戦いの場にそぐわぬいつもの無邪気な笑顔で雛苺は立っていた。 雛「あーあ、蒼星石に先を越されちゃってちょっとだけ面倒になったの。」 蒼「これしか・・・君に対抗する方法が無かったからね。」 雛「ふうん、準備完了ってことなのね。でもヒナも負けないんだから。」 蒼「ちょっと待って欲しい、僕らは戦うしかないのか?」 雛「どういうこと?」 蒼「君が戦う動機はみんなを倒してアリスになる事ではなく、停止して孤独に陥らない事だったはず。 僕は水銀燈に勝利して真紅のローザミスティカを手に入れた。 これを真紅に戻せば、君だって翠星石と金糸雀のローザミスティカ無しでも動き続けられるはずだ。」 雛「確かに真紅が復活すればヒナも自分のローザミスティカだけでも平気のはずね。」 蒼「ああ。君は少し泣き虫で、だけどとても優しい子のはずだ。 僕自身も大切なものを失わないために戦い、水銀燈をこの手にかけて思ったんだ。 君がそんな戦いに心を痛めていないはずがない。もう無理をしなくてもいいんだ。」 蒼星石の説得に雛苺も考える素振りを見せる。 雛「ふうん、みーんな元通りにするってこと?」 蒼「出来ればそうしたい。確かにアリスゲームは僕らの宿命だ。 けど・・・だからこそ戦う覚悟の無い者を無理やり参加させて倒すのも間違っていると思う。 そうでなくてはアリスゲームにも真の意味は無い、そう思うんだ。」 雛「ふふっ、相変わらず蒼星石は真面目ね。でもどうやって元に戻すの?」 蒼「えっ・・・それは・・・。」 雛「私達を直せるのはお父様だけなの。そしてお父様に会える可能性があるのはアリスだけ。 結局、誰かが7つのローザミスティカを集めなきゃ駄目よね?」 蒼「・・・くっ。」 雛「それでね、蒼星石の言う通りなら戦いが終わってもアリスが誕生しないかもってことよね? なら・・・ヒナはなおさら負けて停まる訳にはいかないの!!」 蒼「・・・君の言う通りかもしれない。いずれにせよ・・・戦いは避けられないのか・・・。」 雛「それに・・・みんなが元に戻れても、ヒナのした事は戻せないの。みんな覚えてるの。」 蒼「もう・・・後戻りできないって事か・・・君も、僕も。」 雛「・・・じゃあお互いに覚悟は出来たようね。早速だけど始めるの。」 雛苺が庭師の如雨露を手にした。 蒼「ああ。」 蒼星石もそれを受けて庭師の鋏を構え直した。 ・・・もう戦いは避けられないのだろうか。 自分はただここで蒼星石が倒れない事を祈ってるしか出来ないのだろうか。 今、僕に出来る事を・・・。