【ふるさと納税で行く、台湾ちょこっと旅】
第2話)バカ寺で知る、バカにできない現実
《台湾旅行記|台北|石門金剛宮|観光工場|猫空》
「ここは石門(シーメン)海岸ですか?」
バスの車窓から海沿いに白い建物が見えた。それをきっかけに運転手に尋ねてみた。
僕は今、台北市郊外の北、皇冠北(ファングァンペイ)海岸沿いを走るバスの中にいた。
ふるさと納税を利用し、新年ちょこっと旅で台湾に出かけていた僕が目指しているのは、この海岸沿いにある石門(シーメン)金剛宮だ。ここは、奇妙な神仏像があることで一部マニアに有名なB級スポットである。
ここでユニークなのは、目玉から手が飛び出た "おったまげ将軍像" である。ネットサーフィン中にこの像の姿を見て、シュールな地獄絵像で有名なタイのワット・パイロンウアに通じるものを感じてしまった僕は、正月国内で初詣に行かなかった代わりに、この寺で初詣を済ますことに決めた。
バス停から5分も歩くと寺の入口に差し掛かる。入口は狭いがうなぎの寝床のように奥行きのある細長い作りであった。境内には五百羅漢像やら地獄絵巻像やら、おびただしい数の神仏像がひしめいているのに圧倒される。
そして2階のお堂の中に、無数にある神仏像の中でもひときわ異様な存在感を放つ一体を見つけた。目玉から手が飛び出た、例の"おったまげ将軍像"がそこに実存していた。
得も言われぬ奇妙な存在感。
逆光を浴びて鈍く輝きながらも、目から飛び出した異様に細い手。その姿を目の前にして僕は、ただただそこにボーッと立ち尽くしか術がなかった。
異様な存在感を放つ、目玉から手が飛び出た"おったまげ将軍像"
そんな金剛宮に不思議な一角を見つけた。「点心区」― 何だこれは。おやっ、参拝客が何か食べてるぞ。
よくよく観察してみると備え付けの食器を手に、参拝客は大鍋からスープ麺をよそって思い思いに食べていた。なんと太っ腹にもこの寺は無料の軽食コーナーまで備えていたのだ。無論おいらもちゃっかり線麺 (シェンミィエン=とろみスープ麺)をタダでいただき、寺を後にした。
無料軽食コーナーの線麺 (シェンミィエン=とろみスープ麺)
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海岸沿いにある石門(シーメン)バス停に戻ると近くに何やら変な看板を見かけた。
「核 能 電 廠 緊 急 應 變 集 結 點
Nuclear Power Plant Emergency Rendezvous Point」
あわわ!!! この近くには原発があるのか。ここは台北からわずか30キロしか離れていない首都圏だぞ。 それにこの目の前のちっぽけな砂浜が避難所なのか。大丈夫か、台湾の原子力政策!!
うむむ待てよ、あの石門(シーメン)金剛宮にはこの世の悪行を戒める地獄絵像が祀られていた。それは起こるかもしれない原子炉崩壊の地獄を警告していたということなのだろうか…、そしてあの"おったまげ将軍像"も、核の恐怖に思わず目玉から手が飛び出てしまったということか…、
バカ寺に詣でたつもりが、バカにできない台湾の深刻な現実を知る一日となったのであった。
最終更新:2018年02月11日 17:36