っちゃ駄目! 周りにバレたら即撤収!」
雛:「うにゅ~?」
・・・もっと簡単な言葉で言うか。
マ:「遊園地にいる人たちに雛苺達が人形であることがわかっちゃったら、すぐ急いで家に帰るってこと。」
雛:「えええ~~? 帰るの嫌なの~~!!」
巴ちゃんの膝の上で駄々をこね始めた雛苺。
雛苺が一番心配だなぁ。二番目は金糸雀か。
ジ:「でも、さすがにドールが五人もいると嫌でも目立つんじゃないかな?」
うむ、その通りだなジュン君。
マ:「そこでだ、色々作戦を立ててきた。みんな、冊子はお手元に渡ったかな?」
皆めいめいに手に取った冊子をパラパラめくる。
マ:「始めに当日のスケジュールとか載ってるが、まぁそれは後で見てもらうとして、
まずは10ページ目を開いてくれ。」
みんなまたパラパラとめくる。開き終わるのを待ち、少し様子を見てると皆様々な反応を示した。
ジ:「なっ・・・。」
巴:「・・・・・。」
の:「あら。」
み:「え~?」
真:「・・・・。」
翠:「な・・・!」
蒼:「えぇ!?」
雛:「?」
金:「これは、ちょっと・・・かしら・・・」
冊子にはこう書いてある。
『遊園地では自分達は一つの家族という設定で振る舞うこと。』
配役も書いてある。
『父』役:俺 『母』役:みっちゃん 『その子供達』役:ドール達五人
『母役の弟』役:ジュン 『母役の妹』役:のり 『父役の妹』役:巴
マ:「家族連れを振舞えば、いくらか自然に見えて周りに溶け込むだろ。みんな役になりきってくれよな!」
皆:「・・・・・。」
蒼:「マスター、本気なの?」
蒼星石がおずおずと訊く。
マ:「俺のことをマスターと呼ぶな。」
蒼:「え・・・?」
マ:「俺のことを呼ぶときは、『お父様』と呼べ。『パパ』でも可。」
蒼:「マ、マスター・・・・」
マ:「そしてみっちゃんだと俺のことを呼ぶ時は『あなた』、巴ちゃんだと『お兄様』か『お兄ちゃん』になるわけだな。」
俺が真顔で言うと、みっちゃんと巴ちゃんの顔が少し引きつった。
やがて部屋に無駄に重苦しい空気が流れた。さらに
真:「私のお父様は・・・唯一人だけ・・なのだわ・・・。」
さらに無駄に重苦しい空気が流れた。
マ:「次のページめくってみて。」
皆が次ページをめくる。そこには大きくこう書いてあった。
『冗談だ。』
マ:「ま、そういう、家族といったふうに明日は臨んで欲しいってことだよ。 ・・・うご!」
いつの間にか俺の後ろに回っていた翠星石に蹴りを入れられた。
翠:「アホなこと書いてるんじゃねぇですぅ!」
の:「あら、でもステキだわぁ~、大家族って。」
マ:「いや、だからね。あくまでそういうふうにという話であって・・・」
蒼:「僕、『母』役がいいな・・・」
皆:「え?」
蒼:「・・・! い、いや違うよ!? あ、あの、ただ僕がお母さんって役に憧れてるだけだよ!?」
真:「夫役があなたのマスターだから?」
蒼:「ち、違うよ! ただ僕は純粋に母役が・・・!」
真っ赤になって否定する蒼星石。はぁ、なにやってんだか。
けど、こうなんか胸にこみ上げてくる熱いものは何だろう?
金:「何を思いつめて聞いてなかったか知らないけれど、蒼星石、次のページめくってみるかしら~。」
蒼:「え?」
次ページ見てなかったのか。
蒼:「あ! な、なんだぁ、冗談だったのかぁ。」
なんか一人でホッとしてる蒼星石。 明日の遊園地ではくれぐれも暴走しないでくれよ・・・
マ:「と、とにかく、次のページに服装について書いてある。
ドール達は俺が用意した子供服を着ていってくれ。」
俺は地味な子供服を手に持って見せた。
さすがにいつものカラフルでフリフリな服を着せたまま遊園地に行かせるわけにはいかない。
目立たないよう、俺が用意したジミ~な服を着ていくがいい。
み:「認めないわ。」
んんん?
み:「この子達の服飾の統御を預かることができるのは・・・この私だけよ・・・!」
何か訳のわからない事言いだしたぞ、この人? ふくしょく? とうぎょ?
どうやらこの人にとってドール達の服装に関しては譲れない信念みたいなものがあるらしい。
マ:「あの、もう服買ってきちゃったんすけど?」
み:「駄目駄目駄目! せっかくの遊園地なのよ!?
なぜそんな地味な服なんか着せるの!? 信じられない!」
お、俺はもしかして呼んではいけない人を呼んでしまったのだろうか。
意外な伏兵に俺はタジタジとなってしまった。
金:「みっちゃん、わがまま言っちゃ駄目かしら~!」
おお、思いがけない味方!
蒼:「僕はマスターが買ってきた服、可愛いと思うな。」
ああ、蒼星石。
真:「私も、そう思うわ。」
真紅も協力的だ。
皆からの説得もあり、みっちゃんは渋々折れてくれた。
マ:「ふう、さて、次に髪の問題だ。」
ジ:「髪?」
マ:「そう、真紅と雛苺と金糸雀な。」
俺に言われ、ポカンとする当の三人。
マ:「日本人から見たら目立つだろ。金髪と緑の髪の子は。」
ジ:「え、じゃあ、まさか真紅達にカツラをかぶせるとか?」
マ:「かつらも使うが、染めるんだよ。」
真:「!」
金:「!」
雛:「?」
ジ:「え、えぇ~?」
マ:「誤解するなよ。発想の逆転でな。染めるのは俺だ。」
蒼:「!」
の:「え、どういうことです?」
マ:「俺が金髪なら金髪の子連れてても違和感減るだろ。
同じ狙いで、みっちゃんには金糸雀と同じ髪の色のカツラ被ってもらうつもりだ。」
蒼:「・・・・・。
マスター、髪の毛染めちゃうの?」
マ:「ん、なんか不満か?」
蒼:「いえ、別に・・・。」
マ:「んで、どうでしょ、みっちゃん、このカツラ。」
俺は用意してきたエメラルドグリーンのロングストレートのカツラを手渡した。
実際、金糸雀の髪と同じ色のカツラを探すのは苦労した。
さて、みっちゃんは少し戸惑ってるようだ。
どうやら自分がコーディネートされるのは慣れてないらしい。
マ:「金糸雀と髪の色お揃いになれますぞ。」
み:「!」
嬉々としてカツラをかぶりだすみっちゃん。どうやら気に入ってくれたようだ。
だが、くれぐれも明日はそのカツラ使って金糸雀のコスプレしてくるなよ・・・・。
してきたら置いてく・・・!
マ:「さて、次のページを開いてくれ・・・」
その後十数分ほど俺の説明は続いた。
マ:「ってことで、後でまた各自で冊子によく目を通しておくように・・・では解散!」
俺の説明会は終了した。
翠:「ふ~、やっと終わったですぅ~。」
雛:「ヒナ、お腹空いたの~。」
の:「お菓子用意してくるわねぇ~。」
み:「あ、手伝おっか。」
金:「カナも手伝うかしら~。」
ジ:「なんか大変なことになっちゃったな、真紅。」
真:「くんくんに会うためならどんな苦労も厭わないのだわ。」
各自思い思いにくつろぎ出す面々。
俺は庭に出て伸びをした。
蒼:「ねぇ、マスター。」
マ:「うん?どうした浮かない顔して。明日が楽しみじゃないのか?」
蒼:「マスター、無理してないかな?」
マ:「無理?」
蒼:「今マスターの仕事がとても忙しいの、僕知ってるんだよ。
なのに明日のためにスケジュールあけたり、色んなもの用意したり、冊子を作ったり、それに髪を、染めるって・・・」
マ:「・・・・。」
蒼:「もしかして、僕らの我侭のために、マスターに凄い無理させてるんじゃないかって思えて。」
蒼星石の優しさに打たれ、俺はしゃがみ込み、蒼星石の頭を優しく撫でた。
マ:「せっかくの機会だからな、無理もしたくなるさ。」
俺はなぜか否定しなかった。否定するべきだって頭の中では思ってたのに。
蒼:「マスター・・・もしかして僕はマスターの足枷になってたりなんかしてないかな・・?」
マ:「はは、なんでそんな要らない心配すんだよ。足枷なんてとんでもない話だな。」
蒼:「ねぇ、僕は、マスターにとって・・・何なの?」
なぜいきなりそんなことを訊く? 俺は一瞬言葉に詰まってしまった。
蒼:「僕はマスターの・・」
マ:「俺にとって蒼星石は、一生をかけて守りたい存在だ。」
蒼:「・・・・。」
俺のこの言葉に、蒼星石はより一層、顔を曇らせた。
なんでそんな顔をするんだ、蒼星石?
蒼:「やっぱり僕は、マスターの足枷になってる・・・
僕はマスターから色んなものを貰ったけど、僕はマスターに何一つ・・・」
マ:「馬鹿なこというな、俺はお前に、どれほど・・・!」
真:「どうかしたの?」
真紅が窓の縁から声を掛けてきた。
マ:「いや、なんでもないよ。ほら蒼星石、お菓子の用意できたみたいだぞ。一緒に食べよう。」
蒼:「・・・・・。」
俺と蒼星石を訝しそうに見やる真紅。
くそ、なんでこんなやりとりになったんだ?
何か気持ちの行き違いがあったのか?
この時から、俺は蒼星石の気持ちが分からなくなった。
いや・・・分かってなかったのに分かってた気分になっていたんだな、きっと・・・
「遊園地へ行こう3」に続く