【種別】
人名ないしコードネーム

【元ネタ】
北欧神話の神オーディンの『デンマーク人の事績』における名前[Othinus]。

【初出】
二十二巻、オッレルスが自分の素性をフィアンマに明かす際に口にした。
本人の登場は声のみ新約三巻、実際の登場は新約四巻


【解説】
グレムリン』の主要構成員を務める魔術師
隻眼で毛皮のコートの中に黒の革の装束を着ており、鍔広の帽子を被っている少女。名前に「オーディン」というルビが付く場合がある。
目的の詳細は不明だが、
マリアン=スリンゲナイヤー同様、『主神の槍』へ至る道を模索しているらしい。
かつてブリュンヒルド=エイクトベルが完成を目指した『主神の槍』すら、
『片鱗』程度に利用する程度のものということからも、到達点の規模の大きさが窺える。

オッレルスの言によると、
魔神と化しており、完璧な存在であるが、完璧であるが故の弱点も抱えている。
即ち、文字通り「無限の可能性」を持つが故に、あらゆる物事に対して、成功する可能性と失敗する可能性の両方を抱えてしまっているのである。
故に、戦乱の剣や右手の奥に眠る莫大な力をあっけなく握りつぶしているにも関わらず、半分魔神のオッレルス・右手を失ったフィアンマ相手に撤退する羽目になっている。
これで成功する確率が50%以上ならまだ良かったし、失敗する確率が50%以上でもそれはそれで対策を立てやすくなるのだが、完璧に五分五分であるがゆえに予想がつかず、非常に厄介なことになっている。
彼女はこの厄介な「可能性」を制御するために、暗躍しているようである。

なお、上条当麻の「不幸」はこの「五分五分」であるはずの可能性を歪めてしまっているらしく、2回の敗北を喫している。

しかし、新約8巻において遂に『主神の槍』を完成させ、魔神としての力を完全に制御する。
その魔神としての能力は位相を改変すること。
曰く、人が見ている世界とはまっさらな世界ではなく、宗教によって作られた色とりどりのフィルターを介して見ている景色のようなものである。
そしてオティヌスは新しいフィルターを作って挟み込むことで、世界の見え方を変えてしまうことができる。
それは人間視点では世界そのものを創ったり壊したり作り変えたりしているのと大差なく、
地獄のような破滅的な世界を生み出すこともできるし、借金も失恋も事故も無い楽園のような世界を生み出すこともできる(厳密には、世界がそう見えるようにフィルターを挟み込んでいる)。
あるいはフィルターの改変前後で記憶を持ち越せるとすれば、主観的には全く別の世界に移動してしまったかのようにも感じるだろう。
とはいえ、オティヌスがいじっているのはあくまでフィルターだけであり、
フィルターを介さないまっさらな世界(科学の世界)そのものを創ったり壊したり作り変えたりしているわけではなく、平行世界を移動しているわけでもない。

彼女にとって、新約9巻での改変が初というわけではなく、それまでにも位相を改変することで好き勝手に世界を作り替えていたらしい。
それは一見都合の良いことに思えるが、何でも思い通りに改変できる以上、確かな物は何も無く、オティヌス視点で言えばどんな世界も作り物の箱庭のようなものでしかない。おまけに改変しすぎた結果、彼女は自分が住んでいた「元の世界」がどういう世界であったか忘れてしまった。
強大な力を持つ魔神といえども、そうなると帰り道を忘れてしまった迷子と変わらない。
そのことに気付いた途端急に不安になってしまい、フィルターの再改変で元の世界に帰ろうとした。
それはおそらく人の目では「元の世界」と区別がつかないほどに「ほぼ完璧」に仕上がったのだが、完璧すぎる神の目線ではそれでもまだ完璧とは言えなかったらしく、
どこか違和感を感じてしまい満足できなかった。結果だけを見れば同じであっても、過程を知っているオティヌスにとっては別物・模造品に見えてしまったということかもしれない。

仕方なく彼女は「元の世界とほぼ完璧に同じ世界」で妥協し、自らを苦しめた魔神としての力も放棄して暮らしていたが、
わずかであれ違和感が存在する以上、そこは彼女の故郷足り得ない。
やがて違和感に耐えられなくなった彼女は、魔神としての力を取り戻して完璧な形で世界を元に戻そうとした。それが新約での事件の発端である。
仕掛けは大きいが、つまるところ彼女の目的とは「元の世界に帰る」、ただそれだけである。

彼女は元の世界に帰りたいと渇望すると同時に、それが不可能であろうと諦めてもいる。
魔神としての位相改変能力のみならず、幻想殺しを使った世界の復元を以ってしても、納得の行く世界を生み出すことができなかったからである。
そのため、「元の世界に戻るために足掻く」という第一希望の選択と、「元の世界に戻ることを諦めて別の世界で生きる」という第二希望の選択との間で常に葛藤していた。
新約9巻で上条が苦しめられながらも生かされていたのはそのため。
世界の復元点である幻想殺しは魔神の力の阻害要因であると同時に、第一希望を遂げるために必須であったため、殺すことも放置することもできず、「上条当麻を生かしたまま無力化することで、幻想殺しの入れ物として利用する」という中途半端な対応になったわけである。

無数の世界を生み出して上条を精神的に追い詰めるも、
その永きに渡る闘争の果てに逆に彼女の方が先に精神的限界に達してしまい、それ以上の闘争の継続が困難になってしまった。
仕方なく彼女は第一希望を完全に切り捨て、「上条当麻を殺す」決断を下した。
しかし永きに渡る闘争によって完全に行動パターンを学習されてしまい、投擲した『主神の槍』も破壊される。
追い詰められたオティヌスは、妖精化の「失敗100%」を利用した魔神として奥の手『』を解放。
10発中の9発をも回避されるが、自身の身を囮に使った10発目が命中。上条に勝利を果たす。

しかし上条を倒した後で、上条から「一番初めにしたかったことは何だ? それを叶えない限り、自分と同じく惨めな迷子になってしまう」と助言を受ける。
その問いを自らのうちで消化するうちに、「元の世界に戻る」というのは元々は手段であって、
自分が真に求めていたものは、変わってしまった世界に対する違和感と疎外感を共有し、そっと慰めてくれる『理解者』であったことに気付く。
変わってしまった世界の中には『理解者』は存在しなかったため、彼女は故郷にそれを求めたが、そもそも元の世界に理解者がいるかどうかも分からない。

そして変わってしまった世界で彼女と同じ違和感と疎外感を味わい、その上で自身を思い遣ってくれた上条こそが、自身が真に求めていた理解者だったのだと気付く。
しかし無数の世界を彷徨い歩き、ようやっと見つけた理解者を皮肉にも彼女は自身の手で粉砕してしまった。
故に彼女は己が真に望んだ『理解者』を取り戻すため、幻想殺しを用いて「元の世界」ではなく「上条当麻が生まれた世界」を復元する。
わずかな時間『理解者』を得ることと引き換えに、彼女は破滅することになるが、それでも構わないと納得した上で決めたようである。

元々オティヌスは各種史料で述べられる「主神オーディン」まさにその人であるという。
現行の世界というものは、オティヌスが複数の位相を差し挟んだ後の世界である。
己の力に恐怖した事で一度は『主神の槍』をも放棄したようだが、それをもう一度取り戻そうとしたことが『新約』の物語に至るきっかけとなる。

ちなみに非常に勘違いされることが多い例として、「上条は10032回世界を繰り返した」というものがある。
これは大きな間違いであり、あくまで校庭でのオティヌスとの対決が10032回というだけで上条は何百万回もループを経験している。
オティヌスとの直接対決で一度死ぬたびに、再度オティヌスと戦うまでにも無数の世界を体験しているため、上条とオティヌスはおそらく年数で言えば軽く億を超える間一緒に居たと思われる。
少なくとも腐れ縁たるオッレルスすらも上回る時間を共に過ごしたようで、オティヌス自身の口からも「共に過ごした時間ももはやお前が追い抜いたか」と言われている。