【海峡を越えて―韓国短期旅行】
第5話)テグのブタ親父
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釜山からソウルへ行く途中、テグという街で一泊する。
テグは韓国第3の大都市ではあるがはこれといった観光名所はない。普通の旅行者は歴史の街、慶州に寄るのが一般的だ。しかし僕はガイドブックの「テグは韓国一の美人の産地」のというフレーズを見逃さなかった。
大都市であるにもかかわらず、観光地ではないため、ガイドブックも2Pぐらいしか情報がない。むろん、安いホテルもどこにあるかわからない。だが、ありがたいことに韓国では日本の温泉マークが旅館マークなのだ。ハングルが読めなくても温泉マークを目印にしていけば何とかなる。
駅近くの怪しげな温泉マークに近づいてみた。1階は全然人の気配がしない。恐る恐る2階にあがると、管理人室らしき部屋におばちゃんがいた。むろん日本語も英語も通じない。気合で値段交渉である。
外国語が通じないのは旅館だけではなかった。一日ふらふら街をうろついていたが、テグのかわいい子ちゃんたちとも言葉が通じない。きっかけすらつかめんゾ。心外である。
夕方、市場の近くでうまそうな匂いがするので寄ってみた。ブタ料理の店だ。うまそうなブタ肉の大きな塊が茹で上がっている。近寄ると、なんと!英語で呼び止められた。この街で英語で話かけられるのは初めてのことだ。しかもこんな庶民的な店で、である。
ブタ料理屋の親父:「ブタ、うまいよ」
確かにうまそうだ。大鍋からぐつぐつといい匂いが漂ってくる。
ブタ料理屋の親父:「おまえは初めての日本人客だ、たくさん食べてけよ」
どうやら僕はこの店始まって以来の日本人客第一号という栄誉を賜ることとなった。親父は豪快に煮ブタをぶった切って、たくさん供してくれた。親父のサービスである。目の前にはスライスされた肉が山盛り。
僕 :「おじさん、どうして英語が話せるの?」
ブタ料理屋の親父:「俺は昔、船乗りだったんだ。外国の船に乗ってたのさ」
僕 :「だから英語が話せるんだ」
ブタ料理屋の親父:「そうさ、今日は久しぶりに英語を使うよ」
久々の外国人が懐かしかったのだろうか。親父はしばし仕事を忘れ、昔話を語りだした。
それを聞きながら僕は料理をたべるのだが、さてさて、そのお味はというと、、、まずくはないのだが、ちょっと味が薄いんだよなぁ。でもせっかくサービスしてくれてるんだから残すわけにはいかないし、、、、、僕はだんだん義務で食べていた。
肉を8割ほど食べ終わり、お腹が死ぬほど膨れたころ、
ブタ料理屋の親父:「あ、ごめん。忘れてた。この肉はな、この葉っぱに包んで
味噌をつけて食べるんだよ、ほら」
早く言ってくれ! 確かにそうやって食べると、肉の味は200倍うまかった。だが、もうこの時点で肉はあと2切れほどしか残っていなかったが、、、、
美人とはお近づきになれなかったけど、ブタ親父とは仲良くなれたテグの街であった。
最終更新:2016年08月27日 00:02