463 名前:悪戯 1/2[sage] 投稿日:2009/06/21(日) 01:52:50 ID:mWKT8C9q

もし部長が清澄に行かずに風越に行っていたら、という設定で。


今日のミーティングは、いつもに増して長かった。
大会も来月にせまり、コーチも気合が入っているらしい。
しかしさすがに疲れてきて、一つ小さくため息をついたその時、膝に置かれた右手に
冷やりとした手が触れたのを感じた。
隣に座る久の左手だった。
思わず彼女の横顔を見たけれど、こちらに一瞥もくれず前を向いたまま、つまらなそうな顔
でコーチの話を聞いている。
その彼女の左手だけが別の生き物のように動いて、指をからませてきた。
顔に一気に血が上るのを感じて、うつむいてしまう。
その反応を面白がるように、手の甲をさすったり、手首を握られたり。
テーブルに隠れて他の人からは見えない角度になっている。それをわかっていて、
彼女はこんないたずらを仕掛けてきたのだ。
コーチに見つかったりしたら大変。後輩達にも示しがつかない。
何事もなかったかのように、隣の彼女のように無表情を努めるけれど。
外に聞こえてしまうじゃないかと思うほど、胸の鼓動は高まっている。
こんな風に触れられるのはたまらない。
他でもない、彼女に。
そして彼女も、わかっているのだ。
たかが手を握られるだけでも、私の心がこんなにも乱れることを。
だからこそ少し憎らしい。
それでもこの手を振り払うなんてできっこなくて。
思い切ってその手を捕まえようとすると、するりと逃げられ彼女の手は離れてしまった。
いたずらされて困っていたはずなのに、何だかとても残念だった。
彼女の横顔を盗み見るけれど、もう飽きてしまったのか、左手で頬杖をついてあくびを
していた。
ようやくコーチの方に意識を戻すと、長い長いお説教はようやく終わりに近づいているようだった。

「さっき・・・なんであんなことをしたの?」
ミーティングが終わり、解散となった後、帰ろうとする彼女を捕まえて問いかけた。
解散が遅くなったからか、他の部員達はさっさと帰ったため、今部室には二人しかいない。
「あんなこと?何のことかしら?」
「さっき、ミーティングの時に・・・」
思い出してまた顔が赤くなるのを感じる。
「ああ、退屈だったから」
「あんなことして、もし見つかったら」
「そうねー、美穂子、真っ赤になってたもんね。いつコーチにばれるかって冷や冷やしちゃった」
苦笑しながらそう言うと、彼女は一歩進んでこちらに近づいた。
反射的に下がろうとすると、すぐ後ろに机があることに気がつく。
「嫌、だった?」
じっと見つめられながらそう問いかけられて、思わず顔をそらした。
さらに近づかれる。もう、触れられる距離だ。
「ねえ?」
彼女の手が顎にふれ、うつむいていた顔をあげられる。
こんな近距離で見つめられると、もうどうしようもなくなって。
「嫌なわけ、ないじゃない・・・」
そう、嫌なわけない。彼女だって、そんなことはもちろんわかっている。
私にそう言わせて、楽しんでいるのは明白だった。
こうやっていつも、私の気持ちを見透かして、弄んで。でもそれがどこか心地よくて。
「そう?じゃ、続きしよっか?」
そう耳元で囁かれて、身をすくめる。
耳たぶを掠めるように軽くキスされて、思わず吐息が漏れる。
早く早く、いっぱい触れてほしくてたまらない。
頬やおでこに軽く触れるだけのキスをくれたけど。
それだけじゃ我慢できずに、おもわず彼女の首に手を回して引き寄せた。
「上埜さん・・・」
よくおねだりできました、とでも言うように、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた後、
彼女は待ち望んでいた場所に、触れるだけじゃない、深い深いキスをくれた。
ここが部室だとか、誰かに見られるかもだとか、そんなことはもうどうでもよくなって。
私はもう、彼女とのキスに夢中になっていた。

おしまい

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最終更新:2009年07月11日 16:16