721 名前:春のモンブチ杯(カップ)[sage] 投稿日:2010/04/08(木) 02:33:40 ID:YWquvRI5

龍門渕からの招待状が届いた翌日。
清澄、風越、鶴賀の新部長は判をついたように同じ行動を取っていた。
春休み中にも関わらず、朝っぱらから登校し部室に籠ると

清澄部室  染谷まこ(確定部長)

「こ、これは…。わしにもハイテイ(ラストチャンス)が巡ってきたようじゃのぅ」
まこの眼鏡がキラリと光る。
携帯に登録してあるアドレスに[8時だョ!全員集合]とメールを送ると、
間もなく返信があった。
古いです。場所はどこですか?今、咲さんと一緒なので二人で行きます。
古いじょ。場所はどこだぁ?今、タコス食べたら行くじぇ!
古っ!つか、場所どこすか?今、元部長に頼まれた買い出しの最中で…

[あんたらなー、部室に決まっとるじゃろ!早う来い!]とメールをしてから20分後。
自分に向かい合うように並んだ、咲、和、優希、京太郎に招待状を読み上げるまこ。
全てを読み終わる前に皆の妄想はスタートしていた。

(や、やっぱここは和ちゃんだよね…)
(ぜ、絶対、さ、咲さんと…)
(ぜーんぶ、タコス払いにしてもらうじぇ!!)
(で、出来れば和と美穂子さんのWで… 須賀君… 京太郎さん… ほえあああ)

「 ………ちゅう訳じゃ。あんたら、今回の参加は部長命令じゃけ、頼んだわー」
「「「はいっ!!!」」」「はーい。はーい。はーい…」浮かれまくりの京太郎。
「あぁ、京太郎。わりゃあ今回も留守番じゃけーのー」
「な、何ですとーーーーー?!」夢から現実へと叩き落とされる京太郎。
「しゃーないじゃろー。ほれここ見てみぃ。女子部員限定イベントじゃ。」
「お、京太郎が灰になったじょ」
「ほいじゃー、部長…じゃのうて、先輩にはわしが連絡をと…」
リダイアルで久の番号を呼び出し、電話をかける。
(部長、最後くらいはわしと一緒におってくれても…)

とあるファーストフード店
久の携帯が鳴った。「あら、まこからだわ。ちょっと、失礼するわね。なぁに?まこー」



風越部室  池田華菜(暫定キャプテン)

「こ、これは…。あたしにもハイテイが巡ってきたし!」
華奈の猫耳ヘアーがピョコンと跳ねる。
部のPCに登録してあるアドレスに[今すぐ全員集合!]と一斉メールを送ろうとして、
はたと気づく。
三年生が卒業したとは言え、60人近くいる部員全員に送る必要はないし。
携帯に登録してあるアドレスに[今すぐ集合だし!]とメールを送ると、
間もなく返信があった。
華菜ちゃんおはよう。すぐにでも行きたいんだけど…場所は?
池田さんおはよう。すぐ行くから場所を書いて。
キャプテンおはようございます。すぐに行くので場所を教えてください。

[ごめん、ごめん。場所は部室だし、待ってるし]とメールをしてから20分後。
自分に向かい合うように並んだ、未春、純代、星夏に招待状を読み上げる華菜。
ここでも清澄同様、全てを読み終わる前に皆の妄想はスタートしていた。

(か、華菜ちゃんとなら…)
(い、池田さんと…)
(ド、ドム先輩以外なら…)

「 ………という訳で、みんな。今回の参加は部長命令なんだし、絶対参加するんだし!」
「「「はいっ!!!」」」
「それじゃ、キャプ…じゃなくて、福路先輩にはあたしが連絡するし…ゴクリ…」
携帯に登録はしたものの、かける機会のなかった美穂子の家電に電話をかける。
(んーーー、にゃーーー!キャプ、いや、福路先輩! あたしと一緒に!)

何度目かの呼び出し音の後、「はい、福路でございます。」と落ち着いた女性の声。
「(にゃーー、先輩のお母さんだしぃ…)、あ、あの私、福路先輩と同じ風越女子高校
麻雀部2年のい、池田華菜と言いますし。あ、あの、先輩はいらっしゃい…」
「まあ、あなたが池田さん?」華菜の名前を聞いてお母さんの声のトーンが上がった。
「へ?は、はい!」
「美穂子からお話は聞いているのよ。とても元気で、とても優しい後輩がいるって」
「え、あ、あの…そんなことないですし…えへ(華菜ちゃんてば、親公認だし…)」



鶴賀部室  津山睦月(確定部長)

「こ、これは…。うむ、私なりに精一杯…」
睦月の口癖がポロリとこぼれる。
携帯に登録してあるアドレスに[集合できる?]とメールを送ると、間もなく返信があった。
睦月さん、おはようございます。部室だよね。今日はすぐ行けるから待っててね。
むっちゃん部長、おはようございます。部室っすね。今日ならすぐ行けるっす。

返信メールが着てから20分後。
自分を挟むように左右に座った佳織と桃子に、招待状を読み上げる睦月。
ここでも清澄、風越同様、全てを読み終わる前に皆の妄想はスタートしていた。
ただ違ったのは、その妄想を口にできる環境だったということ…

「わー、さとちゃんと一緒に…」
「いやいや、絶対、私が先輩と一緒にっす! かおりん先輩、負けないっすよ」

「 ………という訳で、二人とも今回の参加は…」
「はーい、はーい。絶対参加するっす。むっちゃん部長も絶対参加しなきゃダメっす!」
「ひゃあ、桃子さんいたんだ…。うん、睦月さん、参加しようねぇ…」

「うむ。それじゃ、先輩たちへの連絡は…」
「加治木先輩には、私が連絡するっす。今すぐ電話するっす」携帯を握りしめるモモ
「じゃあ、さと…、蒲原先輩には私が電話を…」バッグに手を突っ込むかおりん
「うむ。頼んだ。先輩方の返事を聞いてから、龍門渕に返事をするから」
モモとかおりんは昨日の日付の着信履歴から、電話をかける。

とあるファーストフード店
ゆみの携帯が鳴った。「おや、モモからだな。すまないが失礼する。もしもし…」
智美の携帯が鳴った。「ん、かおりからかー。んじゃ、私もっと。かおりーどしたー?」

(あら、誰もいなくなってしまったわ。何かしら、皆、後輩からみたいだったけど。
あ、もしかして家にも華菜から電話が着ているかも…うふふ)
皆が席をはずしたテーブルに残った美穂子は笑みを浮かべた。
(私もそろそろ携帯を持ちたいのだけれど…どうして壊れてしまうのかしら…)
先ほどの笑みが消え、ふぅとため息をつくと美穂子は紅茶を口に運んだ。


(ん~、一緒にいて楽なのはまこなのよね~。気遣わなくていいからのんびりできるし。
でも、ちょっと見てみたいのよね… 私が誘ったらどんな表情(かお)するのか…)
電話を終え、何やら考え事をしながら久が戻ってきた。
「あ、久さん、お話は済み…、久さん?」
「んぁ、うん。終わったわよって、あれ?ゆみと智美は?」

名前を呼ばれたからではないが、二人が戻ってきた。が、こちらも思案中のご様子で
(全くモモは「新婚旅行っすね」だと。全く何をバカな…バカみたいに可愛いヤツだな…)
(ワハハー、かおりと旅行かー。まぁ、この辺で脱幼馴染をしなきゃ先に進まんしなー)
「ゆみさん、智美さん…あ、あの…」美穂子の声が耳に入らないようだ。

「はいはーい、お二人さーん。」パンパン「モンブチ杯の話だったんでしょ?」
呆けている二人の顔の前で、手を打ちながら話かけると我に返ったゆみが返事をする。
「んぉ、おお。そうだな。久も、蒲原もか?」 「ワハハー、同じなんだなー」
「うん。じゃあ、タイミングもいいし、二人とも参加するでしょ?」
「ああ、モモがな、尋常じゃなく乗り気でな」 「かおりもだぞー、ワハハー」

「あ、あのモンプチって…一体何の話かしら…」置いてきぼりにされた美穂子が尋ねる。
「美穂子、実はねー」美穂子の表情を伺いながら久が説明を始めた。

龍門渕邸の一室
「おいおい。招待状を出した翌日に全員参加の返事って、一体何書いたんだ?」
「あら、純は招待状を見てないんですの?はい、これですわ。」純に招待状を渡す。

大きく【第一回モンブチ杯のご案内】と書かれた招待状は、時候の挨拶に始まり、
日時や場所といった必要事項だけのように見えたが、朱書きの≪賞品≫に目が止まった。

…MVPを獲得された選手には、「龍門渕グループが誇る豪華リゾートホテルの
ウルトラVIPスイートルームペア宿泊券(ディナー付き)20万円相当」を
ご用意いたしました。
MVP獲得選手は出場選手のどなたかを指名し、ペア宿泊券を利用することができます。
そして、指名された方は拒否することが出来ないこととします。
また、同額程度の希望商品との交換も可能です。皆さん、奮ってご参加…



「なんだこれ?想定外のヤツに指名されても断れないのかよ。うぜーなー」
「…大体カップルは決まっている。他校生が純を指名する確率はほぼ0%…」
「全く、純は自惚れ屋さんですわね」透華がフンと鼻を鳴らす。

「ころもはノノカを指名するよ~。あと、リンシャン使いも」
「おー、やっぱ衣が一番大人だなー。いきなり3ぴ」 ゴッ!! 「ぐぅっ?!」
一のマジックで突如現れたスティックが純のみぞおちにヒットした。
「純君、衣相手に下品な冗談はやめなよね」 「…シャレにならない…」

龍門渕邸の厨房
「あーちくしょー。まだ、痛ってー。一のヤロー、手加減しろよなー。
あーもー、何か色んな意味で面白くねーなー。当日も仕込みで早えーし。
メイドはつらいよ。なんてな…」食器の片づけをしながらぼやく純。
「あれ、これって…ああ、透華のオヤジさんのゴルフコンペのケータリング用か…
ククク、これを使えば…モンブチ杯!俺がより面白くしてやんぜ!!」

福路宅
「もしもし、池田さんのお宅でしょうか。私、風越女子高校三年の福治…」
「キャ、キャプテン?!」美穂子の声を聞いただけで昇天しそうな華菜。
「あ、華菜なの、良かったぁ。今日はごめんなさいね。電話をくれたのに、出かけていて」
「あ、いえ。今キャプテンが電話をくれたので大丈夫ですし。そ、それで…」

「こーら、キャプテンは華菜でしょ。そうだ、華菜のお話の中身を当ててみましょうか」
「え、あ、はい…」 「えーっとね、第一回モンブチ杯参加のお知らせ、じゃないかしら?」
「にゃー? 何で知ってるんですかー?」 「うふふ、実はね…」
美穂子の話は浮かれまくっていた華菜を落ち込ませるには十二分であった。
あの、にっくき清澄の部長と会っていたと言うのだから…

「先輩、あたしMVPを取って先輩を指名しますから!!」(あいつにだけは負けないし)
「…え、あ、うん。ありがとう、華菜」
(うわー、ものすごい間があったけど、気にしない。華菜ちゃんはずうずうしいから)
「じゃあ、お休みなさい、先輩。お電話ありがとうございました。」
「はい。お休みなさい、華菜」

(そうね、指名されたらお断りできないのよね。華菜と一緒は楽しそうだけど…
もし私が指名したら、あの人はどんな表情(かお)をするのかしら…)

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最終更新:2010年05月26日 04:04