【種別】
超能力・素粒子

【元ネタ】
物理用語の暗黒物質(ダークマター)。
重力など状況証拠から存在すると考えられているものの、
直接的な観測がなされていない物質の総称。
本来の用法では「Dark」は不明を意味し、「暗い」「邪悪」といった意味はない。
Wikipedia - 暗黒物質

【初出】
十五巻


【概要】

学園都市第二位の超能力者(レベル5)垣根帝督が有する、
「この世に存在しない素粒子を生み出し(または引き出し)、操作する」能力 。
及びそれによって作られた「この世に存在しない素粒子(物質)」そのもの。

この能力で生み出される物質『未元物質』は、
「まだ見つかっていない」「理論上は存在するはず」といった『物理学で定義されるダークマター』とは異なり、
学問上の分類に当てはまらない、本当にこの世界には本来存在しない新物質である。
「この世の物質」ではない以上、この世の物理法則には従わないし、
相互作用した物質もこの世のものでない独自の物理法則に従って動き出す。
作中では、「翼で回折した太陽光が殺人光線になる」等の例が示された。
つまり、単に変わった物質を作るというだけでなく、物理法則全体を塗り替えてしまう能力でもある。

ただし物理法則の変化は未元物質が存在することで発生する副次的な効果であるため、
法則改変の方向性を自由に決めることはできない。
例えば、「太陽光を殺人光線に変える」のはあくまで未元物質が元から持つ性質であって、
垣根が狙ってこのような性質を持つ未元物質を生み出した訳ではない。

垣根がこの能力を使う際は、基本的に天使のような白い6枚の翼の形になる。
ただし、この翼を出さずに絹旗一方通行 の攻撃を防いだりしているため、
翼を出さなくとも能力自体は使用可能である模様。
また、一方通行に白い翼を「似合わない」と指摘された際に、
「自覚はある」と答えながらもこの形状を取ることから、
垣根が意図して翼の形状を作っているわけでは無いらしい。

【性質・戦闘利用】

未元物質の白い翼は、飛行・防御・打撃・斬撃・烈風・衝撃波・光線などかなりの応用性を持つ。
この翼の大きさは可変で、数mのものから数百mのものまで生み出せる。
ゲームでは羽を弾丸のように発射していた。

他にも特定の範囲に上から強力な圧力を与える攻撃や、
対能力者施設を内側から吹き飛ばすほどの爆発(翼がなくとも使用可能)などを起こしている。

外伝漫画『とある科学の未元物質』では更なる応用として、
  • 未元物質の翼に触れただけで身体が溶解・気化・砂状化する
  • 念動能力による投擲を見えない力で逸らす
  • 装甲をすり抜けて人体だけに翼を刺す
  • 音や光を間接的に操り、脳の電気信号に干渉して暴走状態の相手に語りかける
  • 理解できない事象を同時に三千三百以上展開する(発火、結晶化など)
といった現象を起こした。

また、塗り替えられた物理法則が身体に悪影響を与えるためか、
未元物質が展開された空間にいるだけで敵が血を吐いて気絶する場面も見られた。

この世に本来存在しない物質のためか強度も異常に高く、
鉄や窒素といった「この世の物質」を元にした攻撃で未元物質を破壊出来たのは、
原子崩し』などごく少数しかない。
本人曰く、「『超電磁砲』くらいまでなら耐えられる」模様。

加えて、本人が意識していない攻撃を防ぐ自動防御の機能もあるらしく、
一方通行との戦闘ではATMを高速で投げつける不意打ちを凌ぎ、
コラボ小説では使用者が対応出来なかったオブジェクトの一撃を、翼が勝手に展開して防いでいる。

垣根は太陽光と烈風に注入した併せて25000のベクトルにより
一方通行の「無意識の内に受け入れているベクトル」を逆算し、
偽装した「ありえないベクトル」の翼を、通常の物理法則に従うが故に存在する『隙間』へ撃ち込むことで、
反射をすり抜け一方通行にダメージを与える事を可能とした。(→備考参照)

攻撃を通すことが可能になったことにより一時は一方通行を押す戦闘を見せたが、
一方通行に「『未元物質』が存在することでどのように物理法則が変化するのか」を解析され、反射の設定に組み込まれた。
このため未元物質で一方通行を傷付けることは今後一切不可能となった。
それでも純粋な「超能力」で、ダメージを一方通行に与えることができたのはこの能力だけである。

【無限の創造性】

新約5巻での復活時に新たに習得した使用法。
未元物質で人体細胞を構築できるようになったことで、
自身の複製を生み出せるようになった。

この複製は単なる人形というわけでなく、一体一体が意思を持ち、超能力『未元物質』を使用することができる。
つまり未元物質でできた複製がさらに別の未元物質でできた複製を生み出すというねずみ算により、
文字通り無限に増殖し続けるまでになっている。

さすがに『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』そのものを構築しているわけでは無く、
あくまで黒夜のように「能力の噴出点」を増やしているだけらしいが、
それでも実際に起きている現象になんら違いはない。
しかしそれも一時的な物で、いずれは『自分だけの現実』の構築や、他人の能力の実装も可能になるらしい。

人体細胞の構築から分かるように能力の自由度も格段に向上し、
  • 槍や剣など翼以外の形への自由変形
  • 他者の姿への変化、自身の複製の製造
  • 白いカブトムシ白いトンボなどの自律兵器の製造
  • レコードのように建材の磨耗を読み込んで行う、擬似的な読心能力
  • 液状の未元物質から槍を発射したりといった遠隔地の未元物質の操作
  • 他の物質を侵食し未元物質へと変える
など、従来の性質と相まって凄まじい万能能力と化した。

複製というと性能が低そうに思えるが、
未元物質で作られた垣根に肉体の限界は存在せず、生身の頃より身体能力は圧倒的に向上している。
そもそも「人間の形」を保つ必要すらないため、壁を歩くことも手足を変化させることも自由自在。
未元物質自体が凄まじい強度を持ち、
仮にダメージを受けても無限に再生することが出来るため、複製一体倒すだけでも困難を極める。
寿命や飢餓、酸欠といった概念も存在しないため、事実上不老不死である。

未元物質同士は生体電気に似たパルス信号で相互に情報伝達を行なっており、
どの個体が何をしているのかを全体が把握することが出来る。
作中で一方通行にこの信号を操作された際は未元物質を一定範囲破壊され、本体にも影響が出ていた。
しかし、それぞれは無数にブロック化され、相互通信は直結ではなく自由伝達であるため、
この方法ではごく一部しか破壊することができない。
つまり、例え幻想殺しでも、ラインを伝って全体をまとめて消滅させることはできない。

では複製を無視して「本体」や「元々の垣根の生身の肉体」を狙えばいいかと言うと、それも通用しない。
なぜなら未元物質で肉体を修復した結果、垣根にとって「自分の肉体」と「未元物質」の区別は曖昧となっていて、
彼の精神・命といったものは本来の肉体を離れて未元物質の中に散らばっているために、
もはや彼の精神・命は「本来の肉体」とは無関係となっているからである。

簡単に言えば、もはや未元物質そのものが垣根帝督の本体になっているため、
生身の肉体が潰されても垣根帝督という人物は死ななくなっている。
複製を管理・統御する『マスター』とでも呼ぶべき個体は一応存在するが、
あくまで全体の司令塔的な存在というだけで、いくらでも再生でき、
他の複製にマスターを移すこともできるため倒したところで何の影響もない。
アレイスターはこの状態の垣根を「能力が本体から分離して自律稼働している」と表現している。

言うなれば、この状態の『垣根帝督』はもはや一人の人間ではなく、
ミサカネットワークのような「無数の個体から成る一つの大きな意思」と化している。
ネットワークを構成する個体が全滅しない限り、どれだけ破壊されようと「死ぬ」ことはない。
しかも「生きて」いる限りはネットワークは未元物質で無限に再生・増殖し続ける。
生身の脳を破壊されてもこのネットワークは維持可能なようで、
もはや脳が能力を生み出しているのか、
能力が脳を形成しているのか曖昧なメビウスの輪のような存在となっている。

弱点は、その不死性・無限性そのもの。
なまじ柔軟性と再生力に優れるが故に、ネットワークから隔絶された個体も、
その個体自身の中で小さな独立したネットワークを構築して自律行動を始めてしまう。

これだけなら問題はないが、垣根の精神はネットワークの中に不均質に散らばっているため、
「レーズンクッキーの中のレーズンの部分だけを集める」「アイスコーヒーの底に溜まったガムシロップを掬う」ように、
自律行動を始めた個体が「垣根の精神の一部分だけを集中的に受け継ぐ」ことが起こりうる。

その結果、自律行動を始めた個体と残りの大多数の個体との間で意思がズレる可能性があり、
最悪の場合、他の個体の意思に反して行動する「反逆者」が生まれる危険性もある。
しかも、ネットワークの中のどの個体が「核」と決まっているわけではないため、
「反逆者」にネットワーク全体の支配権を奪われてしまう可能性さえある。
そして垣根は文字通り「無限」の増殖を行うため、
増殖していく内に「反逆者が誕生する可能性」もいずれは自分自身で実現してしまうことになる。

作中では「戦いを止めたいと思う個体」が発生し、ネットワークの支配権を握ったために、
それまでマスターを担っていた個体(=垣根の精神の一部)が自滅した。
一方通行には「オマエなんかには勿体無いチカラ」「明らかに制御できる範囲を超えている」と評された。

現在の垣根は、上記の弱点を考慮して増殖そのものを控えており、
増殖を行う場合でも「ネットワークを形成して一つの意識で全個体を制御する」ということを行わず、
各個体をスタンドアローン状態にしている。
スタンドアローン状態で増殖を行うということは、垣根の精神を各個体に分割していくに等しいが、
曰く「クッキーを二つに割っても味は変わらない」ようなもので、
分割しても「垣根帝督」としてのパーソナリティは保ったまま(ネットワークからの指示によらず)自己判断で行動できる。
その上、「割れたクッキーを合わせれば元の形に戻る」ように、分割された精神を再統合することも可能。
そのため、ミサカネットワークやかつての垣根のように「一部の問題がネットワーク全体に波及してしまう」という危険は無く、
たとえ一部の個体に異常が生じても残りの個体は問題なく行動できるようになっている。
さすがに分割をやりすぎると以前と同様に「反逆者」が生じる危険は無くもないが、現状では問題ないようである。

【学園都市において】

この能力は『この世のものでない性質を物質に付与できる』という点で極めて工業的な価値が高く、
一方通行に敗北し、垣根がほぼ死亡状態となったことで学園都市では盛んに研究対象にされている。

例えば第三次世界大戦時には、『未元物質』の力を取り込んだ兵器『Equ.DarkMatter』が実戦投入されている。

このような触媒的な利用だけでなく、未元物質自体を「素材」として何かを作ることもでき、
木原病理は未元物質を素材に人体部品を作り、損傷した体を修復することに成功している。
このアイデアは垣根本人にもフィードバックされたらしく、垣根は最終的に「未元物質で人体細胞を構築する術」を獲得し、
自分の体の損傷部位を未元物質で補って復活を遂げた。

復活後も学園都市は未元物質を相当量保有しているらしく、サンプル=ショゴスなる存在が製造されている。

【プランとの関係】

垣根の言によれば、アレイスターの「プラン
の『第二候補(スペアプラン)』であったらしい。
一方通行が『第一候補(メインプラン)』とされていることから、
垣根も「プラン」において一方通行と同じような役割を果たすことが可能な模様。
ヒューズ=カザキリ、そして一方通行の黒翼との類似性(翼・この世にあらざる法則)からすると、
未元物質も虚数学区制御に関連があったと思われる。
また『この世のものでない物質』という点では、
第三次世界大戦終盤に出現した『黄金の腕』を始めとする、物質化した『天使の力』を彷彿とさせる。

垣根は一方通行の黒い翼を見て未元物質というモノを理解し、
更なる成長を遂げ数十メートルにも及ぶ白い翼を展開したが、
その真価を発揮する前に一方通行の圧倒的な力にねじ伏せられて敗北したため詳細は不明。
地の文では、
「こことは違う世界における有機」「神にも等しい力の片鱗を振るう者」とされた一方通行に対して、
「こことは違う世界における無機」「神が住む天界の片鱗を振るう者」と表現されていた。
この他にも、一方通行と対極をなす能力として比較される描写が散見される。

【備考】

本スレでも話題になるが、勘違いがある場合も多いのでここに明記。
まず、「未元物質という能力」は1つだが、「能力による攻撃」は2つある。
  • (1):未元物質の翼や羽など、そのものによる打撃、刺突
  • (2):未元物質によって歪められた物質・現象
(1)に関しては、単に『謎の物質』をぶつけているだけなので、
通常のベクトルによる攻撃であるため当然『反射』可能だが、
解析した一方通行のフィルターをすり抜けるベクトルを挿入する事で、
(最終的に対策を取られたものの)『反射』を無視して攻撃を通す事も可能。

(2)が若干複雑だが、本編で『反射』を貫通した「変質した太陽光」は、
太陽光という通常「一方通行が反射せずに通しているもの」の性質を未元物質が有害に変更しただけである。
つまりベクトルとしては受け入れている太陽光と同一のものを持つ。
そのため、『未元物質の影響で変質した物体が有る世界』を想定して、
反射のフィルターを再設定しないと『反射』不可能。
ただし、「変質した」といって「反射不能」であるとは限らない(実際、解析用の「烈風攻撃」に関しては通常通り反射が機能している)。


最終更新:2022年08月24日 06:49