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 ユイン・シン。ピュア・ヒューマン。男。実年齢16歳。外観年齢同様。身長170センチ、体重57キロ。やや細身。茶髪。瞳の色は青灰。肌はアジア系。登録クラス名(自己申告)、僧兵。保有スキル(自己申告)、格闘術及び法術一般。実戦経験、無し。備考、やや癖毛。

 アステール・シン。狗型フレイム・ビースト(人化可能タイプ)。男。実年齢17歳。外観年齢20前後。身長184センチ、体重82キロ。筋量多。髪色は濃い青紫(前一房のみ白髪)。瞳の色は紫。肌はアジア系。登録クラス名(自己申告)、戦士。保有スキル(自己申告)、武器戦闘及び格闘術。実戦経験、多数。備考、目付き非常に悪し。

 ――以上二名の登録を受理する。




「……だってさー」

 ……手にした一枚の、なんとも薄っぺらい書状を読み終えると。イマイチ重さの感じられない態度で、少年は傍らの男を振り返った。
 多種多様な人種、業種の人間でごった返す、巨大な白亜の建造物。
 そのロビーに設置されたテーブルの一つ。丸型で分厚いそのテーブルの席に、二人の男が着いていた。
 一人は、僧服に身を包んだ茶髪の少年。背はそれなりにあるが、顔つきにはまだ何処か幼さが残されており愛嬌が感じられる。今しがた、書状を読み上げたのがコレだ。
 その言葉の受けてであるもう一人は、背の高い、傭兵か賞金稼ぎを思わせる風貌の男だ。筋肉質の身体を重めの色を基調とした服に包み――こちらは少年とは対象に、なんとも無愛想な表情でむっつりと黙り込んでいる。
 言葉を向けても、すぐには反応が返って来なかったものだから。少年は、ひらひらと読みあげたばかりの紙を男へと向け振って見せる。
 それに対し――男が返した反応は、酷く淡白なものだった。
「そうか」
 ……それだけである。
 その反応の薄さに、少年がひょいと肩を竦める。……とはいえ、その動きには慣れがあり、表情に苦い色は無い。恐らくはこれがこの男のデフォルトなのだろう。
 それを示すように、言葉が続いた。
「相変わらずの反応どーも。……いつも思うんだけどね。アス兄、もうちょっと愛想良くならない?」
「む」
 少年の物言いに、アス兄と呼ばれた男は小さく声を上げると。……困ったように、心持ち眉根を寄せると。数瞬、言葉を捜すような間があり。
「……これで、お前も今日から冒険者か」
 相変わらず短いフレーズではあったけれど、言葉を続けた。
「アス兄もだけどね」
 小さく笑って、少年はそれに応じる。
 けれど何故か、その笑みはすぐに苦笑へと変化した。
「……まったく。イーシンも無茶言うよなぁ。いきなり冒険者になれ、だなんて。……何考えてるんだか」
「……そうだな」
 ――冒険者。
 今となっては、この職業を知らぬ者の方が少ないだろう。
 彼ら彼女らは読んで字の如く、未開地の探索や遺跡の盗掘を生業とする者達――では、ない。
 無論、それも彼らの活動内容には含まれはする。けれど、全てではない……どころか、比率としてはむしろ少ない方にすら入るだろう。
 ある種の誤解を覚悟で端的に言ってしまえば、つまり冒険者とはなんでも屋の一種である。その仕事は魔物退治や隊商の護衛に始まり、時に人探しや商品の輸送、交渉の手伝い、そして先に挙げた未発掘の遺跡の探査など、非常に多岐に渡る。
 彼等彼女等は、基本的には数人単位のパーティを組み、冒険者の店と呼ばれる場所を仲介に、時に命の危険すらある仕事を報酬と引き換えに請け負う。場合によっては、ギルドを形成することもある。
 無論、時にはその依頼の中で命を落とすこともあれば、失敗することもあり。逆に思わぬトコロから大金を得たり、遺跡の発掘から莫大な富を得るものも居る。
 大きなチャンスと同じだけのリスクが同居する職業。……それが冒険者だ、と。夢を持った人間ならばそう言うだろう。
 ――ではまぁ、口さがないものがどう言うかと言えば。食い詰め者とチンピラの集まり、とでも言うのだろうけれど。ともあれ。
「……んじゃ、まあ、登録は終わったし。今日のところは、これで帰ろっか」
 そういって、少年は大きく伸びをすると、席を立った。

 少年の名は、ユイン。……大柄な男の名は、アステールと言った。

「しっかし。酷いよねー、この証明書。……目付き悪い、とか。普通書く?」
「ファジーな組織なのだろう」
「ファジー過ぎでしょ。……っていうか、アス兄、自分のことなんだからもうちょっと怒るとか嫌がるとかしない?」
「事実なのだから仕方あるまい。……その程度の自覚はある」

 帰り道。
 互いに、いつものような他愛の無いやりとりをしながら――……ふと、アステールは思っていた。
 己が、ユインを守らねばならないと。

「……危険過ぎる! ユインにはまだ早い!」
 ダン、と。……互いの間に置かれた机を全力で叩きながら、アステールは目の前の男へと食って掛かった。
 冒険者になれ、と。伝えられた日の夜のことだ。
 しかし、その男――アステールとユインの実の父親でもあるイーシンは、抗議には気のない視線を返すばかりで。
「もう決めたことや」
 と。あっさり、首を横に振った。
 そのことに、ぎり、と。アステールの眉が吊り上がる。
 冒険者と言う仕事の危険性を、アステールは正しく理解しているつもりだった。
 確かに、多くの経験を積むことの出来る仕事だとは思う。見識を広めるにはこれ以上無い職業だとも思う。
 アステールは、恐らく、父親の意図はそのあたりにあるのだろう、とすら思っていた。
 しかし。それでも。……どれだけ得るものがあろうと、どれだけ言葉を飾ろうと。冒険者とは、己の命を切り売りする仕事なのだ。
 危険と引き換えに報酬を得るというのは、そういうことだ。
 そんな危険な場所へと、息子を追いやる父親の考えが。アステールには、さっぱり解らなかった。
「…………父よ」
 だから。……硬い声で、そして、滅多に呼ばぬ呼び方で。アステールは、目の前の男に呼びかける。
 それが卑怯だとは解りつつも。敢えて、契約を行った従者でも対等の人間でもなく、男の子供として、長男として訴える。
「父よ。貴方は、貴方はっ……我が子が、可愛くは無いのか?! 殺したいとでも思っているのか?! 答えろ!!」
「…………」
 ――けれど。
 アステールがそこまでして放った言葉に対して。……男が見せた反応は、ぱちくり、と目を瞬かせることだけだった。
「うっわ。……お前からその呼び方で呼ばれんの、えっらい久しぶりな気がすんなぁ……。……っちゅーか、せやったらもっと頻繁に」
「茶化すな。……我は、真剣に話をしているのだ」
 ぴしゃり、と。軽口めいた言葉を封じれば、イーシンがわざとらしく肩を竦める。
 そんな芝居がかった仕草すら、今のアステールにとっては己を苛立たせる材料でしかない。
 更に辛辣な言葉を向けるべく、彼は、己が父へと口を開きかけたところで。
「なぁ、アステール」
 機先を制するように、男が、息子へと呼びかけを返した。
「っ……。なんだ」
 出鼻を挫かれたアステールは、些か憮然とした表情でそれに応じる。
 それを見た男は、小さく笑みを浮かべ。……しかしすぐにその笑みを消せば、いつになく真剣な顔で、息子の顔をのぞき込んだ。
「自分に、他の何を失ってでもやり遂げたい事が出来た時。……それなのに、自分の持ってるもんを全部引き換えにしたかて、それに手が届かん、っちゅーのは。どんな気分やと思う?」
「…………どういう意味だ」
「別に。……言葉通りの意味やで?」
 ……かたり。
 テーブルに座ったままだった男が、そこで、初めて席を立つ。
「金でも、物でも、女でもええわ。……何か欲しいもんが出来た時。せやなかったら、そういうもんを守りたい時。……他にも、まぁ、なんでもええ。挙げたらキリが無い。ともかく」
「…………」
 そして。……かつ、かつ、と。テーブルを回りこむように、男は、歩き始め。
「……――そういう時が、男にはな、必ず来るもんや」
 アステールの背後で。……足を、止めた。
「ワイはな、アステール。……お前等のことを大事やと思うとる。危険な目に遭って欲しくない、ともな」
「ならば……!」
「けどな。……それ以上に。お前らを、そういう時に、後悔だけしか出来ん男にした無い」
 ――背中合わせに交わされる言葉。
 それを聞きながら。……アステールは、何故か、振り返ることが出来なかった。
 ただ、その言葉に。……一瞬、沈黙を得て。
「……それだけの能力を得る前に。万が一があったら、どうする」
 低い声で。アステールはそれだけを訊ね――ぷっ、と。男は、噴出した。
「アホやなぁ。……そうならん為に、お前が居んねやろ?」
「……何?」
 そこで、ようやく。……アステールは、くるり、と背後を振り向いた。
 男は、父は、相変わらず背中を向けたままだったけれど。――最後に一度、肩越しに振り返り。
「頼りにしとるで、お兄ちゃん。……アイツを、守ったってくれ」
 そう、告げたのだった。


 それが、数日前のことだ。
 あの時は勢いでうなずいてしまったが。……つまり、結局のところ、上手いこと煙に巻かれたようなものだとアステールは思っている。
 しかし。
「ん、どうかした? アス兄」
「……いや」
 それでもいい。……いや、良くは無いのだが、しかし。
 考えてみれば。……考えるまでもなく。兄が弟を守ることは、当たり前のことだ。
 ならば、そのことは、無責任な父親なぞに言われるまでも無い。
「なんでもない。……それより、早く戻るとしよう」
 一つの決意を胸に、アステールは言葉を返し。
 ユインは、それに頷きを返した、が――ふと、そこで。何かを思い出したように、動きを止めると。……あぁ、と。小さく笑った。
「? どうした?」
「いや、忘れるトコロだったなって。……ん」
 そうして。……差し出される、右手と言葉。
「これからよろしく、アス兄」
 ……一拍の間を置いてから。
「こちらこそだ、ユイン」
 兄は、弟の手をしっかりと握り返した。


カテゴリ: [駄文] - &trackback- 2007年07月18日 18:44:01

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