戦国BASARA/エロパロ保管庫

流転5

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慌てて口を押さえ、恐る恐るかすがのほうを見やれば、彼女はどこか虚ろな瞳で思いをはせている様子だ。
炎が揺らめき、部屋の影も揺れる。
「あの方は、私を慈しんでくださった」
おそらくは上杉謙信とともにあった日を思い出しているのだろう。彼女の心はここにあらず、存在自体が希薄になっていくようであった。
幸村の胸に、耐え難い不安が広がる。
「かすが殿!」
彼女を現に呼び戻そうと必死に語りかける。だが、何を言えばいいというのだろう。道理の通った説得も、気のきいた慰めも、何一つ浮かんでは来ない。
彼女の視線が自分を捕らえたとき、胸に燻っていた思いが突如として咽喉をこみ上げた。
「それがしは!それがしは、かすが殿のことを…!」
そこまで言うのが彼には精一杯であった。しかし、女はそれを酌み、しばしの沈黙の後、青年に応えた。
「私も、お前のことは、嫌いではないよ」
声音こそからかっているようだったが、じっとこちらを見つめる瞳は、青年を試していた。淡い色の瞳の中で、炎が揺れている。
手を出してはいけないと、頭の中で警告が響く。
ここに来てからというもの、彼女と顔を合わせるときはいつだって自分の信頼する忍びが彼女の隣にいて、彼が平時とは違う色で彼女を見ていることを知っている。自分が彼女と知り合う前から、彼に意中の人がいたことも、それが誰かも聞いていた。
裏切ってはいけない。自分は後から入り込んだに過ぎない。
理性ではわかっている。
が。
手を伸ばせばすぐに届く距離にいる女性への思いが、胸中を激しく焦がしている。この機を逃せば、決して触れることは叶わないだろう。
(………っ!すまぬ、佐助!!)
若いがゆえに、経験もないがゆえに、身体を駆け巡る炎を沈めることもできずに、影の揺れる女を、感情のままに抱きしめた。異性の香りが鼻孔をくすぐる。
背中にそっと腕が回されたことを悟ると、完全に彼の心は歯止めがきかなくなった。熱に浮かされたように何度も女の名を繰り返し、力加減などできずに腕に力をこめる。痛いだろうに、女は声一つ上げない。
影が一つになって、しばし時が過ぎた。
この若者が、内に燻る炎を伝えるすべをこれ以上知らないのだと、かすがは早くから気が付いていた。まともに女に触れたこともないに違いない。


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