歪曲の果て
螺旋収束の補完というかスピンアウト。
- 秀吉×半兵衛♀
- ねねは? という問いには「知らん」としか言いようがない。話題に出せなかったんだ…
大坂城の天守閣から、上田の方角を見る。
無論、上田が見えるはずはない。それでも半兵衛の目には上田の方角が明るく輝いているように映る。
カリ、と音を立てて柱に爪を立てた。
「痛むか、半兵衛」
声をかけられ、半兵衛は柔らかい笑みを浮かべて振り返った。
激情は胸の内にしまい込む。
「何がだい?」
「傷だ」
「ああ……大丈夫、大した怪我じゃない」
半兵衛は肩から夜着と肩掛けを落とし、秀吉の前に体を晒した。
ぱさりと乾いた音がした。
あばらの浮いた胸。肉の落ちた尻。病によって痩せたことで、半兵衛は男とも女ともつかぬ体つきとなっていた。
女性らしい丸みや柔らかさの欠落した体。かといって男のように肉がついている訳でもない。
子供のように成長を感じさせることもない。
背中に広がっていた火傷のあとや脇腹に刻まれた創(きりきず)は、醜い跡を残しただけで終わった。
秀吉は褥の上に座り、枕を脇息代わりにして肘を置いていた。
黒い瞳に感情が浮かんでいるが、読む気になれない。
裸のまま秀吉の前まで歩を進め、そっと腰を下ろした。
「…痩せたな、半兵衛」
「やっぱり、胸が豊かな方がいいのかい?」
「体など、魂を入れる器に過ぎぬ。半兵衛、我は」
「秀吉、それ以上は言ってはいけないよ」
膝に乗り、唇を重ねて言葉を封じ込める。
「僕が、君を慕っているだけなんだ。君は僕を利用すればいい」
肩に顔を寄せ、目を閉じる。
強い匂いを嗅いだ。強い男しか纏うことが許されない、男の匂い。
肺の奥まで吸い込み、体を擦りつける。それだけで体の奥が疼いた。
秀吉の手が背に回った。肩甲骨の辺りを指が這う。何気ない動きだが体が火照る。
甘い吐息が漏れる。秀吉によって開かれた体は、秀吉の動きに敏感だった。
無論、上田が見えるはずはない。それでも半兵衛の目には上田の方角が明るく輝いているように映る。
カリ、と音を立てて柱に爪を立てた。
「痛むか、半兵衛」
声をかけられ、半兵衛は柔らかい笑みを浮かべて振り返った。
激情は胸の内にしまい込む。
「何がだい?」
「傷だ」
「ああ……大丈夫、大した怪我じゃない」
半兵衛は肩から夜着と肩掛けを落とし、秀吉の前に体を晒した。
ぱさりと乾いた音がした。
あばらの浮いた胸。肉の落ちた尻。病によって痩せたことで、半兵衛は男とも女ともつかぬ体つきとなっていた。
女性らしい丸みや柔らかさの欠落した体。かといって男のように肉がついている訳でもない。
子供のように成長を感じさせることもない。
背中に広がっていた火傷のあとや脇腹に刻まれた創(きりきず)は、醜い跡を残しただけで終わった。
秀吉は褥の上に座り、枕を脇息代わりにして肘を置いていた。
黒い瞳に感情が浮かんでいるが、読む気になれない。
裸のまま秀吉の前まで歩を進め、そっと腰を下ろした。
「…痩せたな、半兵衛」
「やっぱり、胸が豊かな方がいいのかい?」
「体など、魂を入れる器に過ぎぬ。半兵衛、我は」
「秀吉、それ以上は言ってはいけないよ」
膝に乗り、唇を重ねて言葉を封じ込める。
「僕が、君を慕っているだけなんだ。君は僕を利用すればいい」
肩に顔を寄せ、目を閉じる。
強い匂いを嗅いだ。強い男しか纏うことが許されない、男の匂い。
肺の奥まで吸い込み、体を擦りつける。それだけで体の奥が疼いた。
秀吉の手が背に回った。肩甲骨の辺りを指が這う。何気ない動きだが体が火照る。
甘い吐息が漏れる。秀吉によって開かれた体は、秀吉の動きに敏感だった。
過日、伊達軍を得るために半兵衛は豊臣軍を奥州に進めた。
伊達の軍隊と領地、両方を得た、はずだった。
心の底まで恐怖を叩き込めば、規律正しい軍ができる。
そう信じていたのだが、伊達の兵士たちはしぶとく伊達政宗という女を慕い、揃いも揃って脱走した。
ご丁寧に、砲台を占拠し稲葉山城を崩壊させて。
伊達軍のトップを心服させれば従うかと思い、伊達政宗を探した。
伊達政宗は奥州に戻らず信州は上田にいるという情報を得たので刺客を差し向ければ真田忍隊によって全滅させられ、
ならばと軍を向ければ武田軍が出る始末。
その間に伊達の残党は方々に散り、各地の大名の下に仕官をしたという。
豊臣に仕官した者は、当然ながら草履持ち一人すらいない。
土地は土地で、政宗に首根っこを捕まれおとなしくしていた豪族がここぞとばかりに
血を血で洗う闘争を始め、まるで手に負えない。
とどめとばかりに、真田幸村が伊達政宗を娶ったという一報が入った。
早速賢妻ぶりを発揮しているらしく、竜の娘よ奥州の花よと誉めそやされている。
何もかもが半兵衛の予想の域を超えた。
感情のままに暴れようにも怪我と病が邪魔をする。
腸を煮やしながら、半兵衛は大坂に与えられた居室の中でじっと耐えていた。
伊達の軍隊と領地、両方を得た、はずだった。
心の底まで恐怖を叩き込めば、規律正しい軍ができる。
そう信じていたのだが、伊達の兵士たちはしぶとく伊達政宗という女を慕い、揃いも揃って脱走した。
ご丁寧に、砲台を占拠し稲葉山城を崩壊させて。
伊達軍のトップを心服させれば従うかと思い、伊達政宗を探した。
伊達政宗は奥州に戻らず信州は上田にいるという情報を得たので刺客を差し向ければ真田忍隊によって全滅させられ、
ならばと軍を向ければ武田軍が出る始末。
その間に伊達の残党は方々に散り、各地の大名の下に仕官をしたという。
豊臣に仕官した者は、当然ながら草履持ち一人すらいない。
土地は土地で、政宗に首根っこを捕まれおとなしくしていた豪族がここぞとばかりに
血を血で洗う闘争を始め、まるで手に負えない。
とどめとばかりに、真田幸村が伊達政宗を娶ったという一報が入った。
早速賢妻ぶりを発揮しているらしく、竜の娘よ奥州の花よと誉めそやされている。
何もかもが半兵衛の予想の域を超えた。
感情のままに暴れようにも怪我と病が邪魔をする。
腸を煮やしながら、半兵衛は大坂に与えられた居室の中でじっと耐えていた。
秀吉の視線を感じるだけで、体の奥底が熱を持つ。
醜く蠢き、秀吉を求めるモノを半兵衛は体の奥に飼っている。
それに身を任せ、秀吉に縋ることはたやすい。
秀吉は哀れみと蔑みをもってそれらを受け入れ、半兵衛を抱くだろう。
醜く蠢き、秀吉を求めるモノを半兵衛は体の奥に飼っている。
それに身を任せ、秀吉に縋ることはたやすい。
秀吉は哀れみと蔑みをもってそれらを受け入れ、半兵衛を抱くだろう。
そんなの、つまらない。
醜い心にふさわしい責め苦を味わいたい。
綺麗なものは、貶めてもなお美しさを失わない。それを見ることで半兵衛の心はより一層醜くなる。
半兵衛の中の嗜虐心が、半兵衛自身を痛めつける。
それはとても楽しく、そしてどうしようもなく虚しかった。
「愛姫や、伊達政宗の方がよかったかい?」
「痛がるだけの女や、人の手垢がついた女など、抱いてもつまらぬ」
「……じゃあ今度は、君を欲しがるように躾けておくよ」
白い頬を上気させ体をすり寄せる。秀吉はいつものように髪や背を撫でて言葉を捜す。
綺麗なものは、貶めてもなお美しさを失わない。それを見ることで半兵衛の心はより一層醜くなる。
半兵衛の中の嗜虐心が、半兵衛自身を痛めつける。
それはとても楽しく、そしてどうしようもなく虚しかった。
「愛姫や、伊達政宗の方がよかったかい?」
「痛がるだけの女や、人の手垢がついた女など、抱いてもつまらぬ」
「……じゃあ今度は、君を欲しがるように躾けておくよ」
白い頬を上気させ体をすり寄せる。秀吉はいつものように髪や背を撫でて言葉を捜す。
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