396 友達と恋心 Ver.優希 [sage] 2009/11/03(火) 21:59:26  ID:rLIaFjiQ Be:

のどちゃん、知っているか?
友達から恋は始まるんだじぇ。
私もその例外ではないんだ…。

「か、片岡さん?」
「ん、優希でいいじょ、のどちゃん♪」
「の、のどちゃん?」

思い出すなぁ…。私がのどちゃんと出会った頃を。
揺れる綺麗な桃色のツインテール。
綺麗な立ち振る舞い。
初めて会ったその日から…きっと私は恋してた。


「優希?」
「え?」
「どうかしましたか?手が止まってます。」

そうだ、今は部活中でのどちゃんと咲ちゃんと京太郎の4人で打ってたんだった。

「ごめんごめん。」

私としたことが…集中力を欠くとは。


ねぇ、のどちゃん。
のどちゃんね、咲ちゃんと会ってまた変わったんだじょ。
私と会ってからも変わったけど。でも、それはただ表情が柔らかくなっただけ。
今ののどちゃんはね、恋をしてるんだじょ。

「優希?」
「優希ちゃん調子悪いの?休む?」

また手が止まっていたらしい。
確かに少し休ませてもらった方がいいかな。

「うん。タコス力が切れたみたいだじょ。ちょっとひとっ走りしてくるじぇ!!」

そんな風に、いつもみたいに明るい私で応じて部室を飛び出した。


ずっとずっと変わらないと思ってた。
私にとっての1番はのどちゃんで、のどちゃんにとっての1番は私だと。

「まーなんだ。進路に悩んだらうちに嫁にくるといいじょ。」

半分冗談で半分本気で言った言葉に

「それもいいかもしれませんね…」

なんて返してくれた。
あの真面目なのどちゃんがそう言ったんだ。
本当は嬉しくて嬉しくて嬉しくて、だけど素直に嬉しいって言えなくて冗談っぽい言葉にしちゃった。

「もじもじしてもいいかな!?」

正直ね、期待してたんだ。
のどちゃんも私のことを好きでいてくれてるって。
清澄に行くって言って、のどちゃんもそうした。
期待しないはずないじょ。

「高校に行ったらきっとまた新しい友達ができるじょ」

のどちゃんに出来たのは新しい友達じゃなくて、私よりも好きな人。
私ね、素直にのどちゃんの恋を応援できないんだ。

「あ、優希!探しましたよ!」

タコスを買いに行くなんて嘘をついて、屋上にいた私をこの人は探しにきてくれた。

「購買にもいなかったですし。」
「なんで?なんで私を探しにきたんだー?」

まだ部活が終わる時間ではない。なのに、なんで?

「今日の優希、ちょっと様子がおかしかったものですから。」

ねぇのどちゃん。
のどちゃんがそうやって優しくしてくれるからさ、なんか胸の辺りがギリギリと痛むんだ。

「何か、あったんですか?」
「…なんもないじょ。」

堪えなきゃ堪えなきゃ。泣いちゃだめだ。泣いちゃ。

「優希…?」
「ねぇ、のどちゃん。」
「はい?」

なんでこんな話をしたんだろう?

「好きな人いるか?」

のどちゃんは頬を真っ赤にした。
もうそれが答えだった。

「ゆ、優希はどうなんですか?」
「…いるじょ。」
「え、誰なんですか?」
「こればっかりは言えねえなぁ。」

のどちゃんだじょ。
中学の時から、初めて会ったその日から、ずっと…。

「のどちゃんの好きな人って……」

ねぇ、のどちゃん。知ってる?
好きな人が出来ると気付くと目で追ってたりすることがあるよね。
それでさ、知りたくないこともわかっちゃうんだ。
のどちゃんが恋をしてることも、その恋の相手も。

「咲ちゃんでしょ?」

「え!?な、なんでそれを!?」

のどちゃんに一つ教えといてやるじぇ。
そういう反応はつまりYESと言っているのと同じなんだじょ。

「わかるじょ、のどちゃんのことは。おっぱいのサイズから何まで。だって、好きだから。」

冗談と本音を混ぜた。
きっとのどちゃんは気づかない。

「測らせてません。」

つっこむべき所はそこだから。

「のどちゃん…。きっと、咲ちゃんものどちゃんと同じ気持ちだじぇ!」

私は何を言ってるんだ。

「ええと…」
「だから自信を持つんだじょ!」

なんでこんな言葉を送ってるんだ。


「で、でもなんて伝えればいいか…。」
「簡単だじょ!好きって、好きな気持ちを言葉にすればいいんだじょ。」

そっか…。
私がのどちゃんを好きだから、だからこんな言葉を言ってるんだ。
好きな人に幸せになってほしいんだ。

「優希…。ありがとうございます。さぁ一緒に部室に戻りましょう!」

のどちゃんは決意を固めた、そんな表情をしてた。
のどちゃんの手が私に伸びている。私はそれを見て、目をそらすんだ。

「私はもうちょっとここにいるじぇ。のどちゃんは先に行ってていいじょ。」

のどちゃんは少し悩んだけど、私が頑固なのを知っているから

「じゃ、じゃあ…」

と言ってドアに手をかけた。

「ねぇ!」

それを私は呼び止めた。
振り向き、風に桃色の髪が揺れた。

「のどちゃん!私はのどちゃんとずっと、ずっと友達だじょ!!」

「当たり前です!」

のどちゃんが去って一人になった屋上で私は思い切り泣いたんだ。
私とのどちゃんは友達だじょ。
それ以上にはなれないんだ…。

「のどちゃあん…!!ひっく…ぅぅ……。好きだじぇ……。大好きだじぇ…!!」



それから数日が経って、のどちゃんと咲ちゃんの関係は変わった。
手を繋いで登下校をするようになった。
目が合うと頬を染めて微笑み合うようになった。


「優希、ありがとうございます。」

咲ちゃんが部室に現れる前に二人きりになる時間があった。
のどちゃんは私に頭を下げた。

「優希のおかげで、私は宮永さんに告白することができました。」
「おめでとう!よかったじょ。」

本当によかったっておめでとうって思ってる。だけどね、心の隅の方がすごく寂しい。
のどちゃんの笑顔が嬉しい。でもなんか悲しい。


「京太郎!帰るじぇ!!」

部活が終わると私はこう言って京太郎の首根っこを掴んだ。
のどちゃんと目が合うとのどちゃんは口パクで「ありがとう」って言っている。
気を遣ってるって思ってるんだろうな…。


ごめん、のどちゃん。幸せを願ってるのはほんとだよ。
でも、私、そんなにいい子じゃないんだ。
まだ、のどちゃんと咲ちゃんが仲良くしてるのに耐えられないんだ。
のどちゃんのことも、咲ちゃんのことも好きだから、辛いんだ。
ごめんね、のどちゃん。

「じゃあまた明日だじぇ!!」

いつかね、ちゃんとのどちゃんの友達になるから。
だから、それまで待っててほしいじぇ。
そしたら、ずっと友達でいてほしいじょ。

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最終更新:2009年11月23日 19:29