筑波大学附属駒場高校の合格辞退者が増加する理由

 

筑波大学附属駒場高校の合格辞退者が増加

 

 都立最難関高校への進学組が増える理由


 

高校入試のココが分からん! 筑駒の合格辞退者急増のナゾ

Q.筑波大学附属駒場高校(筑駒)の高校入試の合格辞退者数が過去最高になったと塾から聞きました。筑波大学附属駒場高校の合格辞退者が増加傾向の理由がよく分かりませんでした。教えてください。

 

A.質問ありがとうございます。おっしゃる通り、筑波大学附属駒場高校の合格辞退者数は年々増加する傾向にあり、2010年度の高校入試では過去最高になったと推定されます。「推定されます」と表現するのは、筑駒は公式に合格辞退者数を発表していないからです。しかし、大手塾の分析で合格辞退者の推定数がだいたい分かります。その結果、今年の筑駒の合格辞退者は予想以上に多かったということです。

 

◆「高入生が馴染めない違和感」「高入生にリーダー減る」筑駒の先生が明かす高入生の実態

筑駒の合格辞退者が増加する背景には、国私立中高一貫校の中途入学を敬遠する風潮が強まっていることが理由の一つにあります。

ご存じのように、東京都内の男子の最難関高校である開成高校、筑波大附属駒場高校、日比谷高校、都立西高校、東京学芸大附属高校のうち、中高一貫校ではない学校は、日比谷高校と都立西高校の2校しかありません。ほかの学校はすべて中高一貫教育をおこなっています。

その中高一貫校に途中入学する高入生(外部生とか外進生とも呼びます)が近年、内進生と馴染めなかったり、カリキュラムについて行けなかったりするなど、さまざまな弊害が指摘されるようになりました。

昨年、高入生の実態を筑波大附属駒場高校の教諭が明かしたことが受験界の大きな話題となりました。中高一貫教育に関する視察の際に、筑駒の教諭が「高校から入学した生徒が内進生と溶け込めない違和感を感じる」と述べ、その実態を明かしたのです。

また2010年には筑駒の副校長先生がとある中学受験本のインタビューで「高校入試で筑駒に合格しても都立トップ校に進学する生徒が増えている」「高入生にリーダーとなれる人物が減っている」と最近の高校入試の実情を明かしています。

◆海城高校の突然の高校募集停止からみえてきた高校受験の軽視

最近の国立や私立の中高一貫校は、高校受験生を軽視しているとしか思えない入試制度改革をおこなう学校が増えています。その典型が、海城高校の突然の高校募集停止宣言です。今年の6月になって突如来年度の高校募集を打ち切ることを発表したのです。

募集停止というのは受験生にとって重大な影響を与えますから、普通は最低2年間程度の猶予を持って発表するのが普通です。海城高校を志望していた中3生がいるとしたら、6月になっての突然の募集停止宣言をどう感じるでしょうか。明らかな高校受験生軽視としか言いようがありません。

このように、多くの国立や私立の中高一貫校は、学校の生徒募集、カリキュラム、行事、部活などすべてを中高一貫生中心に考えるようになってきていて、高校受験生にとっては環境が悪化しています。

 

◆中高一貫校の途中入学よりも、全員一斉スタートの高校単独校が理想

高校受験を控える中学生にとって、真に充実した最高の高校生活を送るには、中高一貫校の途中入学よりも、日比谷や都立西のような内進生の存在しない全員一斉スタートの高校単独校が理想と考える受験生が増えています。

高校での学習を考えると、6年型の中高一貫校カリキュラムに途中から入るのは不都合が多いことが知られていますが、学習以外でも、行事や部活動で以下のような違いがあると言われています。表にしてまとめてみました。

 

  中高一貫校の途中入学 高校単独校
行事

中学からの在籍を前提とした行事配置

中学から在籍しないと経験できない行事が多い

行事の運営は内進生中心になりがち

高校からの在籍を前提とした行事配置

全員が同じ行事をみんなで経験

行事の運営は高校からの入学者主体

部活動

附属中学から部活動が持ち上がり

高入生はその中に途中から編入

編入の高1生より内進の中3生の方が先輩という逆転現象が発生

内進生がいないので、全員一斉にスタート

 

 

◆「第一志望は都立トップ校、第二志望は筑駒」 最優秀生のイマドキ志望順位

今年の春に最難関の都立西高校に合格し通っているA君。入学後に話題となるのは、どこの高校を合格辞退して入学したのかだそうです。A君によると、クラスだけで2人の筑駒合格辞退組がいたということです。他のクラスにも、筑駒や開成の合格辞退者は結構多いようなので、全体の数では結構な数になるでしょう。

最難関高校に多数の合格者を出している某有名進学塾の進路担当講師に話を聞きました。「第一志望が日比谷や西などの都立最難関校で、第二志望が筑駒」という受験生は、昨年度あたりから急激に増えはじめ、来年の入試をひかえる中3生はもっと多いそうです。

せっかく最難関高校に合格して途中入学しても、入学後に、既にできあがっている内進生の人間関係に溶け込めないで悩んでいる子がでてきてしまう現実…。それよりは、全員が一斉にスタートする単独校をという受験生の心理が読み取れます。

別の塾の話です。多摩地区に拠点を置く進学塾enaの方は、やはり「今年は筑駒・開成に合格しても辞退して都立トップ校に進学する生徒がいた」と話し、高校単独校を希望する受験生が増えていることを明かしてくれました。高校入試の筑駒離れはどの塾でも起きているようです。

 

◆3年後の大学合格実績は大きく変化 主体性持った学校選びが大切

どこの塾も言っていたことが、「3年後は都立トップ校の進学実績がさらに伸びる。逆に開成や筑駒の高入生の進学実績は厳しくなる。」ということです。高校入試の最優秀層が筑駒や開成に入学しなくなっていますから、そう考えるのは当然でしょう。中高一貫校というのは、中高一貫生で進学実績を稼ぐのが普通です。

大切なことは、中学生のみなさんが主体性を持って学校選びをすることです。高校受験は今、かつてないほど著しい変化をしています。偏差値だけの学校選びは終焉を迎えています。さまざまな角度から学校を見てみて、自分にとって最高の3年間が送れる学校を選びましょう。

 

 

 

最終更新:2010年07月22日 16:14