【チップと値切りのエチオピア旅行】
第5話)世界遺産は無法地帯?
《エチオピア旅行記|アジスアベバ|バハルダール|タナ湖|ラリベラ》
バハルダールを飛び立ち、世界遺産の岩窟教会群で名高いラリベラを目指す。
小さなプロペラ機がバハルダールを離れる。窓からは雄大なエチオピアの大地のパノラマが楽しめる。緑豊かなタナ湖畔の光景が、だんだんと荒々しい荒野へと変わってゆく。その壮大なスペクタクルにはまったく飽きることがない。
ラリベラ空港に着くと、乗り合いタクシーで目星をつけたおいたアシュトンホテルに向かった。
ホテルに到着するなり、
「一泊$30(約2,550円)です。」
と、また宿の受付が吹っかけて来た。嘘をつけ! $30は首都の新築ゲストハウスの値段だ。観光地とはいえ地方のこのクラスの宿で$30も払ってなるものか。やれやれまたまた交渉だ。
毎度毎度めんどうなことだが、粘って$15x2泊で決着。
では早速、岩窟教会群とやらを見に行こう。
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ラリベラは街というよりも村に近い。規模は小さいが、山岳地帯のため想像以上に高低差が激しい。地図で見ると目と鼻の先に見える距離が、その間には深~い谷があって移動するのに難儀する。
そして何よりまごつくのは、例によって「教会群こちら」といった類の標識類が一切ないこと。蛇行した道のどこから教会群に入っていったらいいのか分かりにくい。そこにビジネスチャンスが生じる。
「中国人、オイラがガイドするよ。」
わらわらとガキどもが寄ってくる。しかし、入り口さえ見つかればガイドを必要とする場所ではなく、程なく管理事務所が見つかった。
第一教会群、第二教会群、聖ギオルゲス修道院と三地区に分かれた教会群は、地上から2~30m下に向かって岩窟を彫って建立されている。
教会内に立ち入ることは可能だが、土足は厳禁。乾いた山岳地帯の土は粒子が異常に細かく、薄暗い内部に靴を脱いで入ると、床に積もった土埃は靴下の網目を通り越し、簡単に皮膚まで浸入してくる。足先はあっと言う間に真っ黒になり、後でシャワーしてもなかなか落ちないのが厄介だ。
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ひとしきり第一教会群を見学した後「懐中電灯を忘れないように」とガイドブックが忠告していたことを思い出した。薄暗い教会群の底でそれは確かにあったほうが良い。
僕は持参した携帯式の懐中電灯のスイッチをひねった。
あれれ、灯かない!! しまった電池切れだ!!
はたしてこんな辺境の地に乾電池なんて売っているのだろうか?
僕は村の雑貨屋に行き「電池はないか?」と聞いてみた。「あるわよ」と渡されたのは某ソニーの単四乾電池。おお、さすが日本を代表するグローバル企業。事業不振で何かと凋落ぶりが取りざたされてはいるが、こんなアフリカの山奥にまで流通しているなんて、そのブランド力はまだまだ捨てたものではないわい。
などと感心してその電池をよくよく見てみる。あれれロゴが「SQMY」になってる!! なんだメイド イン チャイナのパチものじゃないか。
しかし、後で中国のニセモノに詳しい文献を調べてみたら、ソニーのパチもので正統(?)なのは「SQMY」でなく「SQ'N'Y」なのだという。ということは「SQMY」はパチもののパチものということじゃないか。いったい商標権とかどーなってんだ。
ラリベラ-そこは世界遺産の影で、知的財産の抹殺された無法地帯だった!!
最終更新:2016年08月24日 10:01