「マスター、こんなのが出てきたんだけど、これ何?」 家の掃除をしていた蒼星石が、箱のような物を持ってきた。 「ん・・・・あぁ、紙相撲の土俵かな、幼稚園で作った奴だ、懐かしいな。」 「幼稚園?そんな昔の物まで取っといてあるんだね。」 「まぁな、意外と俺大事に取っとくタイプだからさ。」 しかし、土俵はあるものの、紙の力士は無くしてしまったようだ。 「そうだな・・・俺が二人の絵を描いて力士作るからさ、一緒にやるか?」 「うん、やってみたい。」 俺はまず厚紙をかたどり、それから絵を描き始めた、 左右に分けて絵を描くのは結構難しい物だったが、それなりに上手くは描けた。 「よし、じゃあやってみるか。」 「うん、この箱の縁をとんとん叩けばいいんだよね。」 「そう、じゃあ始めるぞ、はっけよーい、のこった!」 俺の合図の下、二人して一斉に土俵を叩き始めた。 「よし、いいよ!あぁそっちはダメ!そうそう、行けぇっ!・・・やったぁ!僕の勝ちだよ!」 「負けちゃったかぁ・・・よし、もう一回だ。」 しかし、こうやって遊んでいる蒼星石の姿は無邪気な子供そのものだ。 「行くぞぉ・・・はっけよーい、のこった!」 二戦目、再び俺の合図で幕を開けた。 「行けっ!いいよ、押してる!そのまま押せっ!あっ・・・・・」 その時、結果だけ話せば俺の勝ちだった、だが眼前には気まずい光景があった。 蒼星石の方は背中をつけて仰向けに、そして俺がその上に覆いかぶさる形になっていた。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 しばらくの間、二人は沈黙に包まれていた。 「俺の・・・・・・勝ちだな・・・・・・・」 「そうだね・・・・僕、掃除の続きやってくるねー・・・・」 蒼星石は空気に耐えかね去って行ったものの、場の空気は淀んだままだった。