テレビを見ていると皇族に待望の男子が誕生したというニュースがあった。 マ「世情に疎いからよく分からんが、とにかくめでたいみたいだね、うん。」 蒼「僕もよく分からないけれど、あの男の子はみんなから期待されているみたいだね。」 マ「うん、背負っている期待が大きい分大変だろうね。多くの人からの異なった期待に応えようとしなきゃだし。」 蒼「あの子は…生まれながらにみんなから必要とされ、愛されているんだね…。」 そこで蒼星石の表情が曇る。 もうだいぶ付き合いも長いのでこんな時の蒼星石が何を考えているのかはなんとなく想像がつく。 マ「でも、それよりも大事かもしれないことがあるよね。」 蒼「もっと…大事なこと?」 マ「“いま”自分を必要として、愛してくれている人がいるか、スタート地点も重要だろうけどさ、所詮は過去の一点。 その後生きている限り続いていく過程の方がより重要なんじゃないかな。」 蒼「そんな人が僕なんかにも…いるのかな?」 そう言って伏し目がちにこちらの様子を窺ってくる。 マ「そうだなあ、たぶんだけど…蒼星石の僕に対する答えと同じだと思うよ?」 あえて質問にも期待にもこたえずに逆に問い返すと蒼星石が無言のままわずかに顔を赤らめた。 マ「どうやら…その通りだったのかな…」 そっと蒼星石の体を引き寄せる。 蒼「あ…」 マ「君は、僕の…」 蒼星石をやさしく包み込むように抱き締める。 マ「誰よりも…もしかしたら、自分よりも大切な人だ…」 胸の中、蒼星石がかすかにうなずく気配を感じた。