天女の羽衣
少し遅れてしまいましたが元就嬢の誕生日ネタ。
保守代わりに投下していきます。
保守代わりに投下していきます。
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春を迎えて、鳥の声が一段を喧しくなってきた頃。
安芸の国、吉田郡山城に一人の男がやってきた。
「元就、居るか!」
既に顔見知りとなっている毛利家執政に軽く挨拶をすると、そのまま真っ直ぐに目的地へと向かう。
お待ちを、という家臣らの声も何のその。
どかどかと廊下を歩く足音に気付き、彼女が振り返るのと同時に、すぱーんと障子が開け放たれた。
「大声で喚かずとも聞こえておる」
全く貴様が来ると騒々しくて敵わぬ、と小さく溜め息を一つ。
元就は筆を置き、書き掛けの書状を仕舞うと、彼の方に向き直った。
「いや、ちょっと遅れちまったモンだからよう」
そういうと、元親はどっかりと腰を下ろし、抱えてきた箱を正面に置いた。
大きめの箱だが、見た目ほど重くはないらしい。
箱に書かれた蚯蚓がのたくったような模様はおそらく文字だと思われるが、元就には解読出来ない。
「これは何ぞ」
「誕生日のお祝いさ」
にぃ、と悪戯っぽく笑うと、元親は蓋を開けた。
「何と」
ばさり、と広げたそれは腰のところを細く絞った女物の衣装らしい。
細かな編み物で飾られ、ふわりと広がった裾には幾重もの薄物が綺麗に縫い付けてあった。
「これを元就に着て欲しいんだけど」
丁寧にそれを扱い、目をぱちくりとさせて驚いている元就に渡す。
上質の絹で作られているそれは羽衣のように軽く、真珠のような光沢を放っていた。
「アンタの体格に合わせて作らせたから、大きさは大丈夫だと思うぜ」
「な、どこで我の寸法を取ったのだ!」
「いや、だって何度も抱いていれば自然と……あいたっ!」
手近な所にあった脇息を投げつけられ、情けなくも直撃をくらった元親は、それでもめげずに元就の方へとにじり寄る。
ドレスを胸元に抱え、眉間に軽く皺を寄せて見上げてくる彼女をなだめるように、華奢な肩を抱き寄せて身を屈める。
不意に間近に迫った瑠璃紺の隻眼に見詰められ、元就は頬を染めて視線を逸らした。
「……らぬ」
ぼそり、と呟いた声が聞き取れず、元親は首を傾げる。
「ん?」
「我はこれの着付けを知らぬ」
彼と違い、洋服など滅多に手にする事のない元就にとって、これは未知の領域であった。
「じゃあ、俺が着せてやるから、まずそこに立ってみろ」
元親はこれに合わせる下着もあるのだと言い、箱の底に残っていた小箱を取り出す。
「あ、いや、それでは」
「いーからいーから」
ふと、昔の姫若子の血が騒いだのか、嬉々として着替えを手伝う元親の嬉しそうな顔に、元就は怒る気も失せたらしく黙って成すがままにされた。
「元就、居るか!」
既に顔見知りとなっている毛利家執政に軽く挨拶をすると、そのまま真っ直ぐに目的地へと向かう。
お待ちを、という家臣らの声も何のその。
どかどかと廊下を歩く足音に気付き、彼女が振り返るのと同時に、すぱーんと障子が開け放たれた。
「大声で喚かずとも聞こえておる」
全く貴様が来ると騒々しくて敵わぬ、と小さく溜め息を一つ。
元就は筆を置き、書き掛けの書状を仕舞うと、彼の方に向き直った。
「いや、ちょっと遅れちまったモンだからよう」
そういうと、元親はどっかりと腰を下ろし、抱えてきた箱を正面に置いた。
大きめの箱だが、見た目ほど重くはないらしい。
箱に書かれた蚯蚓がのたくったような模様はおそらく文字だと思われるが、元就には解読出来ない。
「これは何ぞ」
「誕生日のお祝いさ」
にぃ、と悪戯っぽく笑うと、元親は蓋を開けた。
「何と」
ばさり、と広げたそれは腰のところを細く絞った女物の衣装らしい。
細かな編み物で飾られ、ふわりと広がった裾には幾重もの薄物が綺麗に縫い付けてあった。
「これを元就に着て欲しいんだけど」
丁寧にそれを扱い、目をぱちくりとさせて驚いている元就に渡す。
上質の絹で作られているそれは羽衣のように軽く、真珠のような光沢を放っていた。
「アンタの体格に合わせて作らせたから、大きさは大丈夫だと思うぜ」
「な、どこで我の寸法を取ったのだ!」
「いや、だって何度も抱いていれば自然と……あいたっ!」
手近な所にあった脇息を投げつけられ、情けなくも直撃をくらった元親は、それでもめげずに元就の方へとにじり寄る。
ドレスを胸元に抱え、眉間に軽く皺を寄せて見上げてくる彼女をなだめるように、華奢な肩を抱き寄せて身を屈める。
不意に間近に迫った瑠璃紺の隻眼に見詰められ、元就は頬を染めて視線を逸らした。
「……らぬ」
ぼそり、と呟いた声が聞き取れず、元親は首を傾げる。
「ん?」
「我はこれの着付けを知らぬ」
彼と違い、洋服など滅多に手にする事のない元就にとって、これは未知の領域であった。
「じゃあ、俺が着せてやるから、まずそこに立ってみろ」
元親はこれに合わせる下着もあるのだと言い、箱の底に残っていた小箱を取り出す。
「あ、いや、それでは」
「いーからいーから」
ふと、昔の姫若子の血が騒いだのか、嬉々として着替えを手伝う元親の嬉しそうな顔に、元就は怒る気も失せたらしく黙って成すがままにされた。
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