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「さて、二人ともババ抜きのルールは分かるな?」 俺は双子にトランプを配りながら聞いた。 「もちろんですよ。もう私たちもこの時代に来て長いですからね。チビ人間に教わって、蒼星石や真紅やチビ苺とやったこともあるですぅ」 「それならば、手加減することもないんだな」 俺はわざとらしく口元を緩めた表情を翠星石に向けた。 翠星石は俺の不敵な表情を見て、キリッと眉をつり上げる。 「やい、カビ人間。翠星石を見くびるんじゃねーです。手加減なんかしたら猿ぐつわして町内を全裸で引きづり回してやるですぅ!」 「それはそれは、乙女らしくない拷問がお好きなようで…」 「それはそれ、これはこれですぅ。とにかくこの翠星石様に対して手を抜くような真似をしたらただじゃおかねーですよ」 「翠星石…僕が思うにそれは完全に悪者が負ける前に言うセリフだと思うんだどな…」 「そ…蒼星石…、ひどいですぅ…」 蒼星石にセリフをつっこまれることは翠星石にとっては予想外だったらしい。明らかに動揺の色を見せている。 「翠星石、それにババ抜きというゲームをよく考えてごらんよ?手を抜くも何もすべて運が勝負じゃないか」 「うう……そういわれればそうですけど…」 翠星石が蒼星石に追いつめられて珍しくオロオロしている。忘れていたが、元祖小動物系ドールだったな、翠星石は。 (翠星石が小動物だとするとこの状況では差詰め蒼星石は肉食動物か。) 俺は漠然とそんなことを考えながら、蒼星石の方を見た。 「!!……」 俺は思わず生唾を飲み込んだ。 (いかん…蒼星石の目がヤバイ…) 蒼星石のオッドアイは獲物を狩ろうとする肉食動物の目であった。 オロオロと動揺する翠星石に飛びついて喉笛を噛み千切りかねないような威圧感を醸し出している。 「あの……蒼星石さん……?」 「フフフ……マスターが先に心理戦を仕掛けたんでしょ?」 うわ…この目は本当にヤバイ。どれくらいヤバイかって言えば蒼星石のローザミスティカを奪った水銀燈に向ける視線くらいヤバイ。 明らかにババ抜きに蒼星石は全神経を集中させ、ローゼンメイデンの誇りを賭けて戦おうとしているように見える。 確かに俺は翠星石を挑発した。 ババ抜きなんてゲームは戦略と言うよりも運と心理状態に左右されるゲームだからな。 一番、焚きつけやすい翠星石を冷静じゃなくして、手込めにしてやろうと思っていた。 しかしながらその心理作戦を、まさか、蒼星石が展開するとは…ね。しかも、俺の作戦より数段恐ろしいぞ。 「さて、何のことかな」 「マスター、僕の目を節穴だと思ったのかな?」 そう言うと蒼星石は俺が配り終えたばかりの三組のトランプの束をすべてひっくり返した。 一瞬のことで制することも出来ず俺は内心舌打ちをした。 「あ…!」 翠星石が思わず素っ頓狂な声を上げる。 明らかにされたカードの束は、すべてにペアができあがっていた。ババを含む一束を除いて。 「マスター…どういうことかな…?」 「偶然だろ?あり得ないことではないはずだ」 「馬鹿なことをいうなですぅ!!!」 翠星石が金切り声を上げて地団駄を踏む。しかし、蒼星石をそれをすぐさま制する。 「翠星石、黙っていて」 「ひぃ……はいですぅ…」 小動物系(笑) いかんいかん、蒼星石から目を離したら俺が狩られる。 「もう一度聞くよ、マスター。これはどういうことかな?」 「繰り返すだけさ、偶然さ」 「証明できる?」 「現にこうして起こった」 「マスターが小細工した可能性は?」 「それは悪魔の証明を求めているのか?」 「……まあいいや、これじゃあゲームにならないからね。仕切り直しだね、ますたぁ?」 蒼星石がにっこりと微笑んだ。視線が俺の目から離れないのがうすら恐ろしい。 俺は蒼星石から視線を離さないようにして、トランプを再び配り直そうとしたが、一瞬早く蒼星石がトランプを拾い上げた。 「ますたぁには悪いから、……たまにはお姉さんの翠星石に頼もうかな。お願いできるかなぁ…?」 「も……もちろんですぅ」 翠星石も蒼星石の異常を肌身で感じ取っているようだった。しかし、翠星石には反撃の余地がない。 おかしいなぁ……もめ事起こす予感は翠星石だと思っていたんだが…まさか、翠星石が先にトランス状態になるとは。 「ますたぁ、手加減したら嫌だよ?」 蒼星石は翠星石にトランプを切らせる傍ら、俺に甲斐甲斐しく話しかけてくる。 「手加減は意味ないと俺にさっき言ったよね、蒼たん」 「ふふ…変な呼び方されると照れるじゃないか」 「………」 翠星石が逃げ出していいかとこちらに視線で助けを求めてくる。 すまんが翠星石、俺も俺のことで手がいっぱいなんだ、誇り高きローゼンメイデンなら自分で耐えろ。 「翠星石…」 「ひっ……はいですぅ!!!」 「どうしたの…?トランプ切る手が止まっているよ?」 「ご…ごめんなさいですぅ!」 翠星石が慌ててトランプを配り、蒼星石の視線を逃れた。 「蒼たん、蒼たん」 「なんだい、ますたぁ?」 「順番はジャンケンで良いかな?」 「…………そうだね」 蒼星石は明らかに俺の行動の裏に探りを入れている。 なぜ、蒼星石はババ抜き程度にこんなに熱くなっているんだ?理由が分からん。 俺がいかさましたことか?しかし、普段の蒼星石ならばぷぅと膨れて笑い話で済むはずだ。 翠星石に意地悪したことか…?いや、俺より自分のほうがいじめてるだろ。 俺は蒼星石のはずされることのない視線によって内心を見透かされないように注意しつつも、今の蒼星石の状態の原因を考えていた。 「あ…」 翠星石が先に声を漏らした。 「どうしたの?翠星石…」 「い…いや……なんでもないですぅ」 どうやら翠星石が蒼星石のこの状態の原因について気付いたらしい。しかし、蒼星石を目の前にしてそれを問いつめることは出来ない。 「ねえ…二人とも…」 「蒼たんどうしたの?」 「せっかくだから、ババ抜きに負けたら、一抜けの人のいうこと何でも聞くってルールにしない?鞄持ちじゃつまんないよ」 普段の蒼星石の提案なら喜んで受けるのだが、その目で言われたら尻込みするって…。 「いいんじゃねーですか?」 急に翠星石が楽観的な態度をとった。さっきまでの小動物系はどうした? 「負けなければいいんですよね?」 「そういうことだね、どうかな、ますたぁ」 蒼星石は俺の足下に来ると俺の服の袖を片手で掴んだ。そして俯きながら言う。 「だめ…かな…?」 蒼星石さん、どこでそんな色仕掛け覚えたんだ……? 「いいですとも!」 俺、いつからこんなに単純になったんだろう? 「さすがだね、マスター。」 俺の快諾を得ると蒼星石は何事もなかったように、自分の席に戻る。 そして、俺たちはジャンケンで決めた順番で手札を取り、手札のペアを捨てる作業を始めた。 黙々とペアを取り出して捨てる作業を繰り返す。 俺はさりげなく蒼星石の手札の枚数を確かめるべく蒼星石の方に目を向ける。 「どうしたのかな?」 蒼星石は俺の視線にあっという間に気付く。手札は小さい手に上手く収め、枚数を把握できない。 「いや…何も…」 俺は諦めて自分の手札を隠しつつ、翠星石の方に目をやった。 翠星石は…警戒するまでもないな。手札の数も捨札の枚数もしっかりと分かる。 俺は自分の手札を見る。どうやらババはいないらしい。 翠星石の表情から推し量るに、彼女もババを持っていないらしい。と、なるとババは蒼星石の元にあるのか。 それは都合が良いなと俺は思った。 トランプを引く順番は、俺から蒼星石が引き、蒼星石から翠星石が引き、翠星石から俺が引くという順番であった。 翠星石の手札を、ババを当てるのはそれほど難しくはないだろう。 蒼星石を警戒することは必要だが、口三味線にのせればどうにか翠星石のババを当てることは難しくないだろう。 この勝負、十中八九俺は負けない。 「さあ始めようか」 蒼星石が俺の手札をひく。 十中八九俺の負けないだろうと思ったものの、蒼星石もこの状況について理解は出来ているはずだ。 「あ、翠星石の番ですねー♪」 翠星石が蒼星石の手札を引く。 「ひぃ…!!!」 あ、ババでしたか。残念でしたね。 さて、この状況を蒼星石がどう捉えているかが問題だ。 翠星石が蒼星石のトランスの原因に気付いた後に、平静を取り戻しているところを見ると、 蒼星石の怒りの矛先は俺に向いていると見て良さそうだ。 そうなれば、俺がこのババ抜きで負けなければ、つまりババを持たない限り、蒼星石が一位であがろうとも俺に危害が加わることはない。 万が一の可能性として、蒼星石が翠星石に命令して俺を襲わせるということだが… まあ、蒼星石が俺に危害を加えることはないだろう…。 だとすれば、この状況は完全に俺の勝ちじゃないか? 俺はあからさまにババを引かそうと取り出しやすくしている手札の隣に手をかけた。 すると翠星石の口元がわずかに動いたので、俺は取り出しやすくしている手札を引いた。 「チッ……」 翠星石が舌打ちしたのが聞こえた。 案の定、まず手をかけた手札がババか。 引いた手札が手元の手札とペアになったので、一組手札を捨てた。 蒼星石に動揺の色は無い。 (…蒼星石の考えがよめんな……) 不安なババ抜きはまだ一巡目が終わったばかりだ…。
「さて、二人ともババ抜きのルールは分かるな?」 俺は双子にトランプを配りながら聞いた。 「もちろんですよ。もう私たちもこの時代に来て長いですからね。チビ人間に教わって、蒼星石や真紅やチビ苺とやったこともあるですぅ」 「それならば、手加減することもないんだな」 俺はわざとらしく口元を緩めた表情を翠星石に向けた。 翠星石は俺の不敵な表情を見て、キリッと眉をつり上げる。 「やい、カビ人間。翠星石を見くびるんじゃねーです。手加減なんかしたら猿ぐつわして町内を全裸で引きづり回してやるですぅ!」 「それはそれは、乙女らしくない拷問がお好きなようで…」 「それはそれ、これはこれですぅ。とにかくこの翠星石様に対して手を抜くような真似をしたらただじゃおかねーですよ」 「翠星石…僕が思うにそれは完全に悪者が負ける前に言うセリフだと思うんだどな…」 「そ…蒼星石…、ひどいですぅ…」 蒼星石にセリフをつっこまれることは翠星石にとっては予想外だったらしい。明らかに動揺の色を見せている。 「翠星石、それにババ抜きというゲームをよく考えてごらんよ?手を抜くも何もすべて運が勝負じゃないか」 「うう……そういわれればそうですけど…」 翠星石が蒼星石に追いつめられて珍しくオロオロしている。忘れていたが、元祖小動物系ドールだったな、翠星石は。 (翠星石が小動物だとするとこの状況では差詰め蒼星石は肉食動物か。) 俺は漠然とそんなことを考えながら、蒼星石の方を見た。 「!!……」 俺は思わず生唾を飲み込んだ。 (いかん…蒼星石の目がヤバイ…) 蒼星石のオッドアイは獲物を狩ろうとする肉食動物の目であった。 オロオロと動揺する翠星石に飛びついて喉笛を噛み千切りかねないような威圧感を醸し出している。 「あの……蒼星石さん……?」 「フフフ……マスターが先に心理戦を仕掛けたんでしょ?」 うわ…この目は本当にヤバイ。どれくらいヤバイかって言えば蒼星石のローザミスティカを奪った水銀燈に向ける視線くらいヤバイ。 明らかにババ抜きに蒼星石は全神経を集中させ、ローゼンメイデンの誇りを賭けて戦おうとしているように見える。 確かに俺は翠星石を挑発した。 ババ抜きなんてゲームは戦略と言うよりも運と心理状態に左右されるゲームだからな。 一番、焚きつけやすい翠星石を冷静じゃなくして、手込めにしてやろうと思っていた。 しかしながらその心理作戦を、まさか、蒼星石が展開するとは…ね。しかも、俺の作戦より数段恐ろしいぞ。 「さて、何のことかな」 「マスター、僕の目を節穴だと思ったのかな?」 そう言うと蒼星石は俺が配り終えたばかりの三組のトランプの束をすべてひっくり返した。 一瞬のことで制することも出来ず俺は内心舌打ちをした。 「あ…!」 翠星石が思わず素っ頓狂な声を上げる。 明らかにされたカードの束は、すべてにペアができあがっていた。ババを含む一束を除いて。 「マスター…どういうことかな…?」 「偶然だろ?あり得ないことではないはずだ」 「馬鹿なことをいうなですぅ!!!」 翠星石が金切り声を上げて地団駄を踏む。しかし、蒼星石をそれをすぐさま制する。 「翠星石、黙っていて」 「ひぃ……はいですぅ…」 小動物系(笑) いかんいかん、蒼星石から目を離したら俺が狩られる。 「もう一度聞くよ、マスター。これはどういうことかな?」 「繰り返すだけさ、偶然さ」 「証明できる?」 「現にこうして起こった」 「マスターが小細工した可能性は?」 「それは悪魔の証明を求めているのか?」 「……まあいいや、これじゃあゲームにならないからね。仕切り直しだね、ますたぁ?」 蒼星石がにっこりと微笑んだ。視線が俺の目から離れないのがうすら恐ろしい。 俺は蒼星石から視線を離さないようにして、トランプを再び配り直そうとしたが、一瞬早く蒼星石がトランプを拾い上げた。 「ますたぁには悪いから、……たまにはお姉さんの翠星石に頼もうかな。お願いできるかなぁ…?」 「も……もちろんですぅ」 翠星石も蒼星石の異常を肌身で感じ取っているようだった。しかし、翠星石には反撃の余地がない。 おかしいなぁ……もめ事起こす予感は翠星石だと思っていたんだが…まさか、蒼星石が先にトランス状態になるとは。 「ますたぁ、手加減したら嫌だよ?」 蒼星石は翠星石にトランプを切らせる傍ら、俺に甲斐甲斐しく話しかけてくる。 「手加減は意味ないと俺にさっき言ったよね、蒼たん」 「ふふ…変な呼び方されると照れるじゃないか」 「………」 翠星石が逃げ出していいかとこちらに視線で助けを求めてくる。 すまんが翠星石、俺も俺のことで手がいっぱいなんだ、誇り高きローゼンメイデンなら自分で耐えろ。 「翠星石…」 「ひっ……はいですぅ!!!」 「どうしたの…?トランプ切る手が止まっているよ?」 「ご…ごめんなさいですぅ!」 翠星石が慌ててトランプを配り、蒼星石の視線を逃れた。 「蒼たん、蒼たん」 「なんだい、ますたぁ?」 「順番はジャンケンで良いかな?」 「…………そうだね」 蒼星石は明らかに俺の行動の裏に探りを入れている。 なぜ、蒼星石はババ抜き程度にこんなに熱くなっているんだ?理由が分からん。 俺がいかさましたことか?しかし、普段の蒼星石ならばぷぅと膨れて笑い話で済むはずだ。 翠星石に意地悪したことか…?いや、俺より自分のほうがいじめてるだろ。 俺は蒼星石のはずされることのない視線によって内心を見透かされないように注意しつつも、今の蒼星石の状態の原因を考えていた。 「あ…」 翠星石が先に声を漏らした。 「どうしたの?翠星石…」 「い…いや……なんでもないですぅ」 どうやら翠星石が蒼星石のこの状態の原因について気付いたらしい。しかし、蒼星石を目の前にしてそれを問いつめることは出来ない。 「ねえ…二人とも…」 「蒼たんどうしたの?」 「せっかくだから、ババ抜きに負けたら、一抜けの人のいうこと何でも聞くってルールにしない?鞄持ちじゃつまんないよ」 普段の蒼星石の提案なら喜んで受けるのだが、その目で言われたら尻込みするって…。 「いいんじゃねーですか?」 急に翠星石が楽観的な態度をとった。さっきまでの小動物系はどうした? 「負けなければいいんですよね?」 「そういうことだね、どうかな、ますたぁ」 蒼星石は俺の足下に来ると俺の服の袖を片手で掴んだ。そして俯きながら言う。 「だめ…かな…?」 蒼星石さん、どこでそんな色仕掛け覚えたんだ……? 「いいですとも!」 俺、いつからこんなに単純になったんだろう? 「さすがだね、マスター。」 俺の快諾を得ると蒼星石は何事もなかったように、自分の席に戻る。 そして、俺たちはジャンケンで決めた順番で手札を取り、手札のペアを捨てる作業を始めた。 黙々とペアを取り出して捨てる作業を繰り返す。 俺はさりげなく蒼星石の手札の枚数を確かめるべく蒼星石の方に目を向ける。 「どうしたのかな?」 蒼星石は俺の視線にあっという間に気付く。手札は小さい手に上手く収め、枚数を把握できない。 「いや…何も…」 俺は諦めて自分の手札を隠しつつ、翠星石の方に目をやった。 翠星石は…警戒するまでもないな。手札の数も捨札の枚数もしっかりと分かる。 俺は自分の手札を見る。どうやらババはいないらしい。 翠星石の表情から推し量るに、彼女もババを持っていないらしい。と、なるとババは蒼星石の元にあるのか。 それは都合が良いなと俺は思った。 トランプを引く順番は、俺から蒼星石が引き、蒼星石から翠星石が引き、翠星石から俺が引くという順番であった。 翠星石の手札を、ババを当てるのはそれほど難しくはないだろう。 蒼星石を警戒することは必要だが、口三味線にのせればどうにか翠星石のババを当てることは難しくないだろう。 この勝負、十中八九俺は負けない。 「さあ始めようか」 蒼星石が俺の手札をひく。 十中八九俺の負けないだろうと思ったものの、蒼星石もこの状況について理解は出来ているはずだ。 「あ、翠星石の番ですねー♪」 翠星石が蒼星石の手札を引く。 「ひぃ…!!!」 あ、ババでしたか。残念でしたね。 さて、この状況を蒼星石がどう捉えているかが問題だ。 翠星石が蒼星石のトランスの原因に気付いた後に、平静を取り戻しているところを見ると、 蒼星石の怒りの矛先は俺に向いていると見て良さそうだ。 そうなれば、俺がこのババ抜きで負けなければ、つまりババを持たない限り、蒼星石が一位であがろうとも俺に危害が加わることはない。 万が一の可能性として、蒼星石が翠星石に命令して俺を襲わせるということだが… まあ、蒼星石が俺に危害を加えることはないだろう…。 だとすれば、この状況は完全に俺の勝ちじゃないか? 俺はあからさまにババを引かそうと取り出しやすくしている手札の隣に手をかけた。 すると翠星石の口元がわずかに動いたので、俺は取り出しやすくしている手札を引いた。 「チッ……」 翠星石が舌打ちしたのが聞こえた。 案の定、まず手をかけた手札がババか。 引いた手札が手元の手札とペアになったので、一組手札を捨てた。 蒼星石に動揺の色は無い。 (…蒼星石の考えがよめんな……) 不安なババ抜きはまだ一巡目が終わったばかりだ…。

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